花は欅女学校のえんじ色の制服に身を包んでいる。白いワイシャツと制服と同じ色のリボンを首元に付けている。スカートたけは長く足元は白い靴下と焦茶色の革靴をはいている。欅女学校に通っている生徒はみんな同じ格好をしている。

 今日、花は眼鏡をかけている。勉強するときや、本を読むときだけ、花は眼鏡をかける。花は今、女学校の図書室にいる。そこで黙々と勉強をしていた。

 花の前の席にはいつものように福がいた。福はいつも愛用の眼鏡をかけている。でも運動するときには外していた。福は勉強は普通くらいの成績だったけど運動がすごく良くできた。それに福はスタイルも良かった。(羨ましかった)花は自分もそこそこだと認識しているけど、福ちゃんには負けるなと思っていた。背丈は同じくらい。でも同じ制服を着ているとそれらの違いも見た目ではほとんどわからなかった。まるで見えない鏡に映っている姿のように二人の存在は均質化されていた。

 時間はあっという間に過ぎていった。時刻は放課後から下校の時間となった。でも二人はまだ勉強を続けていた。

 花と福は欅女学校の敷地の中にある欅荘と呼ばれる建物の中で生活をしていた。そんな生徒が欅女学校には大勢いる。だから二人はそれほど下校時間を気にする必要がなかった。(もちろんあらかじめ許可はとってあった)

 そろそろ帰ろうか。福ちゃん。と花が背を伸ばしながらそう言おうとしたとき、先に福が「雪だよ。花。雪が降ってる」と窓の外を見ながらいった。

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