「あ、これ美味しい」

 朝の作ってくれたおかゆを食べながら花は言った。

「すごいでしょ? 自信作なんだ」と朝は褒めてもらいたそうな顔をしながらそう言った。

 おかゆか。おかゆは熱があるときにお母さんがよく作ってくれたな。懐かしい。

 朝を褒めながらそんなことを花は思う。

「ただいま」と福の声がした。

 甘ったるい二人の様子を見ながら「あらあら。お邪魔だったかしら」とわざとらしい口調で福は言った。

「福ちゃん。これ見つかったら本当にやばいよ」と朝を指差しながら花は言った。

「うーん。流石に退学になっちゃうかな?」と欅荘の売店で買ってきた食べ物を置きながら福はいう。

「当たり前でしょ? ここは欅だよ。男子禁制。掟破りは島流しだよ」花は言う。

「まあそうだけど、男子と付き合ってる子はみんなそうするからね」とコーヒーの用意をしながら福は言った。

「それはそうだけど」と花は言う。

 欅の生徒たちは天使でありながら悪魔である。それは花もわかっている。(自分もそうだからだ)しかし、それでも勇気がいる行為である。

「愛は人を狂わせる」にやにやしながら福はいう。

 花は福の顔を見ながら確かに今の福ちゃんは悪魔の顔をしていると思った。

「花と一緒に雪を見たかったんだ」福の淹れたコーヒーを飲みながら朝は言った。

 まあ、たぶんそんなんじゃないかと花は思っていたのだけど、やっぱりそうかと思った。

「窓開ける?」花が言う。

「それはいいよ。一緒に雪は見たいけど、部屋の中が寒くなるから今はいい」と朝は言った。

「良かった。花、元気になったね」福はいう。

「もともと微熱だよ。少し横になっていれば大丈夫」花は言う。

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