ショートショート「絶対幸感」
絶対幸感。それが悪魔が私に与えた能力だった。自分に向けられた言葉がどんなものでも、自分に都合よく聞こえるというものらしい。悪魔を呼び出そうとするほど、いじめられて毎日が苦しかった私にはちょうど良かった。一定期間、私は今までのような生活を送らずに済めるそうだ。
次の日からは生活が変わった。会えばすぐに、「こっち来んな」とか「生きてる価値なんて無い」と言ってくる女子たちが、「ちょー可愛い」とか「会えて嬉しい」などと言ってきた。もちろん、本当はそんなこと言ってないのはわかるが、口先だけでもそんなこと言ってもらったのが嬉しかった。そんな言葉を言われ慣れていないのと、私を睨む目と聞こえる言葉のギャップが激しすぎて、にやけてしまった。すると女子たちは余計私に何か言うようになった。笑ったのが気持ち悪かったのか暴言を吐いているようだが、「笑った顔の方がちょー可愛い」と聞こえてきて、更に笑ってしまった。
すると今度は男子にまで色々言われるようになった。恐らく、キモいとかウザいとか言われてるのだろうが、「え?彼氏とかいないの?」、「一緒にいて楽しいな」と聞こえてくる。
特に中村くんはしつこく話しかけてきて、いっつも「可愛いな」、「何かあったら言ってくれよ」と言ってくる。本気でそう言ってるわけじゃないことは分かってたけど、男の子に話しかけてもらえることなんてほとんど無かったから、それが嬉しくて、いつしかいじめていた女子たちの言葉なんか気にならなくなってきた。今日はいつもほど褒めてくれるわけじゃなかったけど、色々と話しかけてくれて、とても楽しかった。休み時間には、「放課後、体育館裏で待ってる」と言われた。私もそこまで馬鹿ではない。適当に相槌を打って帰ろうとした。
すると目の前に悪魔が現れ、「契約について話がある」と言われた。まさかもう期限切れ?やっと生活が楽しくなってきたのに、またあの辛い日々に戻ってしまう。私は絶望した。
そして悪魔は言った、「言い忘れていたが、昨日で能力は使えなくなっているぞ。」私は体育館裏に走っていった。
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