第三十四話 夜間出勤

あの戦いが終わったその次の日の夜

俺は静かな町のマンションの屋上に居る。そよ風が涼しい。

まったく。巫女は本当に懲りないな。どうして公共の浴場で混浴しようと思うのだろうか。


「久々の夜勤でもして一旦忘れるか。」




仕事をしようと向かおうとした。




「夜勤?」




本当気配隠すのが上手いなこいつ。俺以外、気が付けないで驚くのも納得だ。




「巫女もか?」


「ま、そんなところかな。てか異世界なんだし素直に休めば?」


「最近やってないから感覚思い出すためにやるんだよ。」


「ふーん。サポートしようか?」


「お好きにどうぞ。」


ビルから飛び降り、すぐにビルの壁を蹴って別のビルと飛び歩く。


「智一君呼ばないの?」


「あいつはもう熟睡。」


「あーね。…話変わるけどさ、明日早朝あそこの極湯って天然銭湯行こうよ。貸し切りできるみたいだし一緒にどう?」


「まあいいけど。」


「え?いいの?珍しいね。まさか私と憩いの時間過ごしたくなったのかな?」


「巫女最近頑張ってるだろ?買い物一緒にできる時間もないし今巫女にやってあげれることは一緒に居てあげられることだと思っただけだ。」


「なるほど。」


(淳也君らしいね。でもそんなところが好きなんだよ。私も。皆も。)


微笑む巫女。



「じゃ、約束だよ。」


「わかってるよ。」




昔の俺なら考えられなかっただろう。俺と居て幸せだと言ってくれる女友達ができるなんて。好きだとドストレートに言われるなんて。変わってはいるけれどそれでも俺にとって大切な人だ。

失わないためにも頑張らなければならない。


そんな会話をしているうちに目標を見つけた。


サンモールの立体駐車場屋上にて怪しい輩が取引していた。


黒いローブを羽織ったぽっちゃりと若い男性二人とゴーグルを付けた警備員女性ハンター三人。


俺は腕輪から監視ゴーグルを取り出して何なのか調べた。




「違法薬物:モンスターバーストか。」


「知ってるの?」


「まあな。この世界に来た最初の街コロブスでギルマスから得た情報にあった。」




WDOが絡んでいる違法薬物モンスターバースト。


その効果は使用者の肉体の一部分を魔物化させてキメラ強化を図る薬。


しかし使用者の自我が薄れて魔物の本能に近づかせ依存性もあるため取り締まっている。




「売買取引される前に捕まえて連行するぞ。」


「連行中に顔バレしないかな。」


能力スキル 幻覚と記憶処理と付与:睡眠を使用できるから問題ない。それじゃあサポートよろしく。」


「あいあいさー。」






「それではこちらと取引成立となります。」


「どうも。」


「やったね姉貴。」


「これであたいらも遅れをとらずに済みますね。」


「はしゃぐんじゃないよ。使い時ってもんがある。それまで使わないよう。」


「それでは我々はこれにて失礼...」


「術式 結界生成。」




サンモールの立体駐車場屋上をドーム状の結界が張られて外からの侵入と内側からの脱出が不可能となった。


謎の霧がたちこむ。




「なんなんだい。」




ローブを着た一人が慌てて抜け出そうとするが




「くそっ!結界か?」


「まさかお前ら騙したのかい?」


「とんでもございません。」




五人の近くに人の影が薄っすらと映る。だんだんと近づく。




「何者だい?応えな。」




俺は黙る。だって幻覚から作りだしたんだもん。すぐに声を付け加えるなんてできない。




「応えなって言ってるんだよ!」




姉貴と呼ばれるハンターが毒を盛ったナイフを飛ばしてきた。当たらないけど。

幻覚は消える。




「なっ!」


「幻覚系の魔法ですか?厄介な。」


「姉貴かがんで!風魔法:霧払い。」




腕から風切りのようなものがとんで幻覚の霧を払う。でもすぐに立ち込める。




「無限に湧くのか。」




それも幻覚の一種。なので消えることはまず無い。




「仕方ありません。我々も協力しましょう。お願いしますよ。」


「はい。闇魔法:狂犬ハウンドれ。」


黒い犬らが現れて若い男性の指示で走り出す。

犬らが俺を探る。嗅覚でばれてしまったが実力はそこまでのものでない。頭や腹を殴って倒す。




「一匹、二匹、三匹...」



男性は違和感を感じた。




「っ!?全滅しただと?」


(まさか...そんな柔な魔法でなかったはず。相手の実力はそこまで高いのか。)


「どうすんだい?これじゃ…」




こちらのターンが回ってきた。俺は警備員の一人の全身(関節部分)に付与:睡眠を刃と共に入れた。

女性ハンターの全身から軽く血が出て膝から倒れ込んだ。



「おい!しっかりしろ!」


「早く逃げなければ。」


男性二人も倒す。こちらは俺ら暗殺者が回収して具体的情報を聞き出す。

峰打ちだし、健は切ってないからいづれ動けるようになるし大丈夫だろ。


「姉貴、私たちも...」


「噓だろ…」




慌てヒア汗が止まらないリーダー



「おい。お前らは“例の”関係者か?」


「お前か?皆をやったのは。」


「そうだ。応えたんだからこっちの質問にも応えろ。」




刃先をリーダーに向け、脅して情報を引き出させる。これが一つのやり方というものだ。




「わ、わかった。話す。」


 …


「なるほど。つまりお前らはWDOの幹部から周囲に共同してくれそうな奴を探して売買している情報を提供する変わりに自分らのほしい違法薬物を安価で購入していたというわけだ。それも二回目。」




内容をメモって情報を集める。俺の目的では無いがギルマスに頼まれているし俺らが組織ひとつ潰したのだ。

関わっているならそれなりの仕事をするまで。


「連行するきかい?」


「んー。ここで殺すのもいいな。」



剣を突き付けて嘘かどうかを確かめる。見たところ噓ではないらしい。




「ま、待ってくれ。情報は話した。…そうだもし見逃してくれるのなら私の体を好きなだけ触らしてあげるよ。」


こいつ…

こうやって自分たちのやってきた事を誘惑で釣って言い逃れしていると考えると怒りが煮えたぎってし仕方がない。今すぐにでも首を斬ってやりたい。




『淳也君待って。私がやるから。』


『…頼む。』




きっと俺と同じことを考えているのだろう。なら待ってぶつけさせてあげるよう。

リーダーが上着を脱いで下着を取ろうとした瞬間

巫女が上から高速で降ってきてリーダーの頭を強く床に叩きつけた。

おでこと鼻から血を流して気絶した。




「淳也君に変な誘惑したら56すよ...」




理由は全然違かったです。なんか地味に後悔した。




「てか、やりたいんだったらすぐに殴ればよかったのに。」


「証拠ですよ証拠。」


そういうことにしておこう。

俺らは犯人らを拘束して女性ハンター三人をこっそり警察に届ける。薬物を添えて。二人には記憶処理で俺らとローブの男らの記憶はない。


人気のない場所にローブ男二人を連れこんだ。




「ぐっ。」


「知ってる情報を全て吐き出せ。」




この男はこの街で宿泊しつつ何人かで薬物を広めているらしく拠点は別の場所にある。


それ以外のことは口にしなかった。




「それじゃあバイバイ。」


「まっ!」




巫女の術式 地獄の飢餓凶犬ケルベロスに食われて処理した。




「毎度毎度巫女の術式には助けられるよ。」


「別にいいよ。仕事なんだし。」




俺らは他のWDOの幹部やそれに関わるもの、犯罪行動を犯すもの素早く拘束、処理した。




「これで十件と…それじゃあ皆が心配しますしそろそろ帰りますか。」


「そうだね。ふぁああ。あんまり眠れてないから疲れちゃったよ。」


「それじゃあ俺一人で温泉に入ってくるよ。」


「目が覚めたし私も入るよ。」


全く、世話のかかるやつだよ。

朝日が昇る。都会の日の出も悪くないと思った。

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