第四十三話 迷宮の悪夢

ゴーストがうじゃうじゃ寄ってたかってきた。


俺は聖炎纏いを使用して近づいてくるゴーストを追い払う。面倒だがレベルはそこまでのものではないのでミナの魔道具と並行して使って倒せるのでこれで何とかなる。


何度か行き止まりにもなったが中身がなかなか使える宝箱が置いてあるのでストレスにはならなかった。


ドスッ ドスッ


大きな地が鳴る足音の魔物がうろついていた。


空間探知で調べてみたところ頭が虚ろな呪いの被り物のようで両手に斧、両肩に長い盾を身に着けた巨大な鎧騎士 ミュータントという魔物だ。レベルも155と高く壁越しでも圧を感じた。




(階層主か?万が一に備えて追加器具 骨破壊針山器具ボーンスパイクつけるか。)




戦ってもいいがこの先のことも考えてできるだけ控えよう。

…とりあえず見つからずに済んだ。このくらいならなんらく進められたはずだが…


なんだかんだで次の階層への階段前に着いた…が扉が閉まっている。


押しても開かない。




「スイッチを押さないといけないのか?」


「見てください。扉の真ん中にくぼみが。」




直径五cmほどの楕円型のくぼみがあった。あれか?宝石とかを見つけてはめ込まないといけないやつか?


後ろに大きな気配があり、瞬時にそこから距離をとった。




(ミュータント…)


ホラー映画なら一発で悲鳴だな。

ミュータントは斧を大きく振り下ろした。よく壊れないなこの階層。




「とりあえず一旦逃げて鍵を探すわよ。」


「おう(はい)。」




智一やエル達はそのまま戦うのを避けようとしたが俺は立ち止った。




「ちょっと淳也君?!」


「流石に危ないですって!」


「思ったんだけどさ、可能性としてあいつの体に鍵があったりしないかな?」


「可能性として?」


「俺らは空間探知や空間把握でおおよそどこに迷宮内の物があるかは把握済みだ。怪しい部分は大体調べてある。」


「それじゃあまさか。」


「こいつの心臓たいないに鍵が眠っている可能性が高いってことだ。」


「確証は?」


「かなり自信はあるけどそれがすべてでないかも知れない。こいつは俺がなんとか倒すから三人で手分けして探してくれ。」




ミュータントはアニメみたいに待ってはくれない。斧を片手で回し、遠心力を使って思いっきり振り下ろす。俺は剣で受け止める。地盤が崩れる心配はないが危うくなる前に何とかしなければならない。




「でも…。」




智一が前に出た。歩きながら骨破壊針山器具ボーンスパイクを手につける。




「なんとか、なんだろ?ミュータントのステータス見る限り淳也と比べてまあギリギリ勝てるくらいなんだろう。例え勝ってもここで戦力を失いたくはない。」


「智一…」




智一は俺の横に並ぶ。




「俺も戦うぜ。」




智一なりに心配してそれと先を見越しての判断なのだろう。なら相棒を考えを否定するつもりもない。




「わかったよ。それじゃ、久々にタッグバトルといくか。」


「ああ。」




俺と智一はミュータントに対して剣と拳を構える。




(何故だろうな。まあまあ危険なのに久々の共闘で心のどこかでワクワクしている。)




エルも理解してくれた顔をしてくれた。




「わかったよ。仲間を信頼するのも仲間の役割。頼んだよ。」




エルらは迷宮探索をしてくれた。




「行くぜ、淳也。」


「おう!」




ミュータントは後ろに腕を引きした斜めストレートで殴ってきた。

速くそして硬い地面を大きく削るような威力。速い代わりに読みやすいそんな攻撃だ。


俺は軽く上に避けミュータントの手背に剣の面を当て空中で回る。


智一は攻撃される場所を予測して俺よりも先に前に出た。


俊敏に動き智一は相手の右足前に着き、相手の脛を手を曲げる衝撃で瞬時の威力を上げ、重甲で強くした掌打で叩いた。




「オオッ?」




ミュータントは倒れそうになったが左足で体を支えた。


俺はミュータントの腕を踏んで前に出る。ミュータントは斧を降ろして空いた手で俺に触れようとした。

捕まえるだけなら弾き返せば...っ?!




ミュータントの手の平になにやら嫌なものがとりついているような気がして触れられるのを避けるためすぐにつま先ジャンプで降りる。


それを智一はミュータントが離した斧を怪力で持ち上げ天井にぶつからない程度に軽く投げ斧の面を通して間接的に攻撃を当てた。


智一も距離を取る。




「大丈夫か?」


「俺は問題ねぇ。そっちは触れられてないか?」


「まあな。」




ミュータントの全身に先程の嫌な感じが広がっていくのを感じた。




「解析。」


『...解析不能。』


(なんなのかわからないか。それなら…)


『検索しています。...検索結果5件出ました。』


一番妥当なのは...これか。


最も納得できたのは“呪い”という禁忌系統のものだ。呪いは使えるものが今ではほとんどおらずその効果からも国から許可を得ていない使用者には処罰を与えられると言われるほど危険なもの。


効果としては火傷、麻痺、痙攣けいれん、突然の精神疾患、腐食など影響力が高い。


治療方法も解明されておらず、治まったものの周りから不気味がられ自ら命を絶つものもいたという。


さらにミュータントは地に手を付け魔方陣を展開した。




「見た目の割に頭がいいのか?」


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