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花の通っている名門欅女学校では、みんながお淑やかで、清楚で、問題もなく日々を過ごしている。と言うことに世間ではなっている。でももちろん実際にはそんなことは全然なかった。みんな問題ばかりだった。みんな必死に毎日を生きていた。それはもちろん花もおんなじだった。(と言うか花は学校内では有名な問題児だった)
「失礼しました」
花はそう言って頭を下げながら古い歴史ある扉をゆっくりと閉めた。
「また怒られちゃったね」ふふっと笑いながら福は言った。
花の歩く速度に合わせて、扉の横の木の壁に背中を合わせて立っていた福は歩き始める。二人が足をつけるたびに、歴史ある床はぎいぎいと小さな音を立てた。
「私、この学校嫌いだな」歩きながら花は言った。
「じゃあなんでお受験したのよ? この学校を選んだのは花でしょ?」花の横までやってきた福はいう。
「それは……」お母さんの母校だから、とは言えなかった。(お母さん離れできていないと思われたくなかったのだ)
「入る前とあとで思っていたよりも印象が違ったのよ」花は言った。
「それは、まあわかるかな?」笑いながら福は言った。
急足で歩くたびに、花の美しい長い黒髪が小さく揺れる。窓から差し込む光に照らされて輝いている。綺麗だな、と横にいる福は思う。
「どうかしたの?」自分をじっと見ている福を見て花は言う。
「私も髪。伸ばそうかな?」福はいう。
福はその髪を耳が隠れるくらいまで伸ばしていた。子供のころはずっと髪を伸ばしていたのだけど、中等部のころに短くしてからは髪を長く伸ばしてはいなかった。
「どうして? 今の髪。すごく福ちゃんに似合ってるよ」と花は言った。その花の言葉を聞いて、福は顔を赤く染めた。
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