第三十三話 慌ただしいお礼
「クリア様ぁ!」
少女を連れた従者が戻ってきた。
「お嬢は?」
「眠っておられます。」
「子供というものは羨ましいものだな。」
「ですね。」
「らしいぜ。」
俺らは初の賢者の宝拝見となるのだろう。
抜けたそこには絶景があった。巨大な大穴の上から滝が流れ周りの発行する苔岩が天井天井と水面に反射し昼なのに夜空を見ている気分だった。
「綺麗だな。」
「ね。」
「ひと夏の思い出景色みたい。」
「夏?夏とはなんだ?」
「俺らの故郷の気候の変化をわかりやすく分けたものだよ。」
「なるほど。」
「んぉ。」
「お目覚めですかお嬢。」
「おはようですクリア。」
「おはようございます。」
「暗い?!ってなにこれ綺麗!」
「あちらの亀さんが見せてくれたのですよ。」
「ありがとう亀様。」
「俺に?」
「それはお礼だってさ。」
「どうも。」
解析してみると両方ともファントムの素材らしい。高価だしありがたいけどなんか要らないものを貰った感じがする。夏景色だけで十分なんだけどな。腕輪のファイルボックス:大切なものに入れておく。
なんかしらに使えるだろうし、まあいっか。
「そろそろ帰りましょうお嬢。」
「またね亀様。」
「うっ。」
気がつくと俺らは森林の外にいた。
「夢みたいだったな。」
「夢じゃないけどね。」
(もう夕方かぁ。)
森林に八時間いたということか。一日は早いものだな。
「わっふぅ。」
「いたたたた。」
はぐれていたユンタと天音がいた。
「ユンタ、天音。無事だったのか。よかったぁ。」
「ユンタ!一人でどっかに行ったら危ないじゃないですか。心配したんですよ。」
「わっふぅ...」
「でも、無事で何よりです。」
「ワン!」
ミナが泣きながらユンタを抱きしめてそれに応えるようにユンタもミナに飛びついてミナの顔を舐める。
友情の絆に泣くトム。結構涙もろい。嬉しそうにする
「巫女様ぁ!!」
「はいはい寂しかったねぇ。よしよし。」
こっちも似た…用ではないが、再会できてよかったと思っている。
一台のリムジンがこちらに向かってくる。
「時織様、着きました。」
車から降りてきたのは今回の依頼主。
白髪ロングヘア美形の和装。架空イケメン男子好きのオタク女性には夢の情景だろう。
「美弦!」
「お父様!ごめんなさい。」
「ごめんな。一人にさせてしまって。」
「大丈夫だよ。」
「今回は皆さんにご迷惑をおかけして申し訳ありません。クリアたちもご苦労でした。」
「いえ、私たちは大切なお嬢を助けるために最善を尽くしたまでです。それに今回一番活躍されたのは淳也殿です。」
(殿?"!って、ああ。主人の前だからか。)
「お兄ちゃ、お兄様は私をかくまいながら最善を尽くして頑張ってくれたのです。」
「淳也殿、本当にありがとうございます!」
いい父親だと思う。俺はこんなにも優しく家族思いになんて一生なれないだろう。
「俺は他の仲間が支えてくれたから助けることができたんです。それにクリアさん達が助けに来てくれなければ俺はとっくにしんでいましたし。」
クリア一同はご謙遜なるなと言っていたけどそれでも助けられたのは本当だし感謝している。
時織さんは何かできることがあればと言ってきた。
俺はもう十分だと思ったのだが何個かお願いをした。
・今回の依頼達成者は俺らではなくクリアさんらが達成したことにしてほしいということ。
それなら見ず知らずの俺らや時織さんに変な噂が流れないし俺らは単なる協力者で暗殺者として目立つこともない。
・報酬の半分をクリアさんらに渡すこと。
これでクリアさんらが依頼を達成したと明確な判断がつくし、お礼もできる。
・異世界樹バックルームツリーについての情報を提供してほしいこと。
本人曰くあまり具体的な情報が無いのでこちらでも調査をしてくれるとのこと。
「それではまた機会があればよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「淳也殿、次あった時旅話を聞かせてください。」
「その時は。」
「お兄様。」
「美弦ちゃん、またね。」
「はい。そのときはもっとお兄様に相応しい女性になっていますね!」
ぶっ!!
「あ、あはははは...」
「淳也殿、お婿の件もお考えしてくださいね。」
時織さんは眩しい笑顔で言い、美弦ちゃんが頬にキスして嬉しそうに車に乗った。
そういって去っていった。
嬉しいけど年齢的に考えると社会的に殺されてしまうのでかなりの難問だ。
てか、お父さんなら「娘はやらんぞ!」とか言わないのかよ…
親公認はどう対応するべきか。ま、子供の言うことだし好きな男子できたら変わるよね。
「ライバル増えた。」←巫女
「モテモテじゃん。」←智一
「女たらし。」←エル
何やら後ろでいろんな問題発言が聞こえる。
今日は一段と疲れた。
「じゃ、帰りますか。」
「おう。(ええ。)(うん。)((はい。))」
「ワン!(グギャオ。)」
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