第11話告白

あっという間に時間は経った。緊張は気付けばほぐれていた


「柚乃ちゃん、そろそろ帰る?電車も混みそうだし」


「そうだね!そろそろ帰ろっか!」


「ハルトくん!今日はありがとね!すごい楽しかった!」


「うん。ありがとう!また今度遊ぼ!」


「あ、そういえばさ。さっきの悩み事のことなんだけど...」


「あ、もしかして言えそう?そうだったらなんでも聞くよ!」


「じゃあ、言うね。釜崎くん、奈古と付き合って」


「え...」


「お願い、じゃないと嫌われそうで」


なんだこれ...夢を見てるみたいだ。違う、これじゃまるで俺がずっとしてる妄想の世界じゃん。まさか奈古が、俺を?あるわけない、俺は奈古が大嫌いな陰キャだぞ?あるわけがない。でも、じゃなきゃ嫌われるって...柚乃がなんで言うんだ?


「ごめん、今は...考えられない。」


「そうだよね。ごめんね。私が勝手に行動しちゃって。」


「いいよ、全然。大丈夫!」


「じゃ、帰ろ!」


おいおい、嘘だろ...あいつが俺を?これは俺の妄想じゃないのか?俺は明日、柚乃に告白するのに!──────


─大学─


「吉田!吉田!」


「ん、どうした?告白はまだだよな?」


「まだしてない。これからしようと思ってたけど、」


「じゃあなんでそんな焦ってんだよ?まだ昼休みだぞ?」


「違う、釜崎くんに連絡が取れなくて!今日会ってない?」


「会ってない。」


「わかった、ありがとう。」


「てか、あれだよ?連絡つかないのは単に授業で忙しいからとかじゃないの?」


「そうじゃない!多分、告白のタイミングが被ったんだよ!」


「告白...?あいつが?あいつ、好きな人いんの?」


「え、聞いてないの?同じ大学で私の友達の柚乃って子だよ。」


「じゃあ奈古はそれをわかって告白しようとしてるの?」


「そう...だよ、でも諦めたくない。好きになったから。それに、それを話題にしなきゃ私は釜崎くんと関わることは出来なかったと思う。だから、別にもういいの─────私は釜崎くんに告白する」


「だから、やっぱりもう戻れないや。ごめんね。」


「俺はもう大丈夫だから、全部伝えてこいよ。」


「うん!がんばる!」


─大学2号館屋上─


「柚乃ちゃん、昼休みなのに来てくれてありがとう。」


「いいよ!もしかして昨日のこと?」


「違う、そうじゃなくて。」


「え、じゃあ...」


昨日で無くなったはずの緊張が再び心を襲った


「好きです!柚乃ちゃん、僕と付き合ってください!」


「え...そんなのダメだよ...それじゃあ奈古が。」


「でも、ごめん。好きだから」


「ダメだよ....ごめん。私はそれで何回も関係壊してきたから。付き合えないよ」


「どういうこと...?」


「私、人のこと簡単に好きになっちゃうから...友達とか彼氏とかとの関係をそれで壊しちゃって。だからもう、嫌われたくない。奈古に...好きって言って。」


「え、待って!」


柚乃は屋上から学校に戻ろうとドアを開けた


「でもね...ハルトくん、嬉しかったよ?ありがとう。だけど、これ以上好きになったらダメだから」


ドンッ


ドアが閉まった


俺はそっとため息を吐いた


「なんだよ...それ。奈古に好きなんて言えねえよ!俺の苦手な陽キャのギャルだろ。」



ブーッブーッ


私は屋上の近くの階段を降りながら、電話を始めた──────


「もしもし?奈古」


「あ、柚乃、どうしたの?」


「ハルトくんね、今、2号館の屋上にいるよ。」


「あ、え、ありがとう。」


「告白するんだったら今しかないと思うよ。」


「わかった。」


「後、謝りたいことがあるんだけどね。」


私は奈古に、ゆっくりと話し始めた


「ごめんね、奈古。本当にごめん。ハルトくんのこと好きになっちゃった。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る