第九話 初の街

俺の体はボロボロ。もう、立てる力はない…や。

気を失いそうになったその時…誰かが支えてくれた。




「全く、すぐに俺らの先に行ったと思ったら無理して倒れる。世話の焼ける相棒だぜ。」


「傷見せて。回復魔法で治すから。」


「はは…すまない。」




救われたな。相棒とあと新しい仲間に。

こうして俺らの目玉蜘蛛軍隊討伐は幕を閉じた。

太陽が昇る。


「それじゃ、いくか。」


「ちょっと待って。最後に念の為に浄化魔法使うから。」




浄化魔法は普通、アンデッドや邪を払ったり弱体化させるために使う。けれども別効果で魔素の安定もできるらしい。


さて次の目的地は...




「エルが一緒に行こうと誘ってくれた街 王都コロブスにはどうやって行くんだ?」


「この先2.5kmほど道なりに進んだところに駅があるからそこから電車で行くの。」


この異世界には電車の文明があるのか。異世界で現代チートとか狙ってる人には向かなそう。

のどかな自然溢れる道を通って俺らは駅に着いた。


「……ボロボロだな。」


「田舎側なんだから仕方がないだろう。」


「二人は何を想像してたの?」




なんかもう雰囲気的に電車が来なさそうな駅だ。


自然溢れ過ぎて人気も無い。つる植物がそこら中に伸びて線路も錆錆サビサビ。近くに村があったのだがもう廃村らしい。人が一人もいないのも納得だ。


牧場経営者が使うためまだ通っている……のか?。

てか5時間に一回しか来ないとか終わってる。



   待って30分。もう来ない気がしてきた。




「もうそろそろ…あ!来たよ!」


「やっと来た。って電車綺麗じゃね?」




棒阿〇蓮さんの男性主人公みたいな反応をしてしまうほどの物が、その場に適合していなかった。




「新品の路面電車?」


同じこと思った。

疑問は置いておいてとりあえず電車に乗るのであった。


電車が出発して30分後、智一とエルは安心したのか眠ってしまった。

一晩寝ずに戦い続けたのだ。無理もない。ただ…




何で二人の間に俺がいるのだろう。

しかも二人とも寄りかかっているし。


人が運転手さん以外乗っていなかったからよかった。

智一はいつも見慣れているけど、エルは初見なのでなんか緊張した。




やっぱりこうやって見ると愛茉にそっくりだな。

少し意識してしまう。




「今回だけだぞ。肩貸すの。」




ほっとして眠くなってきた。


一時間経過


すっかり眠ってしまっていた。




「二人とも、そろそろ目的地らしいぞ。」


「んあ…おはよう。」


「おは…ん?はっ!」




エルが何やら俺の肩を触っている。




「も、もしかして私淳也君の肩に寄っかかってた?」




恥ずかしそうにするエル。クールでミステリアスなイメージだから新鮮で可愛い。




「気にしてないから安心しろ。」




少し気にしてほしいのかジト目で見てくる。察せない俺は目をそらして少し汗をかく。




「目的地…」


「あ、目的地ね。ほらもうすぐ見えてくるよ。」




トンネルを抜けて景色が見えてきた。

巨大な円を描き、多くの建物が収まっている。


真ん中に行くに連れて建物が大きくなり、中心に城がそびえ立つ。西中央王都:コロブス




「街には美味しい食事のできる食堂や武具屋、小物店に魔法店、あと温泉がある……あ、つい夢中で喋り続けて…スミマセン。」


「楽しそうでなにより。俺らも楽しみだし、はしゃいでも何とも言うつもりはないよ。」




エルがもし万が一、変に気にしてしまってはエル自身が楽しめなくなる。だから変に言わない。


駅を降りて街に出た。異世界初の街探検…じゃなくて探索。  捜査開始だ。

前の人生よりも明るい方向へ進んでいるのを実感した。




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