第42話結婚式1

 二年後――



 ウォーカー侯爵領の神殿で今日、私とアデルハイン様の結婚式が執り行われました。

 五大侯爵家一同と各辺境伯家一同、王家からは王太子殿下とその婚約者が参列し、とても盛大な挙式になりました。まぁ、ワザと派手婚にしたんですがね。だってどこかの誰かさん第二王子夫婦は地味婚だったので。ちょっとした意趣返しですよ。


「ミネルヴァ!お兄様!おめでとう!」


「ロザリンド!ありがとう!」


 純白のドレスに身を包んだ私を見てロザリンドは微笑みます。

 留学先から一時帰国です。辺境伯家ではなく侯爵家に滞在します。義姉妹になったんだから当然の権利だわ!


 寄り子貴族達も侯爵家の婿が辺境伯子息な事に、ニッコリ。

 辺境伯家の親族も侯爵家と縁組できて、ニッコリ。


 私とアデルハイン様もニッコリ。


 私との結婚で軍も退役したとはいえ、アデルハイン様は軍のOBです。

 これから先も何かと軍に融通させていただきます。


 それを聞いた軍もニッコリ。


 これからも良い関係が続いて行けばいいですわ。




「王太子殿下、今日は来てくださって、ありがとうございます」


「弟が迷惑をかけて申し訳ない。本人もすまなかったと言っていたよ。私が今日の式に出ると知って伝言を頼まれてね」


「まぁ!自覚があったのですね!」


「そう虐めないであげてくれ」


「ほほっ。虐めてはいませんわ。その証拠に辺境伯家からの武器と物資を再び購入できるようになりましたでしょう?」


「ああ、前の十倍の価格でね」


「ほほほほっ。近衛騎士団のお仕事は王族を守るのが基本ですから、そんなに武器は必要ありませんでしょう?魔獣と戦うという訳でもありませんし、対人戦をするようなこともないでしょうし?」


「嫌な事を言うね。だが、確かにその通りだ」


「申し訳ありません」


 本当に怒っているわけではないけれど、からかいすぎましたね。仕方がないので、軽口で流してあげることにします。


「王太子殿下」


「なんだい?」


「殿下の結婚式には私達夫婦は参加させていただきます」


「……ありがとう」


 元第二王子の結婚式?そんなもの出る訳ありませんし、実際に出ませんでした。私だけでなく五大侯爵家の全員が。元王族、元王子の婿入り先が伯爵家だから不参加した訳ではありません。別の理由で出ませんでした。

 それは何処かのお馬鹿さん伯爵令嬢が頼んでもいないのに図々しくも結婚式の招待状を寄こしてきたのです。ええ、近衛騎士団を通じて、ですよ。本当に図々しい。ここは謙虚さを見せる処でしょう。そうすれば王都の物価値上げもマシにして差し上げたのに。残念です。


 私達の結婚式の半年後に王都では王太子殿下の結婚式が行われました。


 何処かのお馬鹿さん伯爵令嬢と違って招待状の字も美しい侯爵令嬢からのお誘いです。予定を空けない訳にはいきませんわ。伯爵家の若夫婦は式に参加しないようなので安心して列席できます。因みに、王太子殿下と元第二王子の仲は良好。元第二王子は結婚式中は王太子殿下の護衛を買ってでるくらいには。



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