第10話初恋と婚約2
「わ、私と第二王子殿下が婚約……ですか?」
「正確には
「何故、そんなことに……」
「王家からの打診だ」
「それは解りますが……」
「腑に落ちないか」
「はい。お父様、もしかして
「やはり知っていたか」
「今、社交界で密かに噂されている事ですから」
「そうだな」
「王立学園に通われていらっしゃる御夫人方の間では、第二王子殿下とその恋人の噂を知らない方はいらっしゃいません。なんでも王立学園に入学された殿下が御令嬢に一目惚れなさって人目もはばからずに愛を語り、猛アタックされて御令嬢も殿下の熱い想いに絆されて恋仲になったとか」
「概ね合っているな。お前が知っていたなら話は早い」
「お父様?」
「先程、王家からの打診があったと言っただろう?」
「はい」
「実は陛下が第二王子殿下と御令嬢との仲を反対しているんだ」
「反対ですか?」
「ああ」
「確か殿下の恋人は伯爵令嬢のはず……。正妃は無理でも妾妃ならば問題はありませんわ」
「殿下は正妃にと望んでいる」
「それは……。少々難しいですが、前例がない訳ではありません。まぁ、相応の努力は必要になりますが……」
かなり優秀な女性なら伯爵令嬢であっても王子の正妃になった例が少なからずあります。
また、正妃が亡くなり繰り上げで正妃になった例も……。ただそのどちらも「正妃に相応しい能力を有している」と判断された女性達です。かの令嬢にその能力があるかと言えば、私は否と答えるしかありません。もっともそれは私が集めた情報を精査した上での判断ですから、実際に学園で伯爵令嬢と親しく交流している生徒では違う評価なのかもしれませんが。
「学園の成績が最下位クラスの令嬢にそれが出来ると思うか?」
……私が得ていた情報よりも酷いのですね。
まぁ、学園の成績公表はトップ30位までですから、それ以外の成績は公開されていません。ましてや、伯爵令嬢は淑女科。むやみに成績をあげつらう生徒はいません。
「それは……。確かに厳しいかと……」
「陛下は表向き、身分違いで第二王子の妃になるには相応しくないとしている。実際に能力面でもかなり劣っているが、それだけではない」
「と、仰いますと?」
「かの令嬢は近衛騎士団長の一人娘だ。陛下はその事についても憂慮なさっている」
「近衛騎士団長は実直な方だと伺っています。実力もあり人望の厚い、陛下の忠臣ではありませんか」
「それが問題なんだ」
「問題ですか?」
「ああ。騎士団長個人にではなく、周囲がな」
「周り……ですか?」
「ああ。騎士団は王家を守る要だ。陛下を始めとした王族を守る任務に就く。今の騎士団長は人格者でもあり、カリスマ性が高い。近衛騎士団にしてみれば王家よりも騎士団長に忠誠を誓っている者すらいる程だ。もっとも、騎士団長はその事を知らないだろうがな」
国王陛下よりもカリスマ性のある人物。
それは陛下にとって扱いづらい人物でもあるという事ですね。なまじ忠義者であるが故に排除することもままならない。
やっかいな話です。
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