第五十三話 力の工夫
守護像は斧を振り上げる。
智一は体を後ろに逸らして避ける。
(この速度と振ったときの音、当たれば致命傷だな・・・避けても掠って浅く傷がつく。持久戦はできるだけ避けたい。)
斧の先を地に着け断崖絶壁を使って智一を囲うように岩山を造った。
守護像は高くジャンプして体を回転させながら斧を強く振り下ろした。
智一は後ろに反射で避けたが砕けた地面が花が咲くように突き出し智一の腹を突いた。
「ぐぅはっ!」
智一は岩山に叩きつけられ血を吐く。
斧を軽々と持ち上げてその斧を智一に投げた。
(不味い!このままじゃ真っ二つに。)
智一はどうにかして斧が自身の体を真っ二つにする前よりも早く動ける方法を考える。
(少しでも足が速ければ!)
智一は足に魔力を流して雷化拳を足で出そうとした。その時世界は智一を導いた。
『桜井智一は
智一は瞬時に足に魔力を込めて雷化させて横に跳んだ。
一つの岩山が崩れた。智一は残りの岩山を伝って上へ駆けて行った。
(考える暇も与えてくれやしねぇ。感覚と瞬時の判断でなんとかするしかねぇな。)
守護像は周囲の岩山を薙ぎ払いその岩山を智一のいる方向に打ち上げた。
一発目、二発目は避けたが三、四発目から体を掠り突き刺さるように智一にぶつかる。
「っはっ!」
はっけいと覇気で岩を吹き飛ばし地上へ降りる。がよろける。
「...不味い。」
意識は保てるが身体を自由に動かせる状態でない事。これは今の状況では極めて危険なのだ。単純に聞こえ
るが単純だからこそ真実は危ないということだ。
守護像は大きな足音でゆっくりと近づいてくる。
智一は人差し指と中指をたて、地に突き刺して魔力を大きな球体状にして地盤を囲い腕力だけで持ち上げた。それにサンダーフィストで上手く電気をコーティングして敵にボウリング球のように投げた。
守護像は真っ二つにした。
智一はその隙に観客席に飛び移り守護像の様子を伺う。
守護像は土煙を払い、ガードブレイクを使用して智一に跳びかかる。智一は
崩れた瓦礫は遠くへ飛び、表面がもろくなったフィールドの地面を砕く。
(時間稼ぎも出来ない。一体...ん?)
智一が視線を向けた先は守護像の斧。電磁波を纏っており、瓦礫にもそこそこの電気が残っていた。
(もしかしたら...)
智一は守護像のいる方向とは逆に走り出してそれを追うように守護像も斧を振り回して辺りを壊しながら近づく。智一はジグザグに進み足が着く瞬間に足に魔力を込めて前へ大きく出る。
観客席は次々と壊されて瓦礫は電気を帯びてフィールドに落ちる。
一周した智一はフィールドに降り、落ちた瓦礫に飛び乗り外から中心に向かって渦を描くように一歩一歩に電気を込めて駆ける。
守護像は後を追って瓦礫ごと天罰落としで切り落とし、同時に智一の横に地表障壁で行き場をなくしたりもした。智一は雷化脚で勢いをつけて岩山を破壊。
中心に近づくにつれて踏み込む力もあがる。
風車で瓦礫は智一に当たるが全て回し蹴りではじき返した。そして瓦礫は散らばる。
智一は中心にとどまり、それに向かって守護像は突進して勢いよく斬りかかる。
斧が智一の腹部に迫る瞬間、智一は笑う。
「全て、整った!」
智一は雷化拳によるアッパーカットで斧を殴り、上へ弾く。
智一は
両手の五本指を地面に突き立てる。
混ざりあった瓦礫にある自身の魔力をたどり自身の魔力と瓦礫に残る魔力を結合させた。
(この量だと魔力が操作しづらい。もっと魔力を、操作する・・・いや、)
「してみせる!!」
『桜井智一は
智一の魔力は必要な分だけ、ムラなく行き届く。
「雷魔法:
それぞれの場所で磁場が発生し、螺旋階段状に瓦礫浮いて
守護像の斧も打ち上げられて空中で回転している。
智一は悩まず瓦礫を伝る。
守護像が追いつくよりも速く。
守護像は斧を手に取り、智一に向かってぶん投げる。
「そう来ると思ってたぜ。」
智一は空中で体を逸らして避け、斧を横に蹴る。斧は見えない壁に突き刺さる。
そのまましゃがみ込んで空高く飛んだ。
「
頭を下に向け、空を蹴った。急速落下して拳を構える。
「豪魔心骨破壊拳!」
拳一つに力を込めて
「はあああああっ!!」
下にいた守護像の胸部に衝突してそのまま地面に激しく叩きつけられる。
土煙が晴れたそこには
「残りの生命で俺を倒すつもりか。」
守護像は拳を構える。それに応えるように智一も構える。
両者拳で一騎打ち。片を付けるつもりだ。
両者同時に動き、拳と拳が顔を突く。クロスカウンター。
お互いに足を引いたが智一はあばらに向けて回し蹴りをする。
見切りで避けるが重心が安定せずに守護像はよたつく。そのまま空中で身体を回しながら頭部をかかとで弾く。
倒れた守護像の心臓を狙って力いっぱい拳を入れる。
守護像は動きを止めた。智一の勝利だ。
守護像の身体は光り、少しずつ消えていく。
「あの真っ直ぐな心ゆき、嫌いじゃないぜ。」
智一は去り際にそう一言言った。
私もだよ。
守護像が一瞬、笑みを浮かべてそう言い放った気がした。
智一は片手を上げて出口へと向かった。
80階層の戦いは幕を閉じた。
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