第二十七話 霊札師
エルに連れて来てもらったのは喫茶店 かがやき
少しばかり車通りの少ない裏道にあるオシャレな二階建てのお店。
入るとコーヒーのいい香りが漂う。久々の感覚だ。
「いらっしゃいませ。ってエルさんじゃないですか。」
迎え入れてくれたのはエルの知り合いの
「おぉーエルさんか。いらっしゃいな。」
「久しぶり、マスター。」
エルがマスターと言った人はいかにもジェントルマンで優し気な若々しい人間のお爺さんだ。
ミナはパンケーキ、ユンタは動物魔物用フルーツフード、智一はアイスコーヒーと大きいサンドイッチ、俺はアイスカプチーノ、エルは特大パフェを頼んだ。
「よく食べれるなそんな量。」
「美味しい物は食べれる間に食べておかないとね。魔物のせいで流通が悪くなったりするから材料不足で食べれなくなったりもするしね。」
美味しそうに、そして可愛く食べるエルに少々見惚れてしまった自分がいた。
「はわわ。」
(お、美味しそう...)
ミナが目を輝かして物欲しそうにエルのパフェを見ていた。女子だからというのもあるがこの間智一と新作スイーツ食べに言ってたからその影響もあるのだろう。
「食べる?」
「い、いいんですか?」
「いいよ。」
「では、少し。」
ぱくっ
「ンンンンン~!美味しです。」
(なにこの子、かっわいい!!)
楽しそうで何よりだ。
(か、間接キス...!!)
智一が顔を赤らめ頭を抱えている。
どうしたんだ?
智一の事だから間接キスとかろくでもないこと考えているだろうが。ここはあえて考えないようにする。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
「いい香り...」
「そうですね。私はパンケーキミックスが食べたいです!巫女様は?」
「私は特大パフェかな。」
?!巫女?
聞いたことのある声二人と巫女という名前に反応してしまった。
たまたま同じ名前かと思ったが、この世界では海外の名前のような形をしているのでもしやと思った。
でも、久々なので緊張してしまう。
その二人がこちらに向かってくる。汗が止まらない。
「どうしたんだ淳也?ん?あれって巫女と天音じゃね?」
「ん?まさか智一君?智一君だ!」
何というコミュ力だ。恐るべし、智一。でも自分の知っている方だということでほっとした。
オルゴールをじっと見ていた巫女がこちらに一瞬で飛んできた。
「智一…ということは淳也君?」
目が合った。
「よ、よぉ久しぶりだな。巫女...」
「淳也君!!」
巫女が泣きながら飛びついてた。そしてすりすりしてきた。ペットかよとよく思う。
「淳也君淳也君淳也君!!」
「ふごふぅ(苦しい)」
「巫女様!」
「はっ!す、すみません。」
「相変わらず淳也にべた惚れだな。」
「智一も久しぶりだね。」
(こいつの、淳也がいるときだけ声のトーン変わるよな。眠そうな目が覚めるというか…)
巫女を落ち着かせて席に座らせた。何故か俺の隣だが。加えて腕を組まれている。
「お待たせいたしました。」
「あの、私たちまだ何も注文していませんが。」
「マスターからのプレゼントです。」
マスターは俺に向かってグッチョブを送った。物凄い勘違いをされている気がする。
パンケーキにも苺クリームで「LOVE」と書いてある。
巫女もマスターにグッチョブを返した。
(最高です、マスター!)
「で、その…」
「あ、自己紹介が遅れました。私は時任 天音といいます。こちらは」
「宇井 巫女です。よろしくです。」
「私は道具屋のミナです。」
「こっちはユンタ。で…あの、エル?」
「はっ、わ、私はエル・スカイシアというものです。」
「よろしくお願いします。エルさん、ミナさんユンタ。」
「そ、それでででお二人はどのようなご関係で?」
「私たちは二人とは同僚で暗殺者をやっています。」
「そ、そうなんだぁ。」
物凄い同様しているエルさん。まあ、この状況には驚くよね。
じっ
エルは巫女の胸辺りを見ていた。
(私より少し大きい...)
「エル?胸やけですか?」
「ううん、なんでもないよ…」
その後、巫女から食べさせられてお客様からの注目を集め、エルさんからの痛い視線を受けて三十分。
よく耐えた俺!!
「ありがとうございました。」
やっと重い空気から逃れられる。そう思う俺とエルだった。
「それじゃあ、俺たちはこれで...」
「私たちも行く。」
「すみません、忙しいのに。」
「いや、俺らも今観光と調査しているところだから一緒でも問題ないぜ。な、淳也。」
「「えっ?」」
「私も天音さん達の話、色々と聞いてみたいです。」
「ワフゥ!」
智一のコミュ力には時々困る。それに純粋に応えるミナとユンタにもたまに困る。そう思う俺とエルだった。
皆で一緒にショッピングモールに行ったり
「久々に来たな。」
「でも、ゲーセン無いね。せっかくなら淳也君と出会いのプリクラ行こうと思っていたんだけど...」
今ほど発展してはいないが、それでも商品がそろうのは便利でありがたい。
電化製品屋に行ったり
「携帯って念話でも充分足りると思っていたけど念話よりも離れて連絡できるっていうのは便利ね。」
「そういえば天音、この間スマホの川流れしてたよね?」
「…検討します。」
凄く泣いている。
((天音、お気の毒にな。))
学生時代、天音は修行中に踏んずけて割ったのと用水路に二度携帯を落としているのでマジで運がないと言える。
魔道具ショップに行ったり
「そういえば巫女は術式の方はどうだ?」
「ボチボチかな。最近は魔法との合体技とかもできるようになったから汎用性が広がったよ。」
「そうか。」
楽しく会話が弾む。
アイスを食べ歩きしながら街の中央広場に向かう。特に理由はないが。
エルがさっきから俺の方を鋭く、そしてチラチラ見てくる。
(もう、消えてしまいたい…自らの火に炙られ炭と化したい…)やめましょう!!くらい話は。←自己解決
「エル、さっきから淳也君を鋭く見ているけれど何かあったの?」
「いや、その…別に!?」
焦りまくりじゃないですか。何かあるのは間違いじゃなさそうだな。
巫女がそっとエルの方を見てじっと睨み付けている。
なにこの気まずい空気?
巫女もこの空気に焦っている。確かに普通ならここで小声で巫女をなだめたいのが本音だと思うが、エルとの謎の空気間でうまく入れない状況になっているから焦るのも分かる。いつもお疲れ様です。
「おい、なんだあれ?」「あれ魔物じゃない?」「やばい、
街の人が混乱し始めた。
しかし俺ら〚俺、智一、エル、ミナ、巫女〛は近くに来ていたのが気や探知魔法でわかっていたので一般市民が気づく前に既に動いていた。
筋力が上がったのに加え、結界魔法で足場が作れ、疾風脚で高速移動がしやすくなったため対応も前より早くできる。
「遅いぜ!!」
智一が空間魔法:重甲で固め重くなった両手でおもいっきり
前に押す力と逆にかかる衝撃の力をそのまま利用して上に飛び確実に炎飛竜フレイムワイバーンの急所を殴り次々と地面に落としていく。
エルは
鎌で高速で回転切りすると同時に光魔法:閃光の刃によってエルの周りの
ミナは下で市民の避難誘導及び逃げ遅れた人を逃がすために結界魔法で守り被害をできるだけ防いでいる。
街のハンター達も駆け付け、地上に降りてきた
「ユンタ!」
「ワオォォォン!」
ユンタの雷魔法:感電球体によって周囲の
可愛い見た目でえげつねぇ。
他の
「術式 雪女の肌!」
炎飛竜フレイムワイバーンの頭にで殴り氷漬けにして
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます、天音さん。」
天音が守ってくれた。この短い間でチームプレーができている。
「あの二人スゲー。」
「俺らも加勢するぞ!!」
「「「おお!!」」」
「けっ、くだらねぇ...」
「ちょ、待ちなよ!」
「エルには負けないっ!術式 霊魂音舞。」
巫女の周りに青い人魂が現れ
「術式 妖魔の手。」
異空間から紫色の巨大な怪物の手が出現して後ろから来た
「よしっ!」
よしっじゃない!グロイことして微笑ましいと思わないの!
俺は
『能力スキル:水斬を獲得しました。』
加えて俺の能力スキルになるってね。そういえば
試し打ちしてみるか。
俺に向かってきた
「空間魔法:
翼が空間ごとねじれて弾け飛んだ。
初めて使ったのでまだ危ういが使えるようになればこれからの安全度が上がるし調整できるようになれば攻撃だけでなく力技の作業も効率良くなると思う。
「皆私から離れて。」
巫女の上空真上に巨大な術式が出現した。
(土魔法:流星群と術式 星の一矢を混ぜて…)
巫女から突風が止まらず出ている。
「広大術式 閃光の雨!」
術式から無数の流星群のように青白い光で輝く矢が放たれ全ての炎飛竜フレイムワイバーンを突き刺した。
(結界魔法三重。)
刺さらずに取りこぼした矢や衝撃波で被害が逆に出ないようにカバーする。
ハンター達からは歓迎されたが俺と天音は叱った。
「いったぁ...」
「まったく、こんな街中であんな大きな技を使うなんて何してるんですか!!淳也君が結界魔法を張ってくれていたから良かったものを。」
「天音に同意だ。俺もギリギリミナのサポートで防げただけだったんだし、未熟な俺が悪いのも分かるが
あのまま防げなかったら巫女のせいで街が壊れていたんだ。反省しろ。」
俺は巫女の額に"反省します"と書いてある札を貼った。
「モ、申し訳ありません...」
「まあ、いいじゃねえか。街は壊れていないし、報酬はもらったし、素材も手に入ったし次気を付ければいいことだろ?」
「そういう問題じゃありません!」
「ミナ!?」
俺らが言おうとしたことをミナが言ったこと、そして普段怒らないミナが怒っているので驚いた。
「智一君も同じです。智一君、
「み、ミナ様。ご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした。」
「ふん!」
今日のところは一件落着ということで幕を閉じた。
でも何か言いたそうなエルだった。
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