20
花は歩き始める。いつもの道を。言うもの時間に。いつものように歩き始める。孤独な時間。自分と向き合う時間。静かにいろんなことを考える時間。今朝は少し霧が出ている。朝靄だ。鳥の鳴いている声が聞こえる。でも鳥の姿は見えない。
私は本当に朝のことを愛しているのかな? ただ朝の気持ちに押されて勘違いをしてるだけなのかな? 私は朝の恋人に相応しいのかな? 私は朝に甘えてばかりいる。朝が優しいから。年が一つ下の後輩だから。朝。朝くん。……、ああ、だめだ。うまく考えがまとまらない。思考がくるくる回っている。全然前に進めない。
冬になると植物の花は枯れて、身を潜める。そして春になると目を出して、綺麗な色とりどりの花を咲かせて、命を育む。そんな一年を季節を永遠と繰り返す。
花は目的の場所までたどり着いた。
そこには大きな木が一つだけぽつんとまるで生きる場所を間違えてしまったみたいに生えている。
「朝。いる?」と花は言う。
「いるよ。ここにいる」朝の声がする。
じっと檻の壁を見ていると、そこに朝が姿を見せた。朝は高校の制服姿で、いつものように笑顔で、じっと花のことを見ている。花は朝のところまで歩いていく。心臓がどきどきしている。緊張する。恥ずかしくて、気持ちがたかぶって、正面から朝の顔を見ることができなかった。花は朝の正面に立った。背の高い朝を少し見上げるようになる。
「朝。キス、しようか?」小さな声で、でもはっきりとした発音で花は言った。
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