第30話 友好関係?
「交流パーティで彼らと出会ってね。明日のフラッグ戦で戦う相手に、ぜひ挨拶をしておきたいと言われたんだ」
笑顔の一樹教官だが・・・楽天的と自覚する御堂でも、これには疑問を感じざるを得ない。
(
御堂たちがいる休憩スペースは、中央デッキの空きスペースに飲み物の自動販売機と簡易的な椅子を並べただけで、部屋としての仕切りはない。
イルドラ兵と何をやっているのか?
整備スタッフの嫌悪と好奇の籠もった視線が突き刺さる。困惑している御堂に気付いて、一樹教官は御堂の肩に軽く手を乗せた。
「多少の批難は覚悟してるよ。でも、帝国とイルドラ公国が初めて行う共同の行事だからね。まず、君たちの世代から友好関係を築いて欲しいんだ」
その言葉に、御堂はシンパシーに近い気持ちを感じる。
「若手同士、忌憚ない意見交換をして欲しいな。何かあったら、私の命令でやってると言っていいからね」
御堂に対して片目を
「優しい上官に恵まれてて、君たちは幸運だなあ。俺の新兵の頃は・・・」
巨漢なトーエン中尉が、新兵時代の「嫌味な上官」の話をした。その「嫌味な上司」が、実は今のリーダー格のジュエン大尉であるとのオチに笑い転げる2人・・・つられて思わず御堂も笑ってしまう。
「
ジュエン大尉が提案してきた。
「はい。では向こうで・・・」
ジュエン大尉の提案に、御堂は3人を案内しようとする。しかし、入鹿が御堂の腕を掴んで押し止めた。
「申し訳ありませんが、お受けできません」
御堂の言葉を遮り、入鹿がジュエン大尉に向かって拒否を伝える。そして、おもむろに立ち上がると、御堂の腕を掴んで休憩スペースの外へ引きずり出した。
「ちょ・・・痛い!」
「整備中の
「でも、一樹教官の・・・」
「責任を取る能力のない者の指示は無意味です」
入鹿に握られた御堂の手首から先が、血の気を失っていく。
「痛いよ。離して!」
手加減していない入鹿の怪力に、御堂は思わす大声を出してしまった。それを聞きつけたトーエン中尉が休憩スペースを飛び出して入鹿の腕を掴む。
「女性に対して乱暴は無粋だろ」
入鹿が、トーエン中尉に向き直る。
「すぐに退艦して下さい。今なら不当侵入は不問とします」
(玲は、故意に事を荒立てようとしているの?)
御堂は直感した。
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