11
「じゃあ、またね」
そう言って、窓から部屋を出た朝は明るくなり始めている夜の中で歩き始めた。去り際に「花。愛してる」と朝は言った。
「うん。わかってる」花は言う。
朝は花に小さく手を振りながら夜の中に消えていった。少し向こうには玄関から欅壮を抜け出した福が朝を欅女学校から外に出すための案内をするために先に行動を開始している。福は花に手を振り、朝と同じように夜の闇の中に消えていった。
そうして花は一人になった。
雪はいつのまにかやんでいた。もともと雪が多く降る土地ではない。それでも大地の上は真っ白な色をしている。
魔法みたいだね。花の中で福ちゃんが言った。
もう数時間が過ぎたら夜は明ける。
それは魔法のようだと思った。
窓を閉めて白いカーテンを閉める。ベットに潜り込んで目を閉じる。
眠れない。
数分後に諦めて花は目を開けた。ひたいに手を当てると熱はもうないように思える。
迷ったけど、花は起きて着替えをする。それから(一応)買っておいたひまわり模様のエプロンをつけると料理の支度を始めた。
「ただいま。無事王子様は檻の外に抜け出すことができたよ」と玄関から福の声が聞こえる。
それから台所に立っている珍しい格好をした花を見て「なにしてるの? 花」と福は言った。
「カレーライスを作ってる。もう少しでできるからちょっとだけ待ってて」と花は言った。
福はそんな花のことを見ながら、花嫁修行かな? とそんなことを思った。
花のカレーライスは見事に失敗した。大地の上に積もっていた雪もすぐに溶けて無くなってしまった。次の日に雨が降ったからだ。
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