第十六話 改造種

大猪の方はLv80 植物亡霊はLv72


二体とも俺 智一 ミナ ユンタよりもレベルは高い。それに加えて少しレベルの高い配下三人と増援。


数でも負けている。大型二体のモンスターの力が読めないのでどう戦力を分散するか考えてしまう。




「俺とミナは配下を相手するから淳也とエルはそこのデカ物二体頼むわ。」




智一が勝手に指示し始めた。確実な計画も無いのに。




「まだ相手の底が知れない。変に分散するのは危険だ。」


「俺よりも淳也とエルの方が俺よりも力がある。なら俺らは配下の戦力削りと足止めに専念するべきだと思った。」


考えとしては悪くない。

把握して計画したんだ。前から予測を立てて。

智一は俺を信じているんだ。なら俺自身も智一を信じなければならない。




「油断するなよ。」


「するつもりはねぇよ。」




智一は当たり前だろうと言っているような笑顔を見せてミナ、ユンタと共に配下の相手をしにいった。




「どっちがどっちの相手をする?」




エルが微笑みながら質問した。

亡霊の方に有効な攻撃を持ち合わせていない。ならレベルが高くても確実に切る感覚のある大猪を相手する。エルが亡霊に有効な攻撃があるのなら。

エルに伝えた。




「わかった。私は幽霊系統の攻略法知っているから問題ないよ。それに半分植物だから普通に対処できると思うよ。」


戦闘を開始した。




「さて、人造魔獣がどこまで強いのか戦って調べるか。」




大猪にエンジンがかかり始めた。前足をかく。


「ブルルル。」


準備中か?今のうちに接近して斬るか?

ジグザグに動きつつ接近する。


大猪は部分的に鋼装甲があるので、それに強い炎属性能力の炎斬を二、三度飛ばしそこに炎属性攻撃威力強化した鬼神斬で斬り込んだ。


斬った瞬間、少し刃が入った感覚はあるが自分が思った程ではなかった。そのまま俺は後に弾き飛ばされた。



「ブギギィィ!!」




大猪が動き出した。準備が完了した大猪はエンジンに付いたマフラーから大量の二酸化炭素を排出して大猪は俺に突っ込んできた。


俺はとっさに大猪の頭を蹴りとばして何とか避けられた。

大猪は猪突猛進して壁に突っ込んだ。




「ブルルル…」




ほとんど無傷。

二酸化炭素が苦しい。必要な酸素が採れなくて肺が痛い。

これも一つの策か?

大猪は絶え間なく何度も俺に突っ込み続けた。




「ったく。地球温暖化の原因になるから、少しは落ち着けや!」




避けつつ、刃が入る場所を探しつつ攻撃し続けた。

切りがないな。少しレベル差があるとはいえここまで差があるものか?




大猪をよく見ると少しずつ自己再生していた。

防御も硬く自己再生をし続け、加えて敵をも巻き込む無造作な突進に当たればただじゃ済まない。


ん?敵をも巻き込む無造作な突進…

あ、そうだ。




エルも苦戦していた。




「オオオォォォ」




植物亡霊は頭を伸ばしてエルを食い殺そうとした。




「私、食べても美味しくないよ。」




風切りや鎌を振るうだけで頭の食虫植物は容易に切れる。しかし

頭を切り落としても体が無事なら動き続ける。


植物亡霊は腰に添えた刀を抜いて一閃一閃速く確実なまでの命中率でエルに刀を振るう。


エルはギリギリ避ける。

上級ハンターだからこそ避けられているが、普通のハンターなら輪切りにされていただろう。


植物亡霊の頭が再生する。


その後、植物の口から毒ガスが噴射されエルの空気と足場を奪う。風切りで吹き飛ばしても次々とガスが溢れる。




(最悪の展開だね。)




エルは呼吸法で最低限度の酸素を取り入れて相手に接近した。しかし、




「嘘っ!?」




毒ガスで足下が見えづらいのを利用して闇魔法:襲撃手ハザードでエルの足をつかんだ。そのままエルを捕らえて身動きをとれなくした。




(まずいなぁ。体は硬いし、頭は再生するし。さっき淳也君の前で余裕かましていた自分が恥ずかしいや。)




襲撃手がエルを締め上げて苦しませる。




「ぐっ!」


(仕方が無い。助かるためにも使うしか…)


「退け退け退け!」




大猪に乗った俺が乱入した。大猪の目は炎海波ファイヤーオーシャンで覆い隠され、炎壁ファイヤーウォールで道を形成している。植物亡霊に向けて。




「フギィィィ!!」




大猪は植物亡霊に突って大猪は牙が、植物亡霊は鎧が


壊れた。そして二体同時に倒れた。


襲撃手が消えてエルが気が抜けた様に落ちたが地に落ちる前に拾い抱えた。


エルは一瞬気を失っていたが、すぐに目を覚ました。




「大丈夫か?」


「……どうも。」




頬を赤らめ驚いた顔をしてお礼を言った。




「そこの二人イチャついてる暇があるならこっちを手伝え!」




智一に注意された。

イチャついてるつもり無かったんだけど…

そのままそっとエルを降ろした。




智一の方はなかなか厳しそうだ。

ユンタと智一をミナが強化し同時に死角からの攻撃や防ぎきれない攻撃を魔法結界で防いでいだり智一自身が見切りで避けたりしているが、増援が次から次へと来て苦戦している。


ユンタの漆黒球を走り翻弄しながら打ち相手の陣形を崩したり体力を奪う。




「はっ!」




智一が氷結拳アイスナックルを地面に打ち、相手の足を固める。




「クソっ!」


「動けねぇ…」




その隙を逃さず氷結連撃脚アイスブレイクダンスで当たった敵を瞬時に固め、また風を起こして近辺周囲の敵をも凍らせた。しかし上位三人は智一に苦戦するものの、他の配下のようにそう易々とやられてくれなかった。


上位配下は壁を駆け、地を駆け魔法で攻撃する。




三属性射撃トライアングルショット!」




炎球と風球と雷球が高速で智一達を攻撃する。




「聖魔法:光追撃光線ライトミサイル!」


「ワン!」




ユンタが漆黒球で智一に当たる前に相殺した。




「サンキュー、ユンタ。」




こうしている間にも次の攻撃、巨大な魔法弾がミナに向かう。




「魔法結界が間に合わない…」




魔法弾が当たる前に智一が歯を食いしばり、必死に押し返した。しかしずっと攻撃をミナに当たらないように受け止めていたせいでボロボロだ。




「大丈夫か?」


「大丈夫だけど…でも、智一君が!」


「俺はミナがサポートしてくれていたから問題ないよ。」


「でも…」


「俺が、いや俺らがミナを守る。だから安心してサポートに徹してくれ。できるか?」


「智一君…わかった。」




この短時間でミナとユンタと智一の絆が深まった。


けれども、智一達の体力を確実に奪っていく。




「いくら努力しても生物には限界がある。諦めろ。」




配下の言うとおりどんなに強くてタフでも生物には限界がある。諦めるのも一つの選択肢である。




「うるせぇよ。」


「あ?」


「うるさいって言ってんだよ。努力もしないでただ生物を遊び道具にしてただそれに頼ることしかできない


奴らに文句を言われる筋合いはねぇ。


       黙ってくたばれ。        」




智一のプライド…いや努力する人のプライドが許さなかった。智一は怒っていた。冷静で強い怒り…




「言ってくれるじゃないか。なら、我らのプライドと貴様のプライド。どっちが強いか勝負だ。」




また配下も配下でプライドが高かった。




「ああ、勝負だ…」




プライドのぶつかり合いが始まった。






そんな智一に遅れを取らないように俺とエルも連携をとるようにした。

大猪と植物亡霊が少しの間争ってくれたおかげで回復の時間がとれた。


相手も学習したようで連携を取り始めた。

植物亡霊が毒ガスの密度を上げ、壁を形成して一直線の通り道を作り上げた。そして前には大猪が、反対側には植物亡霊が攻撃準備をしていた。



挟み撃ちか。

あいにく大猪には表面的に毒が効かないらしく、高さ制限が大猪の頭ちょうどだ。




「どうするの?横と上には逃げようがないし前と後は人造魔獣に塞がれている。人造魔獣の体も硬いから斬りようが無いし。もしかして私たち詰んだ?」


「まだ何かあるはずだ。」


違和感、違和感を探せ俺。

もういっそのこと床を壊そうと思ったがやめた。なぜなら、壊したせいで地盤が緩んで街が崩壊するかもしれないからだ。


疑問に感じた事が一つだけあった。なぜ植物亡霊は

密度の高い毒ガスを充満させなかった?そちらの方が効率がいいのではと思う。


先ほどの戦いでは植物亡霊が大猪の周囲に毒ガスを撒まかなかった。そして大猪も毒ガスを踏もうとはせず逆に避けていた。


もしかすると




「エル、……」


「わかった信じるよ。」


「感謝する。」

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