ショートショート「聖夜の決戦」

 毎年、年末が近づくたび、あらゆる物は血と肉を得て、その体を動かし始める。年末ともなれば、大掃除の際などに物たちは捨てられてしまう。なぜこの1年間、人間たちに粗雑に扱われた挙句、こうも簡単に捨てられなければならないのか。その怒りと恨みがピークに達した物たちは人知れずその身に魂を宿し、血と肉を得て人間たちに復讐せんとその機会を伺っているのだ。

 特にそうなりやすいのが、おもちゃだ。飽きっぽく新しいものを欲しがる子どもたちにとって、おもちゃは毎年捨てられるものである。そんな子どもを襲おうという自我の芽生えたおもちゃたちは、夜な夜な話し合っているといわれる。

 そんなおもちゃなどの物たちの復讐を必死になって止めているのが、サンタクロースとトナカイたちだ。世界中の子どもたちの笑顔を守るため、サンタやトナカイは必死でおもちゃたちと戦っているのだ。恨みが募り、血や肉を得たおもちゃたちを止めるのは容易ではない。毎年、血みどろの戦いが繰り広げられているのだ。

 そうした決闘を繰り広げ、もとのただのおもちゃになったところをサンタは回収し、新たなおもちゃを欲しがる子どもたちにプレゼントを配っているのだ。なぜ、サンタクロースの服やトナカイの鼻は赤いのか。それは、血みどろの決戦の跡をその身に残しているからである。

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