第四十七話 違和感は現実に

「でさぁ。残りのアントはどうするの?」




スチールアント達は怯えて後退しようとしている。




「そうだなぁ…生かしておいて他のハンター達の糧にさせてあげるようにするか。」




アント達は今は殺されないと思ってほっとする。でも俺は“悪”だから…


俺は不快な笑みをしてアントらを見つめる。

アントらもそれを察したらしい。




「でもどうせなら素材もほしいし別にあのレベルの大軍を相手にするのはハンター業界も一苦労だろう。

他のハンターには自然発生した迷宮ダンジョンの対策で手一杯だろうから。殺しても問題ないよね。」




エルと智一がコソコソと話す。




「ねえ、淳也君ってこんな黒かったっけ?(小声)」


「偶にあんだよ。特に裏作戦企てる時とかも一番の悪になる。(小声)」


「そうなんだ...(小声)」




それは尊敬の言葉として受け取っておくことにした淳也だった。(←勘)




「大掃除の時間だよ。」




肩に剣を担ぎ蟻アントに近づく。




「それじゃ私も参加しようかな。」




エルはエルで意外とノリノリだった。獲物を狩るときの目をして不快な笑みを浮かべている。

君はこっち側の人間か…いいね。


「俺らは出口探しとくぜ。」


「た、楽しんでくださぃ。」




アントらは一斉に逃げ出した。


俺らは部位関係なく刃を入れて次々と切り落としていった。


…十五分後

スチールアントの大軍 全滅。




「「討伐完了。あ。あははははは」」




ここまで息ぴったしなので思わず笑ってしまう俺とエル。




(そんな二人の姿に俺は怖いよ。)




智一はため息をついていた。




「智一さん、やっぱり見つかりません。」


「フロアボスも倒しているのに出口が一向に見つからないのはおかしいな...」




素材回収し終わったときに智一から報告してもらった。




「やっぱりおかしいよな?」


「ああ。フロアボスにしては弱いし通り道が入り口一つってのも不可解だ。とすると…」


「あのガラス玉に何かあるってことね。」




フロアボスを倒しても変化の無い巨大な球体。ということはこの球体はフロアボスに影響を及ぼすのではなく、この遺跡事態に影響を及ぼすということになる。


そうするとユンタが球体の近くに行き匂いを嗅ぐ。




「あっ、こら!ユンタ。」




ミナが止める前にユンタは球体に触れた。


その瞬間、なかの星々のようなものが強く輝きだして球体から黒い濃い霧のようなものが俺らを覆った。




「うわぁぁぁっ!」


...


いってて。今のは一体何だったんだ?

しかし俺が頭を上げると明らかにさっきの部屋とは違う場所にいた。大きな一本の暗い橋の上に居た


通路の外は下の見えない空洞。風が吹き通る。通路の端に沿って人の背の高さほどの柱が何本も建っている。まるで王の玉座でもあるのではと思うくらい。


...橋の先からなにか大きな存在が近づいてくる。足音も重々しく近づくたびに揺れが大きくなる。


俺側の柱から向こう側へ青く灯されていく。




ファンタジー雰囲気増しましだな。

灯のお陰でやっと姿が確認できた。




「騎士...」




巨大な石像が歩いているとしか思えない。灰色で細く俊敏に動くタイプの騎士。片手に長く大きな剣を持ち兜の隙間は赤く輝いていた。今までのとはオーラが明らかに違う。




「チャレンジミッションってことでいいのかな?」




立ち上がり剣を斜め下に振るい、態勢を整えた。

そして知った。

蘭淳也は90階層に居てそのボスと対峙しようとしていること。


淳也だけでなく他の皆も別階層のボスとそれぞれが対峙しようとしているということ。

そしてこれは遺跡からの試練であるということに。


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