第29話 嫌悪の視線
陸上戦艦『朱雀』の中央部は、重甲機兵6機を運用するための
今回の合同演習のための遠征では、中央デッキが
・・・違和感?
既に20時を過ぎて、多くの整備員が終業時間を迎えている。今、ドックに残っている整備員は夜勤担当のスタッフだ。しかし、その夜勤スタッフに漂う緊張感は尋常ではなかった。御堂や入鹿と視線が合うと首を横に振り「来るな!」のアイコンタクトを送ってくる。
とは言え、一樹教官に呼ばれているので乗艦口へ向かうしかない。
中央デッキの乗艦口の側で、一樹教官は爽やかな笑顔で二人に向かって手を振っていた。一樹教官の側に3人の人影が見えたが、それを見て入鹿は足を止めて動かなくなる。
御堂が、入鹿の腕を掴んで引きずるように一樹教官の近くまで連れて来た。
「二人とも、急に呼び出して悪かったね。折角の機会だから、ぜひ紹介しておきたいと思ったんだ」
一樹教官は、右手を背後にいる3人に向けた。3人はイルドラ公国軍の制服を着ていた。一人だけ色違いの制服で、おそらく技術部の将校だと思われた。
「合同演習に参加してくれているラング隊のキム・ジュエン大尉。明日のフラッグ戦に参加するペルセウスのパイロットだよ」
ジュエン大尉は小さく会釈する。
「同じく、そのパートナー機パイロットのケン・トーエン中尉だ」
かなり大柄で鍛えあげた筋肉が軍服の上からでもわかる。ペルセウス型のコクピットはジークフリードより狭い。この体躯では相当苦しいのではないかと他人事ながら御堂は思ってしまった。
「そしてジム・グエン中尉。彼はラング隊の技師だけど、GS4を近くで見てみたいと懇願されてね。断ったんだけど、勝手に着いてきてしまったんだ」
ニコニコと笑いながら一樹教官はグエン中尉を紹介した。グエン中尉は、バツが悪そうに苦笑した。
「よろしく」
リーダー格のジュエン大尉が握手を求めて右手を入鹿の方に差し出すが、入鹿は応じない。御堂が一歩前進して、その右手を握った。
「彼女は御堂咲耶准尉。まだ若手だけど凄腕でね。その腕を見込んで
一樹教官が御堂を紹介すると、ジュエン大尉を驚きながらも口笛を鳴らした。最後に入鹿を紹介してから、乗艦口に近い休憩スペースに5人を案内した。
ドッグの整備スタッフからの嫌悪の視線は、御堂にも伝わった。
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