第四十五話 中心部

食事を済ませ、休憩をとって次へ進む。


二十八階から四十階層


ペースを一段上げたので予定よりも早く進んだ。氷河地帯や泥沼地帯、熱水地帯と前よりもジャンルが増えたが草原地帯や浅瀬地帯と多少足元を邪魔する地帯も出てきた。


敵のレベルも十レベルほど上がっているがミュータントに比べれば弱くゴーストを地道だが十数体倒しているのでそこまで痛くはない。


罠も毒矢、鉄球転がし、閉じ込め部屋などダンジョンらしくなってきたが避けなくともその場で受け止め壊せばいいので問題の範疇ではなかった。脳筋プレーだが、対外智一が先手処理。


ラフレシア型、ハエトリグサ型、綿帽子型の植物魔物プラント


ドクゲムリと獲物喰イートルいとポタンタが集団で襲い掛かってきた。




「私が出る。」




エルが前に出た。ドクケムリらは毒息を鋭く放射してきたがエルは鎌を高速でプロペラのように回してこちらに来ることなく払った。




「行くよ。」




ハエトリグサは蔓を素早く動かして地形を生かして早く動くエルを叩こうとするがエルはつま先で跳ねて軽々と避ける。


蔓がエルに向かって伸びる。エルは鎌をブーメランのようにぶん投げて蔓を切り裂く。




(思っていたよりも体が硬い。)




ポタンダが息をを大きく吸って膨れ、体の小さな綿帽子が飛び散る。


それらは俺らと同じくらいの大きさの兵隊となり俺らに向かってくる。


解析したところその兵隊に引っかかれると毒をくらうらしい。しかも倒すと爆発して毒粉塵をまき散らす。


「エル、こっちは俺らでなんとかするからそっちに集中してくれ。」


集中してくれって言ってもエルなら気軽に切り刻みそうだけど…


俺は剣を振って炎斬を数発飛ばして離れたところで起爆した。

エルはその間も問答無用に刃を振るう。

しかしきりなく湧いて出てくる。




(めんどうだなぁ…でも炎三連砲だと淳也君らを巻き込みかねないし。なにか風切りの密度を上げるべきか…)




敵を斬りながら悩むエル。そんな時、エルの頭には淳也の姿が浮かんだ。




『エル・スカイシアは能力スキル:炎斬を取得しました。』


(おお、淳也君の戦法を使えるじゃん。)




エルは空中歩行で敵の隙間を軽やかに避けてちょうど真ん中に降りた。


魔法植物プラントが一斉攻撃をした。獲物喰イートルいが首を伸ばしてエルに噛みつこうとしポタンダが毒針を飛ばし、ドクケムリは毒を圧縮し刃とビームを融合して放つ毒烈線を飛ばした。




風圧砲エアロブラスト。そして炎斬!」




魔法連撃で一度の回数を増やし、風圧法エアロブラストに炎斬を上乗せして炎三連砲よりも周囲の影響力が弱くかつ敵に効果のある攻撃をした。


植物魔物プラントらはエルに触れることなく後ろに吹き飛ばされ、硬い体を炎の刃が切り裂いてバラバラになっていく。


エルの周りには塵一つ残らなかった。




『エル・スカイシアのレベルがアップしました。』


これ、回収できる素材残っているのか?

智一の疑問よりもエルの魔法威力の方に驚く。




「お疲れ。格好良かったよ。」


「ありがと。」


「にしても炎斬をこの展開で使うなんて、エルらしくないなぁ。」


「それは皆の危険を冒したくなかったからだよ。それにあの場で手に入れた能力スキルだったから使ってみようと思っただけ。」


「あの場ってことは…もしかしてじゅ…」


「んん”、ん”。」




エルはわざとらしく咳き込み、ミナの言いかけた言葉をかき消した。




「ほ、ほら、次行くよ。次。」




エルは何か隠し事をしているようだがなんか触れてほしくなさそうだったので触れなかった。




「わかったわかった。」




四十一階から四十九階層


先ほどの階層と平均レベルは大差ないが下位地竜があちらこちらで見られ、岩団子ゴローという頭岩コアに複数の岩が纏わりついている危険度上の下にあたるモンスターも増えてきた。


ペースは遅くなってきて手こずる部分も少々見えてきたが、切り抜けることができた。


俺らは四十九階層の五十階手前で結界特定可視式のテントを設置した。気づけば地上時間は夜中の十一時半。丁度だろう。


魔物からは認識されず瓦礫が落ちてきても防げる結界を張った特殊テント。


周りから見ると一見普通のキャンプ用中型テントだが、中はなかなか広い複数の部屋があり、トイレやシャワールーム、キッチンもついている便利な道具。

予め保存の利く食料やシャンプー、救急用具や探検用具、リラックス用の香水やベット一式なんかも揃えているのでかなり充実していると思う。




「さっき水浴びのときこれを用意すればよかっんじゃないの?」




エルがジト目で見てくる。ユンタとルークはまだ引きずってたんだと言いたげな顔をしている。




「のりのりで水浴びに行ったから…」


「冗談だよ冗談。むしろ遺跡内で一夜過ごせるようにしてくれて感謝しているよ。お邪魔します。」




そのテントで一夜を過ごす。


遺跡内では体内時計が狂うのでタイマー設定で午前五時に起床する。あまり寝られていない気もするが遺跡内での危険を考えれば早く起きた方がいいだろう。


俺らは五十階層に来た。階段を降りると目の前に大きな門があった。




「この先にボスがいるのか…」


「そうっぽいな...」


「休息は十分にとれたし、私は問題ないよ。」


「私も行けます。」


「ワウッ。」


「ガルウッ!」


「じゃ、討伐開始だ。」



門を開く。

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