第十四話 捜索

現場に着いた。


人々がざわつき、集まっている。中央の噴水を見ると

大胆に砕け散っている。まるで巨人が殴って壊したみたいな。




「変だな~。」


「何か変なのか?」


「いや、ゴリゴリ物理系の魔物や強い攻撃魔法なら物音で分かる。でもこの建造物自体の強度を考えるとそれくらいの威力を持つ者が居ないとできないし。」




昨晩は特に不審な音は聞こえなかった。眠っていたとはいえここまでの物を壊すと周辺住民が気づく。




「結界系の魔法で音を消したとか?」




確かにその考えなら筋が通る。けれども智一の考えは当てはまらなかった。




「それは無いと思います。一人で高威力の攻撃と結界を使うのは難しいですし、二、三人係でも衝撃波を完全に押さえ込む事はほとんどの人ができません。」




「結界の範囲を狭くして何重にもしたとか。」


「ここまでの壊れ形だと小さくするのは可能性としては低いです。ましてや何重にも重ねががけしても住民が気づくかと…」




ミナがここまで魔法知識と観察力にたけてるとは

仲間でいてくれて助かった。


そうすると選択肢が無くなる。

この街に大魔導士が来たっていう情報も無いし大体の魔法使いは完全に防ぐ事はできない。


エルから買い物中に聞いたが、空間系の魔法は使える者が少ない。ましてや人間以外でない限りそう易々と使えないらしい。…………人間以外なら…




俺の頭に1つの推察が浮かんだ。




「誰かが悪魔のような存在を召喚して空間系の魔法を使わせたとか…」


「なるほどな!」


「でも悪魔を召喚するには大量の生贄が必要だし…」


そう。でもつい最近、俺らは大量の魔物を狩ってギルドに生贄となる強い魔物の素材を売っている。


「た、大変ですぅ!」


ドジそうな(そうである)ギルドの受付嬢が慌ててこちらに来た。



「俺らが売った素材が大半無くなっているのか?」


「は、はい!そうですが…どうして?」


「ビンゴだな。」


「ん?………あ!そういう事ね。」




エルも智一もミナも理解してくれたらしい。話が早くて助かる。

俺らはギルドに向かってこのことを調べにいく。




「突然ですまないけど、調べてもらいたい事がある。」


「どうだ?見つかったか?」




ギルマスは耳が早い。こちら側から伝えようと思っていたけどその必要はなくなって手間が省けた。


調べてもらうと、俺の予想していた怪しい人物が三日前からこの街に泊まっていた。


召喚には大量の生贄と特別な鉱石や薬品が必要で全て日常用品として手に入るもの。

量もかなりるので変に多く買うと確実に怪しいので隠密者を手配することを知っている。


その男がそれをしていたとの情報があった。




「デント・トントル 職業:魔術師 この人で間違いなさそうね。」


「手がかりも見つけた事だし、被害が出る前に俺たちも早く見つけよう。ギルマスはこのことを他のハンターに伝えておいてくれ。あと外に逃がさないように門番の強化も。」


「わかった。皆聞いたか?すぐに取りかかれ!」


「「了解!!」」




ギルドじゃなく軍にしか見えない。


一気団結しているのが分かる。素晴らしいことだ。

おっと、そんな事考えてる場合ではない。






探索して1時間後


例の男の手がかりとなる情報はあるのだが、なかなか見つからない。屋根の上を渡って探しているが、怪しい人物無し。

あ、ちなみに渡る際は物音をたてていないのでほぼ気づかれることはない。




「どうだ?見つかったか?」


〔俺の方は全然。門番の人もそれらしき人が通った形跡もないってさ。〕


〔駄目。私の方も人目に付きづらい裏通り探してるけど居るのはチンピラばっかだよ。〕


〔私の方も感知で広範囲に捜し続けていますが、引っかかる該当は無しです。〕




この街に該当者無しが応えであった。

もう外に出たのか?だとしたらまずいな。


次の瞬間、その予想は少し外れるようなことがあった。

北口から爆発音がした。




〔俺が一番近い。先に行く。〕




智一が向かってくれた。




現地に着くと

道なりに沿ってそびえる木が何本も粘土で造形したみたいにねじ曲がっている。また、先ほどの爆発で路上が割れている。


智一が見えた。犯人らしき人が智一に捕らえられている。

地上へ降りて智一のそばに行った。




「そいつが該当する犯人か?」


「いや、こいつはその仲間らしい。」




少し残念だったが、手がかりは少しでも多い方がいい。作られたらそれはそれで困るけど…


犯人の仲間は口を割らなそうだったのであまりやりたくないが大剣で脅した。智一もノリノリで協力した。




「リーダーはどこだ?」


「し、知らねぇよ!本当に知らねぇんだ!ただそいつに手伝ったら報酬として金貨10枚をやるって言われたから手伝っただけだ。頼むから命は見逃してくれ。」




犯人の仲間は怯えて震えながら言った。

その後駆けつけた騎士団に手渡し男は連行された。


エルから連絡がきた。




〔こっち、怪しい女見つけた。取り押さえたから問題ないよ。女から情報は無し。引き渡したあとも散策を続けるよ。〕




ありがたいが、有力な情報が無い。

やはり偽物だけ置いて街にはもう…


〔こちらミナ。ユンタが情報を持った男を取り押さえました。その近くの路地裏から該当者が複数の仲間と思われる人物と逃走中。〕


「ありがとう。智一と共にそちらに向かう。」


〔さすがミナだわ。〕



俺らはミナから送られてきた情報を頼りに犯人達の元へ向かった。




「くそ!捕まったか!」


「他の二人も捕まったらしい。」


「早く逃げるぞ!」




俺らは先回りをして犯人達の前に立ち塞がる。




「デント・トントルとその仲間だな!お前たちを器物破損の疑いで逮捕する!  一度言ってみたかったんだぁ。」




智一は警察官らしい発言ができて満足している。

よかったじゃん。それらしい雰囲気で言えたんだし。


「こっちだ!」




犯人達は逆走した。しかし

エルとミナとユンタが反対側を塞いでくれた。

ようやく捕まえた。と思ったその時…




『何をグズグズしておる。』




どこからか低い20代くらいの男性の声がした。

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