第二十六話 べクトアズム次の街

俺ら一行は新人ハンターと共にクエストに行って経験を積ませたり、ギルマスと情報を共有して異世界樹バックルームツリーについて調べたり、前回の連続する覚醒進化 蘇生進化について調査したり、ギルマスの依頼で暗殺の仕事をしたりと充実した生活を送っていた。


そして一ヶ月が過ぎて街を出る時が来た。

駅南口にてこの街の関わり会ってきた人達が見送りしてきてくれた。




「お別れの時か。寂しくなるな。」


「困った時がきたらいつでも頼ってくれよ。」


「また会える事を楽しみにしています。」


「次来るまでに名店になってやるから、楽しみにしてな!」


『まもなく発車致しますので黄色い線の内側にお下がりください。』


「それではまた。」


「ああ。元気でな。」




列車が出発した。皆は最後まで手を振ってくれた。




「行ってしまったな。」


「だな。でも次に会う時には成長しすぎてわからなくなってしまうかもな。」


「そうかもな。」




ギルマスと洋介さんは楽しそうに笑い、そして成長を期待するように笑顔で見守ってくれた。




「短いようで長かったな。」


「生きてればそう感じるもんさ。」


「異世界の人っておっさんみたいな事言って面白いね。」


「俺らがおっさん過ぎるだけだよ。」


「確かに、淳也の作る料理って美味いけどたまにおっさんが食べそうなのの出て来るよな。」


「でもすっごく美味しいですよ。」


「ありがとう。智一のも誉め言葉として受け取っておくよ。」




楽しく会話し、電車は進む。車掌さんに許可を頂いて窓を開ける。そよ風が涼しい。

窓の外には山と壮大な田畑、牧場が広がり心の疲れがスッキリ取れる。




「淳也ってこん中で一番おっさんおっさんしてるよな。あんまりおっさんすぎるとあいつモテないかも。」


「別に...そう決まったとは言い切れないし。」


「ま、そんなもんか。」


「二人ともどうかした?」


「な、なんでもないよ。」




エルは顔が少しばかり赤かったので気になったが触れるのは何か気に障りそうな気がしたから止めた。


前にエルに聞いたが俺らと旅を共にし続けていいのかと尋ねた事があるのだが、特に大きな目的もないし旅してるようなものだから一緒についていくとのことだ。それにこのチームと居られるのがうれしいらしい。こちらも嬉しいので大歓迎である。


話している間に電車は三駅を過ぎた。




「三駅ほど過ぎましたが目的地はどこなのですか?」


「そういえば皆にはまだ具体的な方針は話してなかったな。降りる駅は終点の”永遠江駅”、都市”ベクトリアズム”って所だよ。」


「あそこね。コロブスよりも都会な場所だよ。なんていうんだろう。淳也君の世界で言うところのビックベン?みたいな洋風な駅に船橋?みたいな都会の建造物がいっぱいあるよ。」


「いわゆる和洋折衷な街ってことか。」


「そうだね。魔法化製品やサービス業が充実しているから淳也君の世界にあった似たような物もあるかもだよ。」


「おお、それは気になる。」


「私もコロブスでの生活がほとんどだったので楽しみです。ね、ユンタ。」


「ワンっ」




そこから十五分後


電車の中が混んできた。お年寄りに席を譲ってしまったため、座れない。




「だいぶ狭くなってきたな。」


「そ、そうだね。」


「取り合えず近くで固まって...」




人が入れ替わって智一達と離れる。電車の中なので通信機器で連絡をとる。




『智一、そっちは大丈夫か?俺はエルと居る。』


『ああ。ミナとユンタも一緒だ。取り合えず終点で合流しよう。』


『了解。』


「ってことだ。…エル?」


「?!」


「大丈夫か?」


「うん、ちょっと人込みでのぼせたかも...」


「きつかったら頼ってくれよ。」


「ありがとう...」




先ほどからエルの調子がおかしいが大丈夫なのだろうかと思う俺。あまり目を合わせてくれないようだし何か気に障るようなことでもしてしまったのかと少々不安になる。


そこから一時間三十分後

乗客の数が減り、先ほどよりも外の景色が見えるようになった。




『まもなく、終点 永遠江駅 永遠江駅。』




エルの言う通りコロブスよりも都会であった。


巨大なビックベンのような造形で、そこから空に向かって線路が伸びて多種多様な電車が四方八方から出てきて空を走っている。


駅周辺には大型店舗が並び、道路が形成され交通機関か充実している。奥にはショッピングモールやマンションなんかもありその部分だけで言うなら俺らの住む世界と大差無い光景だった。



この世界にも自動車やバスがあるんだな。でも路面電車や馬車、EV車と色々な時代の物がそろっていて何とも言えない不思議な空間だな。




ホームに着いた。電車が沢山来てもはや新宿のスクランブル交差点の人込みの域を超えている。

取り合えず三階の中央広場に出た。




「ふぅ、なんとか外に出られたな。」


「さすが都会だな。」


「都会、怖いですね...」


「ワフゥ...」


「私も最初わは怖かったけど、来ているうちにだんだん慣れたからそのうち慣れるよ。」




改札口を出てショッピングモールを目印に歩く。




「こんなに広いと迷っちゃいそうですね。」




ぐぅぅぅぅ




「す、すみません!」


「そういえばもう昼時になるんだな。どこかで昼食を食べようか。」


「それなら私がおすすめのお店教えてあげようか?」

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