21
朝は花がそう言った瞬間に、檻の間から手を伸ばして花を抱き寄せると、器用に、檻の間の隙間から、花の顔を引き寄せて、そっとその唇にキスをした。
それは本当に一瞬のできごとだった。花は覚悟を決める時間もなかった。すべてがあっという間のできごとだった。そのキスは子供のキスだった。お互いになにもつけていない唇と唇を触れ合わせただけのキス。だけど、花はそのキスで体を動かすことができなくなった。
だけど、だんだんと理性が花の中に戻ってくる。すると怒りのような感情が湧き上がり、でもその感情はすぐに消えて、それから花の中にはとてもおかしな、思わず笑いたくなってしまうような感情が湧き上がってきた。
「花。ここいいよ」と朝は言って自分の頬を花に向ける。朝は花が怒って自分をぶつと思っているのだ。
でも花はその頬を張り飛ばす代わりに、そっと今度は自分から朝にキスをした。
「これで少しは恋人らしくなれたかな?」
笑いながら花は言った。
花からキスをされて顔を真っ赤にしている朝は驚いた顔をしながら花を見ている。
「朝。誰かを愛するって、どういうことだと思う?」花は言う。
「その人に幸せになってほしいと思うこと」と朝は花の体を抱き寄せながらそう言った。
「うん。そうだね。私もそう思う」朝の背中に両手を回しながら、幸せそうな顔をして、花はそう言った。
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