第4話 面白い日常

2月1日、十年振りの大寒波が訪れ、詩乃が住む地域では珍しく雪が積もっていた。

そんな中、D組は36人いるうちの10人近くインフルエンザで休んでいた。


「静かだよね。西田君も休んでからかな?」詩乃は、授業間の10分休みに親友の水野 愛みずの あいと雑談を楽しんでいた。

「私の班、私以外誰もいないんだけど、次の歴史どうしよう?プリント班でやるよね?」愛は心配そうに呟いた。詩乃は少し考えると、自分の班を見て「そうだ」とひらめいた。愛は、「なになに?」と言わんばかりに首を伸ばした。詩乃は目を輝かせ、「私達の班3人しかいないし、愛ちゃん私の班に机くっつけよ。ちょうど、ミヤの前だし、ミヤは後ろにずれてもらったらいいし」と提案した。愛は「名案〜」と表情を明るくしたが、「宮西さんと三原さんは大丈夫かな?」と目を伏せた。詩乃はふふっと笑い「大丈夫だよ。ミヤが私と三原君は使えないから、誰かもう一人欲しいって言ってたし。愛ちゃんなら大歓迎だと思うよ。二人共いい子だし」と言ってあげた。


◇◇◇◇


「愛が来てくれて良かった。詩乃と亮平マジで使えないから」宮西はヒヒッと笑った。その言葉に詩乃と亮平はムキになり「一緒にすんな」「一緒にしないでくれる?」と同時に言い返した。そんな二人に、宮西と愛は思わず笑った。

「被せてくんなよ。詩乃」「三原君が被せてきたんじゃない?それに、私は三原君よりはマシだと思うよ」「絶対俺のほうが詩乃よりマシだろ?」

二人は更に言い合い、宮西と愛はそんな二人のやり取りを笑っていた。

「全く、二人イチャつきすぎだな〜。」二人の間に入江 拓海いりえ たくみが入った。

「亮平が言い返してくるからだよ」詩乃は言い返そうとしたが、ん?と何かに気づき拓海を見つめた。拓海は気まずそうに「なになに?」と目を泳がせた。「入江君。何かあった?」詩乃は少し目を細めた。拓海は少し焦った目をして「な、なんもないけど、昨日オールしたから疲れた〜」と言った。詩乃は少し笑い「そっか」とだけ言った。「じゃあ、俺そろそろ戻るわ」と拓海は足早に戻った。

「よくわかったな。詩乃」亮平は目を丸くした。詩乃は不思議そうな顔をした。亮平は少し声を落とし「アイツ、最近振られたんだ。知ってんのは俺と駿だけ。」と教えてくれた。詩乃はその説明に「そうなんだね」と頷いた。


ーー悪いことしちゃったかな。


詩乃は苦笑するとプリントの残りの問題を始めた。


◇◇◇◇


六限目は体育の授業だ。今日からダンスの授業と言うものに入った。


「じゃあ、今日はマイムマイムやりますね〜」と教師の声が響き、クラス全員は絶句した。

『まじかよ。中学生、下手したら小学生の頃のやつだろう〜。』『てか、手繋ぐとか、高校生でも無理だし〜』と文句が広がっていた。


◇◇◇◇


「じゃあ、クラス全員でやれ〜」教師の声が響き、皆は文句を言いながら円になった。

音楽に合わせて皆で踊った。男子達がふざけあい、クラス全員で笑いあった。

久しぶりだこんなに笑ったの。


◇◇◇◇

「あ〜明日と明後日も学校ダルいな〜」宮西はうーんと背伸びをした。もうすぐ終礼の時間だ。

「はい〜注目」数学の中年男性教師がいつのまにか、教卓にいた。

『あれ?本田先生は?』「出張中です〜」

本田先生は詩乃達の担任でもあり、英語担当でもあるのだ。

「では、プリントを配ります〜残念なお知らせです〜黙って読んでください」数学の教師はプリントを配り始めた。

「なんだろう?」「さぁ」亮平と詩乃は首を傾げていたが、宮西はニヤリと笑い「まさか、学級閉鎖?」と呟いた。「マジで?!」二人は思わず声を上げた。「こ〜ら〜静かにする」数学教師に笑いながら言われ、「すみません」と二人は笑いつつプリントを受け取った。

「学級閉鎖についてのお知らせ…」詩乃は周りには聞こえないであろう小声で読んだ。

「よっしゃ〜!!学級閉鎖」クラスが騒ぎ出した。『塾行かなくていいじゃん!!』『部活ねぇ!!なにより学校休める!!』

周りが、夏休みが始まるくらい騒ぎ出し、数学の教師は苦笑しながら、注意をした。

「絶対、ゲームしよ。オールもしよ」亮平は詩乃の肩に手を置いた。詩乃は目を輝かせ「いいよ。お菓子食べながらね」と笑った。


これから、楽しい日々が始まりそうだ。




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