第10話 幼馴染とお出かけ
波乱の展開を迎えた班決めが終わり、授業終了の鐘が鳴ると同時に起きてきた担任がそのまま終礼に入る。
いくつかの伝達事項の報告だけやるとすぐに解散となり、クラスメイト達は生気の抜けた顔で続々と教室を後にしていく。
姫乃さんと一緒の班にならなかったことのダメージ、それはクラスメイト達にとって想定していた以上に深刻なものであったらしい。
俺は今日はバイトがない日である。
いつも通り慎二と由依と3人で帰ろう、そう思っていた時だった。
「すまん、俺は今日用事があってさ」
慎二は両手を合わせて申し訳なさそうな表情をしながらそれだけ言うと、荷物を持って飛び出すように教室を出て行った。
一緒に帰るのが当たり前のようになっていたが、別にこれは義務というわけでもないしこんな日もたまにはあるだろう。
「じゃあ玲、久しぶりに2人で遊びに行かないかしら?」
「いいよ、由依。2人で遊ぶのなんて久しぶりだね」
普段から3人でいることが多く、遊ぶ時も基本3人のことが多かった。
登校する時は由依と2人なのだが、寄るとしてもコンビニくらいなものであり、遊びに行くことはなく、最後に2人で外で遊んだのを振り返ると中学の頃以降無かったことにに気付く。
実は俺は結構ゲームが好きなのだが、そのきっかけとなったのが由依である。
由依は元々アニメやゲームが大好きないわゆるオタクであり、彼女の熱烈なプレゼンにより俺もそう言ったものに触れ始めた過去があり、俺がハマってからは毎日のようにゲームを一緒にプレイしている。
だからこそ遊んでいるつもりになってしまっていたのだが、それは仕方ないことだろう。
荷物をさっさと纏めると俺たちは2人並んで教室から出る。
俺たちが外で遊ぶ時に行くのは基本ゲームセンター、それかカラオケかの2択である。
最寄りの駅前まで行けば近くにどちらもあるのでその方向に向かう。
「玲ってさ……最近急に姫乃さんと仲良くなったわよね……」
「そうだね、ちょっと色々あってさ……」
「色々……ね……」
俺は仲がいいからこそ由依には隠し事などはしたくないと思っている。
しかし、姫乃さんと話すようになったきっかけのあの事件は非常にデリケートな問題である。
由依に余計な心配をかけたくないというのもあるし、何より姫乃さんが知られたくないかもしれない。
少し悲しそうな表情を浮かべる由依の横顔、それを見て心が締め付けられるような苦しさに襲われる。
「そういえば由依、今日はどっち行く?」
「……カラオケ……」
「おっけー」
由依がカラオケに行きたい時というのは、基本的にストレスであったり、溜め込んだものを発散したいときである。
俺は彼女の気が済むまで付き合う覚悟を決め、気がついたら目の前まで来ていた目的のカラオケ店に入った。
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