第四十一話 踏み入れてはいけない領域

十一階から二十階 ラウンドスネークや骸骨スケルトン、アンデットやクワガタ・カブトムシ・セミ・蜘蛛の魔物昆虫インセクタや氷結地帯で雪熊スノーベアの群れや雪の魔物だるま、フロートトリケラなどが現れ、先ほどよりも平均Lvが5~10上昇して個体で強い物も出てきた。




「取り合えず二十階まで来たな。」


「思ったよりも早いペースで来られたね。」




この階に来るのに普通なら三、四時間かかるのだが俺らは速度上昇系の魔法を使用して素早く行動したので約一時間半で到着できた。

ミナが能力的に足りていないところは智一におぶってもらって移動した。ミナがその時顔がほのかに赤かったのは気になるが。




「でも喉が渇きましたね。」


「クゥン。」




魔法で放水玉があるがあまり飲ませたくはない。別に綺麗じゃないわけじゃないんだけどね。


そう思っていると近くに湧き水が出ていた。一応水質を調べたのだがウォーターサーバーと同じくらいの質(水質基準を通る)なので問題ない。


ミナは美味しそうに湧き水を飲む。




「美味しいです。」




それもそうだろう。なにせこの中で一番大荷物なのはミナなんだからね。


例え魔法のリュックで多少軽くなっているとしても機動力にたけないミナは魔法全般で戦うのだから疲れるのが早い。


取り合えず予備水として水筒に入れておく。




「ちょっと汗かいてきちゃったなぁ。」


「そうですね。」


「ちょっと水浴びしてきてもいい?」


「時間に余裕はあるし行ってきてねいいぞ。」


「ありがと。あ、見ちゃ駄目だよ。」




エルはからかうように言ってきた。




「見ないから安心しろ。それよりも魔物に気をつけろよ。」


「了解。行こうミナちゃん。」


「はい。」




女子らは水浴びしにいった。ダンジョン内でやるのは少々平和ボケしている気もするがエルがいるから問題ないか。


「そういやさ、淳也。今はもう慣れているけれど俺らってすごい世界に来ているよな。」


「確かに、今までゲームのなかでしかなかった魔物や魔法のある世界がこうして俺らの目の前にあるからな。」


「架空のものが現実にあるってことを知ってから改めて世界は広いんだなーって思った。」


「それ俺も思ったよ。」




なんだかんだあったが今あるのは夢ではなく現実であるということ。ファンタジーには誰しもが憧れるけど本当のことならその危険性も実感しないといけないのだ。




女子らは




「水だけでも気持ちいねぇ。」


「すっきりしますねぇ。」




サバイバル冷水風呂を満喫していた。




「あっでもこれ地下に流れて行ってるんですよね。下に降りた時水質大丈夫ですかね?」


「もう浴びちゃってるんだし今更だよ。」


「そうですね。」




楽しそうにのんびりと汗を流す二人。




「ねぇミナ。」


「なんでしょう?」


「ミナはさぁ、智一君のこと好き?」


「はぁい?!えっとそれは...」


「勿論恋愛のね。」


(なんて答えよう。)




ミナの中で智一は正義感の強く、優しく迷ったときは道を示してくれる存在だと思っている。憧れも抱いている。しかし、自分が恋愛なんてしてもいいのかわからなかった。


誰かを好きになることはおこがましいのではと思ってそれ以上の関係になれることなどないというのが答え。




「…という感じです。」


「ミナ。」


「はい?」


「いいんだよ恋愛して。ミナが誰かを好きになることがおこがましいなんて誰も思わないしそんなこと私が言わせない。」




元々エルも恋愛にこれからほとんど関わることなんてないと思っていた。でもこの間の巫女との会話で少しだけ関わってみたいと、変わってみたいと思えたのだ。だからエルは今の自分が伝えられる最善の言葉を伝える。




「ありがとうエル。」


「で、どうなの?」


「そう…ですね。好き…かもです。」




ミナは頬を赤らめた。




「ほぉ?」


「でもまだそれがこれから大きくなるか小さくなるかはわかりません。でもこれから一緒に過ごして乗り越えてこの感情がどうなっていくのか少しずつ知っていきたいです。」


「ミナらしいね。」


「わ、私は言いました。エルはどうなんですか。」




ミナが強気でぐいぐい聞いてきた。




「私わねぇ...」


『俺はエルが可愛くて仕方がないと思ったから。 いつでもエルの味方だからさ。』


(そうだなぁ。)




エルも少し赤くなるが嬉しそうにしていた。




「内緒。」


「え~ずるいですよぉ。」


「あはははは。」




二人の近くに何かが蠢うごめく。




「「きゃぁぁぁぁぁ!」」


(悲鳴?まさか…)


「どうした?大丈夫か?」


「魔物か?」




魔物ではあったが襲われたのではなく、近くにいたブラッティスライムを撫でていただけであった。




「なにこいつ可愛い!」


「安らぎますねぇ。」


「なぁんだ……あ。」


「「あ。」」




俺らは二人のプライバシーゾーンを謎の何かが隠すことなく見てしまった。(あくまで俺ら視点では)




「えっと…」


「悲鳴が聞こえたからな。な、淳也。」




二人は恥ずかしがりつつ、怒りながら近づいてきた。




「淳也君...」


「と、智一さん…?」




俺はやばいと思い、反射で自身の首を手套で殴り気絶した。(逃げ。)




「じゅっ、おまっ!」


「智一、さん?」




ミナが迫る。




「ち、違う!これは事故で…ああああああああああ!!!」




一人の男の声が響き渡る。


目覚めた時には智一の左頬が手のひらサイズに赤くなっていた。


俺も後からエルに怒られたが自分も二度からかったことがあるので喧嘩両成敗ということでセーフとなった。


ミナはプンプンして怒り、智一は泣きながら俺を鋭い目で凝視している。

ごめんな、智一。



ユンタは察してため息をつきルークは何があったのか理解できず戸惑っている。

俺とエルは思った。




((この二人、時間かかりそうだなぁ…))

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