ショートショート「特殊詐欺」

「もしもし、お母さん?オレだよ、オレ。」

「コウタかい?」

「そうだよ、コウタだよ。実はオレ困ったことになっちゃってさ。今日中に

「コウタの場合は1を、ユミコの場合は2を、お父さんの場合は3を、押してください。」

「はい?母さん変な冗談言ってないで、早く助け

「応答がない場合、強制的に電話を切ります。」

「音声ガイダンス?マジでなんなんだよ。じゃあ1だ。」

「1を押されたコウタは次の質問に回答してください。」

「まだあんのかよ。」

「お金が欲しい場合は1を、結婚のことについて話がある場合は2を、実家を継ぐ気になった場合は3を、押してください。」

「なんだこの家。じゃあ1だ。」

「1を押した場合は次の質問に回答してください。」

「もういいって。今度は何?」

「パチンコのせいでお金がない場合は1を、競馬のせいでお金がない場合は2を、競艇のせいで…」

「自分の息子のことクズだと思ってんのか。」

「…9を、交通事故の示談金としてお金が欲しい場合は0を、押してください。」

「やっとそれっぽいのが来た。じゃあ0だ。」

「かしこまりました。それでは少々お待ちください。」

「やっと話せそうだ。とっとと金振り込んでもらって終わらせるか。」

「…はい、こちら警察です。」

「は?どういうこと?なんで!?」

「あなた、110って押したでしょ。そうすると自動的にうちに繋がるようになってんの。というか、話してた内容全部聞こえてきたからね。即逮捕できるから。」

「そんな!それだけは勘弁してください!」

「んー、じゃあまだ今回は未遂だし、上には黙っといてやるよ。」

「ありがとうございます!」

「その代わり、いくらか金はもらわないとな。銀行で50万おろして、駅前で待ってるやつに渡してくれ、今回はそれでいい。」

「分かりました!」

「ふぅ、やっと電話切れた。しかし便利な世の中になったものね。ちょっとした細工で老婆の声が、機械音声や警察官の声に変えられるなんて。」

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