第四十八話 恐怖という名の壁
ミナ・ルーク・ユンタは60階層に居る。
辺り一面に広がる草原。天井には青空が広がり、真ん中が少し盛り上がっている。その周りには大きな岩や崩れた柱が無造作に突き刺さっている。
「ここは...って皆は?とりあえず状況を整理してここがどこなのかを把握して…」
「グルルルル。」
「グゥガルルルル。」
当然ユンタとルークは中心方向に向かって威嚇し始めた。
「どうした...」
ミナが見上げた先には全身鎧の弓を持つ巨大な女騎士が居た。
(なにあれ石像?解析。)
名前:不明 〈??〉性別不明 Lv推定180 種族:
称号:番人の遺跡の守護者 武器:なし 装備:なし
能力:付与(麻痺 火傷)浄気
身体硬化 瞬速
仲間:番人の王
攻撃・防御・速さ・魔力・魔法耐性不明 知力150
「ステータスのほとんどが不明って。しかも推定レベル180…」
確かに今までも自分との力の差が広い敵とは遭遇してきた。でもそれに挑めたのは他の皆が強くたくましかったから。
だから今のミナの頭に浮かんでいるのはただ一つ。
(怖い。)
エルはユンタとルークを連れて出口がないか探し始めた。
「出口、出口どこ?」
「ワウッ!ワウッ!」
ユンタは逃げてより安全な最善策を探すよりも敵に挑むことを選ぶ。
「だ、ダメだよ。このままじゃ皆殺されちゃう。きゃっ!」
攻撃を仕掛け始めた。真ん中から動かずミナたちを狙って弓を放ち続ける。敵は待ってくれない。
(どうしようどうしよう。)
「グワフゥ!」
ルークは敵を引き付けるために
前へ出て漆黒球を連射する。
しかし守護像には傷がつかなかった。守護像は目標を変えてルークを狙い始めた。
矢を放つがルークはそれなりに速いので全て避けきった。
守護像は弓を魔力によって補充し
ルークが守護像に矢を避けながら接近するが避けきれず右翼を掠る。
落ちたルークをすぐに攻撃するがルークはシャドウダイブで影に沈み、敵の後ろに回り込んで竜爪で切りつけ前に思いっきり蹴った。
守護像は少し前によろけたが倒れることなく腕を強く振りルークを突き飛ばした。ルークの傷つけた部位も再生する。
それでもルークは戦おうとする。
ミナはわからなかった。わざわざ生死を分ける戦いに挑むことが。
ルークはミナを探すよりも戦うことに向けさせようと必死に訴える。
「わからない。わからないよぉ。」
ミナにだって解っている。フロアボスを倒さないと次の階に進めない事、転送されて呼ばれたのに引き返せると思っていない事。
でも逃げたい。
それしかできない。
今の自分は実力不足だから。
無理ならもう諦めてしまおうとも思った。
『本当にそれが正解かい?』
「…え?」
しゃべりかけたのはユンタだった。その瞬間周囲の時間の進みがとても遅くなった。
「どうして...」
『君はこのままただ戦うことを諦めるのかい?約束したんじゃなかったの?あの時自らをボロボロにされてもなお新しい仲間と共に戦い続けようって。
君の望みなんじゃないの?皆よりも弱いからこそ努力して少しでも追いつけるようになりたいって。』
ミナの葛藤が覚めた。
(思い出した。私は小さいころ裕福じゃない家族を守るために強くなりたいと思った。でもうまくはいかず
惨めな自分に毎日嘆くだけだった。でも淳也さんや智一さん達にであって変わった。変われた。変われるような気がした。だから手放されるのが怖かった。でも決して手放そうとはしなかった。
特に智一さん。あの暖かさは嬉しかった。また生きて会いたい。そして守られるだけじゃなくて守れる存在になりたい。考えてみてば智一さん達は自分たちよりも断然格上の敵にもひるまず戦ってたもんね。
今更か…)
ミナの中で決意という強い敵に立ち向かう意思ができた。ミナは笑う。
「ありがとねユンタ。私、ちょっと抜けてたみたい。そうだね。たった一体ひとりでも戦い続けようとするルークに弱い所見せちゃいけないよね。私も戦う…みんなと一緒に!!」
『うん!』
時間が動き出す。
「ワフッ!」
「戦うよ!私も!」
ルークはボロボロな姿になっても立ち上がろうとする。
守護像はルークに向けて弓を引く。三本の矢にそれぞれ麻痺、火傷を付与して放つ。
死を覚悟したルークは目を閉じた...が見えない障壁がルークを守った。
「グルゥ?」
「ごめんね逃げて。私、怖かったんだ。でも逃げるのは止める。私も一緒に戦う。」
ルークは笑い、遅いんだよ と言いたげだった。
ミナは結界魔法:回復と
しかし状態異常の回復までには至らない。
(私が今ここで未来を示す!)
『ミナは
称号:立ち上がる精神 を取得。』
「状態回復。」
ルークの状態異常が回復した。
「こっからは私のターンだ。」
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