第十話 嫌いな先輩

レンガ造りの建物、色々な出店、多種多様な生活必需品の店。新しい風景に心が躍る。


さて、王都の探索を始めます…と思っていたらエルが




「観光する前に、先にギルドに行くよ。」


「観光してからじゃ駄目なのか?」


「ギルドで登録してからだと街中で商品が半額になるものもあるからお得だよ。ただたまにそれを悪用して




何もしないのに半額を求める人もいるからその分は貢献しないといけないんだけどね。」




「まだ街に貢献してない俺らは後先変わりないと思うが…」


「いや、私たちは牧場を安全区域にしたり魔物の素材を売って提供する事ができる。条件満たすから半額になるよ。」




メンバーカードみたいな感じか。この街に貢献して金銭問題が少しでも和らぐのなら優先する。


向かおう、ギルドへ。




歩いて30分後ギルドに着いた。


外装は木造建築二階建てで細かい細工が洋服らしさを引き出しているオシャレなデザインだ。


いざさっそく入ってみるとファンタジーの世界の冒険者グループが複数いる。




「俺今、富士山登りきった時よりも気分が高揚しているかも。」




智一も嬉しそうだ。感動レベル違いすぎて逆に驚く。


雰囲気的にもかなりいい。受付嬢も代表でいるのは眼鏡を掛けたエルフの美人お姉さんだ。しっくりくる。


余韻に浸り気分が良いと思っている中、また異世界に定番の人材が現れた。




「おい!これはどういうごとだで!」


「す、すみません!ですがこれはちゃんと規律を守った規定の量でして。」


「我らの長を侮辱するか!」


「例え美人な女だとしても許される事と許されない事がある。」




雰囲気がぶち壊しだ。 



「やっぱなし。今ので富士山よりも下になった。」



台無しですよ。




ん?長?何処かで聞いた名前…

思い出した。あの昭和の不良学生服で肩パットをいれた体のデカいおっさん面の人。そして回りにイケメンチャラ男達が群れているあの様子。忘れるわけもない。




「俺…あの人知ってるわ…」




智一も思い出したようだ。


浮き輪体・変身変態怪獣オネエ眼鏡・推定年齢55歳のザビエル・イケメンを統べるエロ親父と色々なあだ名が着いた男。


俺らより二つ上の一応暗殺者先輩 坂田さかだ岩平がんぺい28歳。俺らが一番嫌いとする先輩だ。


学生暗殺者時代、化け物じみた巨体と圧倒的な腕力で怖がられていた人だ。そしてなぜがイケメンが配下に下るというよくわから存在でもあった。


そのため、女子がイケメンに寄ってしまって自分が省かれるというまじでドンマイ脳無し人生を送っている。他に信頼できる仲間がいないからこうしてるとか…


わがままお姫さまがイケメンに囲まれそれを従えているのならわかる。でもそれがデブでデカいおっさんだと思うと…




「キモいな。」


智一、お前は俺の思ったことを口にするな。


「あ?誰だ。俺の事をセクシーイケメンです。と言った奴は?褒めてやろう。」


(そんなこと一言も言ってないし、あと褒められても嬉しくないし。)


「迷惑だからやめろって言ってるんだよ。」


「お前は…俺に逆らった智一と仲間の蘭だな!」


「長に歯向かった挑戦者か。」




配下達が坂田を持ち上げる。

俺には何が何だか。



「そうなのか?」


「ウザかったからちょっと模擬戦場でボコしただけだよ。てか淳也も絡まれたんだな。」


「まあ俺も似たようなことしたし…」




学生暗殺者時代に坂田が美桜に絡んでたからちょっとはね除けたらキレて俺に模擬戦を仕掛けてきたっていうよく解んないことがあった。

まあ小栗さんに鍛えてもらって2年経ったから余裕で勝てたけど…




「ちょうどいい。俺はこの受付嬢に用があってな。俺らが回収した素材の中で俺が回収した素材だけがなぜがそれ相応の値段ではないんだよ。」




そう言って坂田は俺の肩に手をそっと置き耳元でささやいた。




「頭の良い蘭なら相手側が悪いと理解してくれるよな?」




口が臭い。息が荒くてキモい。手を退けろウザい。

もう罵倒しかこの男には出てこない。




「その規律資料と素材、見せてもらっても。」


「は、はい。」




やっぱりだ。採集の仕方が荒々しい。どんなにレベルの高い魔物でも採集が雑なのであれば価値が下がるのは当たり前だ。




「坂田先輩、あんたの素材回収ははっきり言って雑だ。だから価値が下がる。受付嬢は何も間違っていない。注意書き読んだ?てか読めてる?」


「なっ!こいつ…」


「我らの長に対抗するつもりですか?」


「あんまり調子乗ってると痛い目見ますぜ。」


は?調子乗ってるのはそっちの方では?扱いが荒い者で買った時と同じ値段で売れというのがそもそもおかしいはなしだ。


ちょっと対抗意識を向けようとしたが




「はいはいストップストップ。ギルド内での狩り人同士での争いは罰則だよ。やるなら模擬戦場でね。」



全く俺は何を醜い争いをしようとしていたのだろうかと心の中で反省した。



「なら私が直属に模擬戦審判をしよう。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る