第43話結婚式2
「あの時はすまなかったね、ミネルヴァ嬢」
悪びれもせずに言う元第二王子に内心呆れました。
『図々しいコンテスト』があれば、堂々の第一位でしょう。『無神経コンテスト』でも一位は確実。ですが、この人懐っこさのせいで妙に憎めないんですよね。
「いえいえ、どういたしまして。あの御令嬢では王子妃は無理だったでしょうし。もし王子妃になった時は我が国の恥を国内外にさらけ出す事態になってましたから。私達、婚約者候補の精神的苦痛くらいなんともありませんわ。ええ、本当に」
「相変わらず手厳しいな」
「事実を受け止めるのは大事ですわよ。特に
「私は政界に出る気はないよ。義父上の後を継いで近衛騎士団長になるからね」
「残念ですわ。政治家向きの御性格ですのに」
「私が?まさか!買いかぶり過ぎだよ」
「そうでしょうか?御自分は一切動かずに、他者を上手く誘導する手段に感服してますのよ。ああ!違いましたわ。一度だけ御自身で動かれた事がありました!アレは実に見事でした。私、感服いたしました」
「……なんのことかな?」
元第二王子は目を細め、また微笑みを浮かべました。
柔らかな笑み。
目だけが笑っていない笑み。
「
「さて、どの家の令嬢かな?」
「殿下に御執心だった令嬢です」
「婚約者候補にも選ばれなかった令嬢からの秋波は多くてね」
「一々覚えていないと?」
私と元第二王子はお互い笑顔のまま、じっと見つめます。
侮れない御方。
誘拐された恋人を助ける為とはいえ、彼女の友人を囮に使ってまで実行したのを知った時は背筋が凍るかと思いました。
実行犯を皆殺しにしただけでなく、指示した令嬢の顔を変形が治らないほど殴ったことも。令嬢の体からありとあらゆる液体が流れている状態で放置。心を病んだ令嬢はその後、他国の評判の悪い修道院に送られたとか。
誘拐事件を知る人は少数。
元第二王子は恋人を守るため、事件そのものを隠蔽したのです。
あぶりだす者は今後出てこないようキッチリと。
「風通しが良くなって色々と動きやすくなったことでしょう」
「……はて?私は単純明快な男でね。ミネルヴァ嬢が何を言っているのか理解できないよ」
「まぁ、そういう事にしておきましょう。
「怖いな~~」
とぼけたフリも板についたこと。本当に恐ろしい人だわ。
間違いなく、裏で糸を引いていたに違いないのに証拠は一切残してないのだもの。
暫くは要注意ですね。
王太子殿下の結婚式後、五大侯爵家はある提案書を王家に提出しています。
今後、もしも元第二王子が王族復帰を果たす事があれば、その妻である伯爵令嬢を正妃に据えないこと。
王族復帰の際に伯爵令嬢と離縁するか、もしくは妾妃に迎え入れること。
なお、妾妃に迎え入れたならばその立場に従い妃教育を受けさせること。
妃教育が修了出来なかった場合、公務には一切出させないこと。
それらの条件を突きつけました。
ない、とは思いますが。
それでも油断は禁物。
王太子殿下に御子が誕生しなかった場合、元第二王子の存在が再び注目される。そうなれば王族復帰になる恐れも十分考えられるのですから。用心に越したことはありません。
そしてそれは近い未来で現実に起こるのですが、それはまた別の話。
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