15
花は校長先生との会話を朝に話した。すると朝は「さすが欅の校長先生。すごくいい先生だね」と優しい声で言った。
「そうかな? 意地悪なだけだよ。福ちゃんなんて泣きそうだったしさ」と大きな木を眺めながら花は言った。
二人は今、欅女学校の敷地の周囲に設置されている大きな壁のこちら側と向こう側にいる。欅の壁は赤煉瓦作りのところと檻のようになっているところがある。二人がいる場所は檻のようになっているところで、お互いの顔を見ることが(檻越しだけど)できた。
そのそばに立っている大きな常緑樹の木を目印にして花は朝と会ってよく会話をしていた。
「なんだか悪い魔女みたい」
去り際の校長先生の嘘つきと言ったあの楽しそうな顔と声を思い出して花は言う。
「確かに悪いとは思わないけど、欅の先生たちはみんな個性的で不思議な雰囲気をしているよね。魔法使いみたいだよ」と笑いながら朝は言った。
「魔法使いか。なるほどね」
そう言われるとそう思えなくもない。花に魔法をかけてくれた欅の生徒であり卒業後に欅の先生になったお母さんも、もしかしたらどこかでこっそりと『本物の魔法使い』から魔法を教わったのかもしれないと思った。
「僕もさ。魔法が使えるんだよ」と朝が言った。「どんな魔法?」と花が言うと「料理が美味しくなる魔法」と言って一枚の紙を檻の間から手を差し伸べて花に向けて手渡した。それは花が頼んでいた『カレーライスのレシピ』だった。レシピを受け取った花は「どうもありがとう」と照れながら言った。
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