19
その日、花は一人で欅女学校の敷地内の道の上を歩いていた。そうやって一人でぼんやりといろんなことを考えながら散歩するのは花の日課だった。
私はこれからどうなるんだろう? 欅女学校を卒業して大学生になって(目標の大学には受かる自信はあった)それから私はなにになるんだろう? わからない。
夢なんてない。なりたい職業もないし、やってみたいこともなかった。私にはなにもない。はぁー。私はなんてつまらない人間なんだろう? たまたま勉強ができたから今までみんなに嘘をつくことができたけど、そろそろそれにも無理がある。なによりももう自分自身に嘘がつけない。私はもう子供じゃない。選択肢はどんどんなくなっていく。後戻りはできない。こうして悩んでいる間にも、時間は過ぎていく。とても貴重な時間が私の両手の指の間からこぼれ落ちていく。
花は足を止める。お母さん。私はどうすればいいんでしょう? 私は本当に幸せになれるんでしょうか? そんな自信は今のところこれっぽっちもありません。お母さん。私は元気です。今のところ大きな怪我も病気もしていません。それはとても幸せなことです。それはわかっています。経済的にも恵まれています。友達もいます。本当に素晴らしい友達です。それにちょっとだけ頼らないけど、すごく優しい恋人も、一応います。今の私たちの関係はただの恋人ごっこなのかもしれないけれど、恋人です。私を愛していると言ってくれます。でも勇気のない私は私の優しい恋人にまだ一度も愛してると言っていません。どうしても言葉にすることができないんです。私にはまだ人を愛すると言うことがどう言うことなのかわからないのです。
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