ショートショート「付喪神さま」
ぼくのお母さんは、とても物を大切にする人です。いつも、こわれたものがあればすぐに直して、物が散らかっているとすぐに片づけます。お母さんは、いつもぼくに言います。
「身近な物は大切にしないとダメよ。粗末に扱うと、付喪神さまが怒るからね。」
「つくもがみさまって何?」
「物に宿っている神様よ。この付喪神さまが怒ると怖いのよ。だから早くオモチャを片付けてね。」
ぼくはお母さんの言う通りに、おもちゃを散らかさないようにしています。
でも、お父さんは物を大切にしない人です。お酒の入っていたビンをその辺に散らかしたり、こわしたりします。ぼくが寝たあとでも、いつも部屋から、お父さんが物をこわす音が聞こえてきます。お母さんはそんなお父さんのせいで付喪神さまが怒るのが怖いのか、「もうやめて」「いいかげんにして」と大きな声で言っています。
ぼくが起きると、お父さんは寝ていました。お父さんの横には血がついた灰皿が落ちていました。ぼくはお母さんに聞きました。
「ねえ、なんでお父さん寝てるの?」
「お父さんはね、付喪神さまを怒らせちゃったの。身近な物を大切にしなかったから。だからその灰皿の付喪神さまが怒っちゃって、お仕置きとして、お父さんはずっと寝ちゃうことになっちゃったの。だから、物は大切にしないとダメなのよ。」
お母さんは、ぼくをギュッと抱きしめてくれました。ぼくのことも大切にしてくれるお母さんが、ぼくは大好きです。
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