第三十六話 心の内
女性らがキャッキャッと楽しんでいる中男性らは
「この世界にも普及しているんだな。『魔法少女戦記 まぎマギ』」
「俺もはまったよ。特に伏線回収がうまくてさ。」
「わかる。やっぱりこの世界に飛ばされた人が広めたのかな。」
「だとしたらその人、いい趣味してる。」
俺らも盛り上がる。ユンタ、ルークもう少しだけ待っててくれ。
「にしても見たのは久々だ。俺がまだあの親と楽しく暮らしていた時だったし。」
「そうだそうだ。淳也の親で思い出したんだけどさ。一週間前秋野博士から淳也に関わる資料転送して貰っていたんだけど。」
「重要そうな資料、どうして速く渡さなかった?」
「悪ぃ。最近忙しくて受け取ってたの忘れてた。」
「別に気にしなくていいよ。次から気をつけてもらえれば。」
智一から資料を貰う。俺から頼んでいたことなので個人情報保護法には引っかかりません。
「お前の父さんが勤めていた会社、元々結構待遇の良い所だったらしいんだけどそこで父親さんはかなり評価が高かったらしい。」
そうなのか。そうするとあいつのブラックってのは単なる責任感に押しつぶされたものなのか?いやだとしたらあいつが捕まってあの会社が報道される理由がない。突然ブラック態勢に変わったのか?でもそこまで経営が悪化してはいないと県の調査では載っていた。
その資料を開こうとしたが
「開かないのか?」
「ティムパークに行った時に開けるよ。」
「あいつら待たせちゃうもんな。」
懐かしの漫画を買って店を出てティムパークに向かった。
遊園地の遊覧船にて外を眺める巫女とエル
「そういえばさ、今日どうして女子会を開こうと思ったの?」
「皆ともっと仲良くなりたい!!ってのは建前。ちょっとエルと話したいことがあってさ。」
「で、話したい事って?」
「エルってさ、淳也君の事好き?恋愛的な意味で。」
「ブッ、え?その…わからないかな。」
「そう?私は好き。きっかけは学校三年目くらいの時かな。」
私は元々暗殺一家というよりも悪霊浄化を行うところだったんだ。でも周りからはそう名乗っている嘘の団体だと思われていたんだよね。
そんな時家の祖父の従兄が暗殺者をやっていて経営状況があまり良くなかった家には助けになった。加えて祖父の従兄が紹介してくれたおかげで家族の半分以上が暗殺者になった。
それから暗室業界では評判の高い家系となって名を上げた。
ある日、祖父の従兄が仕事中に犯人と裏で手を組んでいた暗殺者に殺されてしまったんだ。
命に関わる仕事だから辛いけれど仕方がないと親から言われた。
この先この家系を支えるためにも私に暗殺者になれと言われたんだ。私は自らの命を危険にさらしてまで暗殺者になりたいとは思わなかったけど信頼を裏切らないためにもいやいや暗殺者になることにした。
入学一か月後、私は不安に押しつぶされそうになった。クラスでは不思議ちゃんで一人の時は辛さで泣く。
もういっそのこと誰かの命に押しつぶされ誰かに殺されるくらいだったら死んでしまおうと思ったの。でもその素の姿を淳也君に見られてしまった。
一度評価のために彼を酷く傷つけてしまったことがあってさ、そんな彼の過去や気持ちを思うと自分の事を強く蔑みたくなった。
でも彼はそんな私を許してくれて、私の気持ちを解ろうとしてくれて一人の時はいつも隣に居てくれた。
そんな淳也君に救われて、明るいところやちょっと面倒くさいところとか全部丸々ひっくるめて好きになっちゃったんだ。
「これが私が好きになった理由かな。」
「なんでそれを私に。」
「だってエル、私が淳也君にべったりな時ずっとこっちの方見てたからさ。」
「いや、別にそんなつもりで見てたわけじゃ…」
「で実際にどうなの?」
「私から見た淳也君は大人しくて、ちょっぴり変わってて、ノリが良くて、あと努力家で優しいかな。でもまだ恋愛としてはわからないけど、好きかな。」
その時のエルの笑顔は眩しくてそして心から思う本当のことを言い放った、自由に羽ばたけるようになった健気な天使みたいだった。
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