第4話 お母様と尊い笑顔
少しすると警察が店までやってきて、俺と姫乃さんは当時の状況や犯人の特徴、他にも様々なことを尋ねられた。
そして俺の行動には少し注意もされた。
「君のおかげで女の子が守られたことは間違いない。だけど君やこの子自身が逆上した犯人のせいで傷つく可能性もあったんだ。次からはすぐに警察を呼ぶんだよ」
「……すみません」
警察が一連の手続き等を終えて店から出るタイミング、それと入れ違いで1人の小柄な女性が店内に入ってくる。
「花奈!!」
「ママ!!」
とても若く見えたのだが少し姫乃さんの面影を感じるような、そんな目の前にいる人はどうやら姫乃さんのお母さんらしい。
姫乃さんのお母さんは瞳に涙を浮かべながら、側から見ても分かるほど強く姫乃さんを抱きしめていた。
「ごめんね……、怖い思いさせてごめんね……」
「ママ……、大丈夫だよ。何もされる前に助けてもらったから……」
それを聞いた姫乃さんのお母さんは俺を見ると、彼女を抱いていた手を離すと今度は俺を抱きしめてくる。
「ありがとう……本当にありがとう……」
「……はい……」
警察に注意された事で、俺は自分の行動についての自信を少し失ってしまっていた。
しかし、ここまで強く、心のこもった感謝の言葉をもらえた事で今までのことを全て認めてもらえた気がした。
姫乃さんと似た小さな身体、しかしその包容力はさすが母といったところで、最初はビックリしていた俺もすぐに安心感に包まれていた。
数分に渡っての抱擁を終えた後、姫乃さんとお母さんはタクシーを呼んで帰ることになった。
彼女もやはり慣れ親しんだ家の方が落ち着くことが出来るだろう。
2人は俺と伯母さんに何度もお礼をすると、タクシーが店の前に着いたタイミングで席を立つ。
「神森くん、また……明日ね!」
「うん、気をつけて」
手を振りながら、そしていつも教室で見る天真爛漫といった風な自然で見てる方まで嬉しくなるような笑顔を姫乃さんは見せる。
その汚れを知らない可愛い笑顔は今までの人生で見たものの中で、何よりも尊いものだと、そう感じた。
2人を見送り、伯母さんは座っている俺の頭を慈しむように優しく撫でながら呟く。
「玲くん、よく頑張ったね。カッコいいじゃん」
嬉しさと気恥ずかしさ、そして誇らしさ。
様々な感情でいっぱいになるが、決して嫌な気分などではなかった。
その後は一時的に閉店していた店を開け、伯母さんと閉店である夜の9時まで当初の予定通りバイトに勤しんだ。
今日は浮かれていたのか、疲れていたのか、気がついたらバイトは終わったいた。
荷物をまとめ、バイトの制服から学校の制服へと着替え、帰路へと着く。
家に帰り、ベッドに横になるとすぐに襲ってきた眠気に誘われるがままに俺は深い眠りに落ちた。
内容は思い出せないが、とてもいい夢を見た気がした。
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