第十三話 本音と頼み

温泉宿に着いた。何だか今日はあっという間に過ぎていった気がする。色々あり過ぎて逆に。




「一緒に入ろミナ。

あ、淳也君超えてはいけない一線越えたら許さないからね。」


面白がって言うエル。




「超える気1μmも無いから安心しろ。」


「淳也君はもう少し青春を知った方がいいよ。」




女性の温泉をのぞき見する青春なんて求めたくないです。






温泉を楽しんだ後、美味しい食事にありついて満足し


た。


個人リビングでのんびりと飲み物を飲みながら会話をした。




「そういえばミナはテイマーなのか?ユンタって地獄犬ヘルドックなんだろ。」


「はい。私はテイマーでユンタをティムして家族にしました。」


「一応なんだが、テイマーじゃない俺らが魔物をティムできたりするのか?」


「一応できますよ。テイマーよりは仲間にしづらいですけど。」




専門の方が仲間にしやすいけど、専門家でなくても仲間にできるのか。いつか試してみよう。




「前から気になったんだけどさ。」


「何が?」


「淳也君と智一君って結局どこから来たの?」


「……すまん。まだ言えない。」


「ま、事情はそれぞれあるし、いつか言いたくなったらでいいよ。」




何だかエルらしい。




「逆に聞くけどよ、エルはどこから来たんだ?」




エルはコップを置いて気楽に話した。




「私、親も出身地も幼少期も自分が何者なのかの記憶も無いんだ。」


重いな。気楽に話していい内容じゃない。


「なんかすみません。」


すみませんで済む話じゃないと思うけど?智一さん。


「いやいいんだよ。話したの私だし。」


………気まずぅ。




「え、えとミナはどこから?」




よし、なんとか気まずい空気から抜け出せたな。さすが空気読み高コミュニケーションヒューマン智一。


「私は幼少期に親と共に宿家を追い出されての繰り返しだったのでその前の記憶は曖昧で出身地は知らないんです。」



汗だくだくの智一。気まずくしてどうすんですか。


静まる空気。こんなにも気まずい事、人生の中であるのだろうか。

結局俺が何とか盛り上がる話(俺らの世界で流行っていたゲームや本といった娯楽や絶景のある観光名所の話。勿論故郷という形で伏せてある。)をして何とか明るい空気に取り戻せた。


次の日

食事を済ませた俺らは快晴の空の下に立っている。




「よし、準備もできたことだしミナとユンタのレベルアップも兼ねてクエスト出発としますか。」


     「おう!〈ええ。〉〈はい!〉」




ギルドに向かうとなんだが騒がしい。

ギルマスや受付嬢さんも気難しい顔をしている。




「何かあったんですか?」


「実はな、昨晩中央広場の巨大噴水が何者かによって壊されていたんだ。」


「噴水が壊れても特に産業や営業に影響はないんだけど、町のシンボルだから壊されて市民が混乱しているの。」


(今はクエストより混乱の収集か。これは俺らも手伝うべきなのか?よし、だったら。)


「なあ、淳也。その犯人俺らで何とか捜してみないか。勿論勝手だとは思ってる。でも少しでも市民の安全を守れるなら俺はやりたい。迷惑なら俺一人でやるよ。」


「わ、私も智一さんと一緒に行きます。この街は綺麗だし、ご飯美味しいし。何より少しでも助けてもらった智一さんの恩返しができる事をしたい。です。」


「ワン!ワン!」




ミナとユンタは智一と同じくこの街の調査をするらしい。




「ありがとう、ミナ。」


「頼られる私でいたいので。」


「で、どうするの?私は淳也君がこのチームのまとめ役だし、私は淳也君に従うよ。」




エルは俺に従うと言っているが目を見れば分かる。私もできることなら助けに行きたいと。




「淳也君、お願いできるか?」




ギルマスにも頼まれた。完全に期待の目だ。




「あーーもう分かったよ。どのみち手伝わないといけなさそうだし、俺自身も夢見が悪くなるの嫌だし捜すつもりだったから皆で引き受けましょう。」


「おぉ!サンキュー淳也。」


「ありがとうございます淳也さん。」


「淳也君ならそうすると思っていたよ。」


愛茉と異世界にまつわる情報なら取り逃がすわけにもいかない。そのためにはこの世界での経験と知識が必要だ。

自分から探さないと一生見つからないので探す選択ただ一つということになる。


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