ショートショート「贈る言葉」
卒業生代表の山本です。ここまで育ててくれたお父さん、お母さん、本当にありがとうございました。今日、僕たちはここを旅立ちます。
3年前、僕はこの高校の校門を、期待に胸を躍らせてくぐりました。そして待ち受けていた高校生活は地獄そのものでした。人と話すのが苦手だからというだけで、いじめの標的にされました。毎日のように罵詈雑言を浴びせられ、教科書も文房具もいつの間にかゴミ箱に入れられていました。そして遊びと称して僕を真冬のプールに突き落としたり、倉庫に閉じ込めたりもされました。また、担任の松田先生にこのことを話しても、「仲良くしたいだけなんだよ。」「お前ももっと人と接するようにしろ。」などと言って、相手にしてくれませんでした。
挙句の果てには、不登校になった僕の家に迷惑電話をしょっちゅうかけてくるようになりましたね。あのせいで、僕の両親は一時期ノイローゼになりました。そんなことが積み重なって、勉強どころではなくなってしまった僕は、大学に進学するのを諦めました。でも、いじめていた君たちは無事に受験に成功したと聞いたとき、この卒業式を実行することにしました。
きっと、山奥の廃工場で卒業式をするなんて、主犯格の山本君も、その取り巻きの皆も、松田先生も思ってもいなかったと思います。おや、まだ緊張してるようですね。手も足も拘束されているのに、ガタガタ震えているようだ。声を出しても無駄ですよ。ここには何年も人が立ち入ってないんですから。では、これから爆弾の点火に参りたいと思います。
では改めて、ここまで育ててくれたお父さん、お母さん、本当にありがとうございました。今日、僕たちはここから、旅立ちます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます