第五十五話 覚醒と力と勇気を振り絞り

...まだだ。




身体は光り出す。




『なんだ?!』




身体に異世界樹の模様が現れて全身の傷が癒える。光が収まり意識がはっきりと戻る。



(先ほどの紋章。ああ、そういうことか。こいつは...)


         


天井人の生まれ変わり






傷が癒えた?

状況整理がつかないが、一命をとりとめたので細かい事は後にしよう。

改めて剣を構える。




『名乗れ。』


「ん?」


『貴様と剣技を対等に構えることにした。お互いのことを知っても良いと判断した。』




こいつは俺を認めたっていう事らしい。事を構えるのに相手の事を知る事前余興。

こいつに対して隠すことは必要ないだろう。




「俺は異世界特殊戦闘暗殺者 蘭 淳也。」


『我は番人の遺跡の王直属配下 剣技の使 トロフィだ。嬉しく思うぞ、蘭淳也!』




トロフィは無駄落ちで防御を低下させる代わりに速度を上げた。


そして身体硬化で防御を補う。


風魔法:戦場の嵐で周囲に嵐を発生させて自身の攻撃を上昇させる。

念入りに能力スキルを使うってことは本気で闘ってくれるということ。


更に雷雲で雷を出して避雷針で剣に雷を纏わせた。


トロフィは素早く俺に接近する。


俺は炎壁ファイヤーウォールでトロフィを囲い、そこに炎海波ファイヤーオーシャンを流し入れる。


俺は続けて炎斬を飛ばす。




『攪乱と少しの攻撃か?我はそのようなものではびくともせんわ!雷辻線!』




トロフィはそこらの炎を薙ぎ払う。しかし炎は行く手を阻む。




『!?消えないだと。』




何度も斬るが次々と襲い掛かってくる。


実のところもう斬れて消し飛んでいる。原因は先ほど飛ばした炎斬。


合成効率化2で炎斬の効果を幻覚にした。それによってトロフィは一時的に錯覚している。


魔法耐性が高いので予め放水玉にも幻覚を施しておいた。


それのお陰で敵を追い込むことに成功した。


トロフィが斬っているのは炎ではなく、水。斬った感覚を残すので気づくのに時間がかかる。


畳みかける。


空間曲スペースベンダげで敵の体制を崩し、隙を狙ってマイナス粒子を帯びた手で霊剣を掴む。

雷を除去し、霊剣の効果:殺した数だけ強くなる を無効化した。




『幻覚?そこか!』




トロフィは剣に触れている俺を振り払う。幻覚から逃れる。




『少々ちょこまかしているのではないか?』


「戦いってそういうもんだろう。」


『ふっ。そういうものか...』




トロフィは久々に楽しみを思い出す。胸が高鳴る感覚が嬉しくて嬉しくて仕方がない。


自分と対等にここまでやりあえる、すべてを使ってぶつかり合う楽しさのみが頭にあった。

姑息でも、真剣勝負でも...




『はあああああ!!』


「はあああああ!!」




剣同士が高速でぶつかり合う。止まらぬ空気を揺るがすほどの闘い。

トロフィはフェイントをかけて剣を弾いたすぐに霊剣で斜め斬りする。




『斬鉄剣!』




俺は防ぐ。聖炎纏いの聖を持った結界で。




『何?』




トロフィの腹部ががら空きになった。


俺は横斬りで傷を入れる。




『フン!』




自己再生ですぐに直す。もう一発入れようとするが見切りで避けられる。


魔力濃度を上げた水斬を剣に纏わせて斬りかかるが魔法流しで流される。




『空間拡張、巨人の剣!』




広がった空間に大きく図々しく現れる巨人の腕。その手には巨大な岩石でできた剣が握られており、俺を斬りつける。


俺は剣を突き刺して横に飛び、霊剣を素手で防ぐ。


氷化で手は凍てつく。

聖炎纏いで溶かすも抜かれた剣で次の攻撃がくる。




『これで終いだ!天空連剣!』




天井に光の魔法陣が出現してその周りを小さな魔法陣が円を描くように複数出現。そこから天使の翼の生えた剣が無数に落ち光の柱が霊剣に降り注いでトロフィは振り降ろす。




『我の』


「勝ちだ。」




俺は回復して立ち上がってからずっとため込んでいたマイナス粒子を剣に注ぎ、それを振るった。




終焉ディストピア滅剣ナイト。」




黒く一つの刃となった粒子剣はトロフィの身体を切り裂いた。


舞った粒子によって光の剣は崩れて塵となった。




『見事だ...』


『蘭淳也は称号:剣王を超える者 魔剣技 を取得。能力スキル反射弾パリィき 魔法流し 戦場の嵐 見切り 斬鉄剣 影隠れ を取得しました。』




剣をしまった。

90階層の戦いが幕を閉じた。

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