第三十八話 師は見守る

「ただいまー。」


「戻りましたーってあれ?淳也君たちまだ帰ってきてないのかな。」


「久々のアニメイトですし、とりあえずメールだけ入れておきましょう。」


「お風呂はいりたいです。」


「じゃあ、入ろっか。」




三十分後




「ふーさっぱりしたー。ってどうしたの二人?!」




ロビーので人がわんさか集まっている。人々の目線の先にはボロボロでぐったりしている淳也と智一を心配そうな目で見守るルークとユンタがいた。




「何があったの?」


「おう、エル達か。とりあえず一旦落ち着いた場所に行きたい。」


「でも風呂は入りなよ。さっぱりするし。」




俺と智一は風呂に入り、一度安らぎを得た後、部屋に他の皆を入れた。




「で、何があったの?」


「ああ。俺らがユンタとルークをティムパークに連れて行って遊ばせていた時に険しい顔した見知らぬおっさんが俺と智一に話しかけてきてな。

取り合えず要件を聞いたんだが...」


「要件ですか?」


「その要件が淳也の動向とエルの居場所を教えてほしいってことだったんだ。」


(エルさんと淳也君を?どうしてまた...)


「理由聞いたら我らの救済に是非とも協力してほしいって言ってた。もしかしたらと思って淳也がそいつの耳元で聞いてみたんだ、WDOの関係者かって。」


「そしたらそいつ、不快な笑み浮かべて...」


「ビンゴだったわけですね。」




そう、ビンゴ。そいつは戦闘狂で周りの事を考えずに暴れるやばい奴。加えてキングスコーピオンの違法薬物モンスターバーストを所持していた。そこまで強かったわけではないが逃げ遅れた人をかばってその結果ボロボロとなってしまった。


毒を持っていて俺ら以外にも毒素に当てられた人々の治療も行っていたので結果的に遅くなったわけだ。




「でも、本当はもっと遅くなるはずだったんだよ。このあいだ絡んできた気前のよさそうなおっさん…特殊

薬師医療師 マモル・ジムニーさんがたまたま近くにいて治療を手伝ってくれたから死傷者0名で予定よりも早く帰ってこれた。」


「「えっ?ええええええええええええ!?」」




エルとミナは驚いていた。まさかあのおっさんが医者だったとはな。それよりも二人が驚いていたのが特殊薬師医療師だったことらしい。この世界にわずか十名しかいない超すごい医者らしい。


単なる酔っ払いだと思っていたけど人は見かけによらないものだ。マジで。


WDOの男はちゃんと気絶させて警視庁に送った。本当はこっちだけで聞き出したかったんだけどね。




「そっちも違法薬物使用者捕まえたらしいな。」


「はい。でもなんだかんだでエルさん達がボコボコにしてましたけどね。」


「にしても、増えてますよね、モンスターバースト。」


「ま、地道につぶしていくしかないよ。」




ドタドタドタ




「おい!ここにエルスカイシアらはいるか?」


「ちょ、目立ちすぎでしょ。」




昼間にエル達と共に戦った関わってはならなそうなやばい兄さんとサポート系のお供のお姉さんだ。


まさかエル達に突っかかろうとでもしているのだろうか。


やば兄さんは俺らのところ寄ってきた。周りの客は避けている。




(面倒ごとになる前に止めるべきか?)




エルの前に立ちはだかる。俺は立ち上がり要件を聞こうとしたらやば兄さんがおでこを床に着けて土下座する。




「俺が間違ってた。悪かった。」


「えっちょっと...」




なんだなんだどういうことだ?




「俺はあんたらが飛竜ワイバーンと戦っているときあんたらを見かけたんだ。そしたらあんたらの戦っているときの目が一瞬慈悲の無い目をしているように見えたんだ。

殺すのが当たり前みたいな。だからあんたらを気に食わないと勝手に思い込んで見下していた。


でも違った。


それは慈悲がないんじゃない、誰かを助けるために心を殺して戦っているとおもったんだ。


あんたらの本当はどっちかもわからねぇ。

でもこれだけは言える。あんたらは悪い人じゃねぇってことだ。」


(なるほどねぇ。でもどちらともいえないんだよなぁ。)


(まあ悪い方向にいかなくてよかったよ。)


「で、あなたは私たちに何か悪い事したの?」


「戦闘を…放棄しようと...」


「でもしなかった。ならいいじゃないんですか。」


「これは…俺のけじめだ。」


「ま、そういうことで許します。」


「うっす!てか俺らちゃんと名乗ってなかったな。俺はベル・ポ…ポラロイド 近接戦闘士だ。よろしくな。」


「私はベルのお供件家出の手伝いのアリア・マルフ 魔術師よ。」


「なんだ兄さん、家出してんのかい?」


「この人の父親がちょっとした実業家でね。意見が合わないからって家出してきちゃったらしいの。」


「どこのってのは答えないぜ。こいつにも教えてないからわからんだろうよ。」




家出をするのは勝手だが親を心配させていいのだろうか。俺はそういう経験がないからよくわからない。


ベルは俺に寄ってきた。


なんだ、まさか俺のことは気に食わないのか?




「あんたが蘭淳也だな。」


「ああ。」


「さっき外で見かけない顔のお兄さんに出会ってな。その人からあんたにこれを渡すようにって。」




渡されたのは一枚の手紙だった。


そこにはこう書かれていた。




「この街のギルマスから聞いたけど頑張っているみたいだね。これからも励むんだよ。私が誰とは言わない。でも、近いうちにまた会えるよ。」と。

この字まさか?!


「なあ、これ渡した人どんな見た目だった?」


「えっと確か白いコートを着ていて長い金髪のイケメンだったかな。」




俺は急いでホテルの外へ向かって走る。




「はあっ…はあっ...」


さすがにいないか。先に誰からもらったと聞いておくんだった。

遠くから俺を見る金髪の誰か。俺はその人に気がつくことはなかった。


でも俺を知っていてこの口調で思い浮かぶのは俺の師 小栗 陽介しかいない。


ということはあの人もこちらに来ているのだろうか。追加派遣とかか?


でも会える確率があるのならそれなりに頑張って成果を見せないとね。


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