第二十話 共闘(タッグバトル)

「負かす、ね。楽しみだ…よ!」




言葉の勢いのまま悪魔は腰に付けた刀を抜いて俺に近づいた。俺との距離2m程で一瞬にして消えた。




「どこに…」




俺は装甲強化と聖炎纏いで強化した。

悪魔は空間転移を使って俺の後に回り込んだ。

速い!

瞬時に反射的に避けた。




「くっ…」




背中に血がよどむ。




「瞬時に背中に防御能力を集中的に張り巡らせたか。素晴らしい瞬発力だ。」




とっさに防御できたとはいえ、次の攻撃を防げるかわからない。まともにくらえば体勢が崩れて蜂の巣にされかねない。聖炎での回復でなんとか動けるが、回復がいつか追いつかなくなるかもしれない。




「次行くぞ!」


悪魔は空間転移を応用して四方八方から現れ斬りかかってくる。そして徐々に傷が増やされ一方的に体力を奪われる。

どこで反撃する?


「さっきの威勢はどうした?口だけだったのか?」




そんな中で俺は隙を突けた。


空間転移をする際、一瞬だけ移動先にラグが生じて出入り口が同じ速さで開かない。その一瞬を捕らえて相手の方に体を向けて素早い斬撃が飛んでくる前にこちらが斬撃を入れる。

悪魔は危機を察して後に退いたが、腕に浅く切り傷が付いた。




「どう?口だけでは無かったでしょ?。」


「少しは応えられる技術を持つようだな。」




悪魔の切り傷は自己再生によりすぐ癒えた。

やっぱり上位種とかになると再生速度も半端な早さじゃないな。

大剣に付いた血を払って警戒しつつ剣を構える。




「来ないならこちらから行かせてもらう。空間魔法:空間(スペース)曲(ベンダ)げ」




悪魔は手を向け、その手を捻りながら小指からそっと握りしめた。その瞬間俺のすぐ横の散らばっていたパイプ椅子やコンクリの床が球を描くようにねじれた。




「うん、まだ使い慣れんな。誤って研究道具を壊してしまいそうだ。運が良かったな。だが、次は当てる。」




俺は確実にまずい状況の中に立っている。それでも仲間に安心してもらうために動揺も捨て、敵に立ち向かう。空間(スペース)曲(ベンダ)げをギリギリで避けて空間移動で太刀の刃が飛んできたら刀で受け流し、近接で手套がきたら大剣で防いだり手首を掴んで片手で大剣を突き刺したりなどして攻撃を繰り返す。


他にも放水玉を嵐刃を圧縮して筒状にして水圧を上げて強い水鉄砲にする。炎斬と鬼神斬の三段攻撃で相手の注意を逸らしたり少しでも多く体力を奪うように戦う。


しかし攻撃は相手の防御が高くてダメージが入りづらい、加えて空間移動を応用して俺に攻撃が返ってくるいわゆるクソゲーだな。


智一達は戦力としては問題なさそうだが、耐久戦になっていた。




「あ、アガガガガ」




人型人造魔獣は巨大な右腕を智一に向けて大きく振り下ろした。

智一は態勢がブレることなく両腕で受け止める。




(暴牛獣ほどじゃないが、重いな。)




智一は片腕で耐えてもう片方の腕を振って人型人造魔獣の手を強く殴って弾いた。人型人造魔獣は智一の拳に耐え切れず右腕が吹っ飛んだ。


智一が構えを緩めた隙を後ろから狙う蟷螂カマキリ型人造魔獣が鎌に取り付けられたブースターで勢いを強めて降りかかる。


あたる前にハンターの和泉洋介が薙刀で振り払ってくれた。




「ありがとうございます。」


「いいんだよ仲間なんだし。それに智一君なら余裕で防げていたんじゃない?」


「洋介さんが守ってくれるの信じてたんで。」


「なら、ありがとうな。」




二人を百足飛竜が回りながら囲った。けれども二人とも余裕そうだ。




「智一君は二十歳超えてるんだっけ?」


「はい。今年で二十三になります。」


「この戦いが終わったら酒でも交わしてゆっくりと話そうじゃないか。」


「はい、是非とも。」




百足飛竜が二人に回りながら嚙みつこうとした。




「「はあっ!」」




智一の拳が百足飛竜の頭部に強く当たりその振動が強く響き渡り怯む。その直後に洋平が疾風脚で百足飛竜の身体を駆けながら薙刀で次々と傷をつける。


百足飛竜を一瞬で倒した。




「あの二人スゲー。」「洋介さんと息ぴったしだったな。」「ついていけるのギルマスくらいだったのに。」




二人への評価は高かった。洋平さんが他のハンターでは勝つのが難しかった敵を一瞬で倒せたと言うのもあるが、実力者の洋平さんに初でついてこられたのも一つの要因なのだろう。智一はそういう息を合わせるのが人並み以上に得意。




「そんじゃ、じゃんじゃん狩りますか。」


「はい。」




二人は一刻も早い安全のために素早く動き戦う。また、その二人に後れを取らずと他のハンターも奮闘する。




エル達の方は人造魔獣数体とデントを相手していた。

骸骨鯨(ホエースカル)の闇魔法:暗黒咆哮によるランダムデバフや広範囲の水魔法によって大きく戦力が左右している。


加えて改造 果汁竜(フルーツドラゴン)の光魔法:太陽の兆しで常に自己再生し、魔法準備(リフレッシュ)の無い猛毒攻撃。そしてデントの魔法の連続攻撃はエル達を悩ませ翻弄した。




「さあ、どうしたどうした?さっきの威勢のよさはどこいった?」




デントは無詠唱で初級魔法や中級魔法の序をやすやすと使う。


エルも最小の力で相殺しようと風魔法:風切りや土魔法;石弾で攻撃を進めていた。




「フッ...なっ」


「甘いな。」




ギルマスが隙をついて攻撃する。加えてミナやユンタの補助魔法や闇魔法、他のハンター達の加勢によってなんとか凌いでいる。




「甘いのはそっちだ。」


「マジか...」




骸骨鯨(ホエースカル)の闇魔法:死者の群がりでギルマスは大量の骸骨によって足から地面に飲み込まれかけた。


補助型ハンターの強化魔法の重ね掛けしたエルの一閃で骸骨の塊とデントに傷を入れた。




「クソガキども...」




デントは血を吐きながら膝を地面に着けた。




「魔法は大したものだけど、思っていたほどの脅威じゃないようね。」




しかしデントは笑っていた。

果汁竜(フルーツドラゴン)の土魔法:大地の癒しによる回復と骸骨鯨(ホエースカル)の闇魔法;骸(むくろ)の壁によるダメージ軽減でそこそこ面倒な相手になっていた。




(ハンターの動ける数も減ってきた。長くは持たない。どうする?)


「考えている暇ねぇだろ!行け、骸骨鯨(ホエースカル)。あのガキを殺せ!」




ミナに攻撃を仕掛けるつもりだ。




「ミナ!!(ミナ君!!)」


「風魔法:鎌鼬(かまいたち)の巣」




無数のかまいたちの形をした獣がエル達を襲う。




(魔法が邪魔で前に進むのにタイムロスする。このままじゃ...)


「うぉらあぁぁ!!!」




デントの上から智一がデントに向かって拳を突き出して落下してそのままデントの顔面に直撃した。


骸骨鯨(ホエースカル)の方も洋介が対応していた。




「智一君!?どうして...」


「どうしてって、そりゃあ困ってそうだったからに決まってんだろ。」


「でも、人造魔獣は。」


「安心しろ。こっちのはもう片付いた。」




智一達の相手戦力もエル達と対して変わりはないのだが、智一達が倒すのが早かった理由は絶妙なコンビネーションだ。

智一と洋介に揺さぶられ、他のハンターも息を合わせて一ヶ所に大きな傷を入れた結果相手は魔力体力の大半を回復に回して最終的に再生不可となるのが速かったのだ。


エルの一撃もそれに相当する威力を有しているが相手の指令塔デントが知力を有して、避ける攻撃するタイミングが良すぎたのだ。




「ミナの補助と果汁竜(フルーツドラゴン)の方は他のハンターに任せている。俺らは残りのハンターと共に骸骨鯨(ホエースカル)とデントを叩く。ユンタも俺らと協力してくれるか?」


「ガウッ!」


「デントは違法薬物使用 殺人 人体改造 等の罪がある。最悪殺しても構わん。」


「なら、遠慮はいらないな。」


「ありがとう。感謝するよ。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る