第3話 システムの再開発

 私は事務所へ戻るとすぐに担当スタッフ達と確認作業に入った。

 紙の資料にはシステムの仕様と何かの一覧表。

 明らかに後から継ぎ足された一覧表であるが何か分からなかった。

 しかし、それはすぐに分かることになる。

 フロッピーディスクドライブを調達し、それを業務端末と繋ぐ。

 そしてディスク内のファイルを開くと、そこには見慣れぬマシン言語によるプログラムが書かれていた。

 仲間達と手を分けして調査を始めるが、災厄よりはるか以前に書かれたプログラムの様で現在我々が使っている物とは類似性が見られなかった。

 そんな古代の遺物レガシー・システムに頭を抱えそうになった時、スタッフの1人が気がついた。

 一覧表がこのマシン言語を現在使われている言語に対訳であることを。

 恐らく父が残してくれた物だろうと思う。

 完璧な対訳ではないし、未完成な代物であるが、社内のスタッフを総動員して新たな対訳表を構築していく。

 その間に父の知り合いにも助力を願い、システムプログラムについても調査をする。

 ここも資料に有った比較的新しい書き込みをきっかけに調べることでなんとか全容を掴むことができた。

 これなら問題なく新たなシステムを構築できると思い顧客へ連絡を入れ、プレゼンを行った。

 今まで解析した結果報告と新システムの方針の確認。

 全ては上手く行くとはずだった、思わぬ質問が飛んできた。

「解析結果は分かったのですが、そうすると暗号の自動設定と復号システムが無いようですが。」

 それは保安部署の代表だった。

 言われてみて気がついた。

 このシステムには外部通信を行う時に内容の暗号化するためのシステムが組み込まれていない。

 後々調べたところ、元々は専用回線を使ってデータのやり取りをしていた為、暗号化が必要なく、現在はオープン回線を使用しているがシステムの古さから既存システムで読み取れなくなっていたのだ。

 その為、これまで問題になっていなかった所を最新基準にしようとして思わぬ落とし穴として残ってしまったのだ。

 更に面倒なことは、このシステムで運用するデータは不正を防ぐため出力されたデータには加工すると自壊し、使い物にならないようになっていた。

 もちろんこれらのシステムを別のシステムに切り替える事は可能である。

 しかし、その為には複数のシステムを導入する必要があり予算が膨大になってしまう。

 再調査と確認を行う旨を伝え顧客先を後にした。

 事務所に戻り事の次第を話すと、スタッフも一様に悩んでしまう。

 現在、我々が取れる方法は2つ、先程の通り複数のシステムを導入する方法。

 もう一つが我々が1からシステムを構築する。

 前者に比べコストは安くなるが、構築にかかる時間は年単位となり先方の許可が降りるかは未知数だ。

 もしここで諦めると違約金が発生する。

 システムの規模から考えても、発生する違約金の額は我社の経営に大きく影響を与える可能性が高い。

 先方も父の顔を立てて違約金をある程度免除してくれるかも知れないが、大型受注業務の失敗は業界内での印象も悪い。

 今回の件が原因で依頼が減れば最悪、廃業の可能性もちらつく。

 父の持っていた資料が見つかったことで危機を乗り越えた気になっていたが、実は底に書かれていた本当の危機を見逃していたのだ。

 我ながら有頂天になりすぎていたと反省していた時だった。

 一本の連絡が入ったのは。

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