第四話 初討伐と調査

 

「?私愛茉じゃないよ。ていうか自己紹介は後。早くこいつを倒さないと。」



少女はなにも無い場所から体に見合わない可憐な模様が描かれた巨大な鎌を取り出した。




今のは収納庫アイテムボックス


大鎌を片手でブンブンと振り回して両手で持った途端体をかがめて暴牛獣ミノタウロスに急接近し、下から思いっきり上に斬り上げた。


目で追えるスピードだが、体のスピードで追いつける気がしない。

暴牛獣ミノタウロスの体が縦に裂けた。



「硬ったぁ。」



少女は後に軽やかに下がる。

体力はかなり削れたがまだ立ち上がる。



怒り狂った暴牛獣ミノタウロスは少女めがけて斧を振り下ろした。

まずい!攻撃範疇だったか…


でも少女のお陰で隙ができ首を後から確実に捉えることができた。



「あんがとお嬢さん。」



大剣を斜めに強く振り暴牛獣ミノタウロスの首を切り落とした。






「も、目標討伐達成~。」


「二人ともサンキュ~。」




俺も智一も激しい戦闘で気が抜けた。流石に疲れた。



『称号:突然変異殺し を取得。加えて、能力(スキル):鬼神斬 炎属性系威力強化 命狙おいのち ごめん 装甲強化を獲得しました。』




覚醒魔物を倒すと得られる突然変異殺し:効果は覚醒した敵、Lv100以上の敵に遭遇して戦闘になった場合に攻撃が上昇


急所に10回以上当て倒すと得られる命狙おいのち ごめん:効果は体力が半分以下の敵、スタン状態、睡眠状態の敵の弱点が分かり加えて急所への攻撃が上昇する。


鬼神斬は炎属性攻撃で中確率で炎壁ファイヤーウォール炎海波ファイヤーオーシャンを発生させ高確率で相手を火傷にする。


残り二つはその名の通りの効果。


序盤でかなり凄い感じの能力スキルを取得してしまった。でも序盤で覚醒暴牛獣ミノタウロスを倒したのだから受け取っても罰は当たらないだろう。

レベルも61に上がってステータスも全体的に上昇したからいいでしょう。




「初覚醒魔物討伐おめでとう。」


「ありがとう。って助けてもらったのこっちだし感謝するのは俺らの方だよ。」


「いえいえ。」


「そういえば、紹介がまだだったな。俺は蘭 淳也。こっちは…」


「桜井 智一だ。よろしく。」


「私はエル・スカイシア。エルでいいよ。暗殺者をやっているの。年は…多分君たちと同じくらいかな。」


小柄だからといって年下だとは限らない。具体的なことは聞かないでおこう。聞いたら鎌で一刀両断されかねん。


「あ、そうだ。智一君だっけ?ちょっといい?」


「ん?なんだ?」


「回復魔法 中級回復セカンドヒール。」




エルの手先から緑色の魔方陣が出てきてそこから緑色の粒子によって智一の体の傷が塞がっていく。

この世界ではちゃんと回復魔法とかが使えるのか。



魔法云々は遺伝的なものらしい…俺らは異世界から来ているから使える可能性は低いと考えるべきか。

でも待てよ?俺が炎属性攻撃強化とか持ってるなら理論上魔法使えるのでは…



俺たちは近辺探索と同時に彼女のことについても聞くことにした。



「そういえばエルはどうして俺らを助けようと思ったんだ?。」


「たまたま見かけてなんか変わった服装してるな~と思ってちょっと様子を見てたんだ。そしたら暴牛獣ミノタウロス小鬼ゴブリンの集団相手に怯まず戦っていたから面白い人たちだなって。

でも苦戦してて何でだが知らないけど、君たちを助けた方が夢見が良さそうだなと思って結果的に助けた。」


「理由はあやふやだけど、それに助けられたんだよな俺ら。な、淳也。」


「ま、そういう事にしておく。」


「そういう事でいいよ、淳也さん。」


「てか俺らについてきていいのか?」


「君ら田舎出身でしょ?この先右も左も分からないんだったら私が教えてあげようと思ってね。」




田舎ではないが右も左も分からないのは確かなのでここはお言葉に甘えてお願いする。




早速近くの牧場建造物を調査した。

しばらく人が居なかったのか蛍光灯はチカチカ点滅して蜘蛛の巣やほこりが舞っている。


牧場の中を調べまくったが特に有力な情報無し。……

と思っていたが事務所所長室の机の上に何やら置き手紙があった。


少し離れた通路、おおよそ智一とエルが居る所だろうか。大きな爆発音が聞こえた。

手紙は後回しだな。




駆けつけると智一とエルが戦闘していた。

目玉から蜘蛛の足型生えている気持ち悪い何かがうじゃうじゃ嫌がる。



名前:目玉蜘蛛アイズスパイダー 性別:雄 Lv25 種族:昆虫 称号:無し


能力スキル:蜘蛛糸 熱線レーザー 毒針 念話


仲間:目玉蜘蛛アイズスパイダーA B C…


攻撃 25 防御 13 速さ 45 魔力 4 魔法耐性 6 知力 3



単体でのレベルは低く、脅威ではないが集団で来られると面倒くさいタイプの敵だろう。智一とエルが殴り潰したり切り裂いているけど次から次へと湧く。



「こいつら、倒しても倒しても湧いてきやがる。」


目玉蜘蛛アイズスパイダーは知力は低いけど念話で仲間を読んで集団で襲ってくる習性があるんだ。だか、ら!」


「ギィ?!」


「面倒くさいのよね。」




目玉蜘蛛アイズスパイダーの集団をなんとか倒しきった二人。でも俺と目があった途端…

いきなり二人が俺に圧をかけながら寄ってきた。


「淳也さん。あんた俺らが頑張って戦ってる中ずっと見てたんですか?」


「どういうことかな?淳也君。」




まずい。決して見てただけじゃない。二人の戦い方や目玉蜘蛛アイズスパイダーの研究…そう研究をしていたのだ。そう伝えよう。……でもこれ、言い訳っぽそうなんだよな。…あ!手紙があるじゃないか。




「そういえば二人、さっき事務所所長室から手紙をみつけたんだ!」




スゲー馬鹿っぽくてなんかやだ。とっさの事だったけど…




「………それは重要だな。ま、今のは無かった事にする。次は無しだぞ相棒。」


「で、内容の方は?」



直訳すると元々この地域は特産物を生産する牧場で多くの人々が必要としてきたが、ある日大量の魔物が近くの森とここの一番暗い部屋から湧くようになって特産物や職員が荒らされて仕事として成り立たなくなったので職員全員ここを離れたそうだ。魔素溜まりのせいで。

そしてできることなら誰かがここを魔物から取り戻してほしいとの事。


「魔素溜まりって消せるのか?」


「自然形成の方はかなり難しいかな。その魔素溜まりを全て使用する力を使うか、魔素が薄くなるまで魔物を沢山倒す他無いよ。

例え強い力を使っても周辺が消し飛ぶしそもそも人耐えられるものじゃないし自然形成ならまたすぐに魔素溜まりができちゃう。

でも人口物からの魔素溜まりならなんとか消せる。

それに何か異常や魔素溜まりが自然の外に無ければ自然形成型の魔物は出てくることはまず無いし。」




このまこのまま放置すれば生産力が落ちるし後先食料危機になるのは厳しい。自然形成は難しいけど人口物ならいける。

なら今できる事をやるまで。




「とりあえず探索を踏まえてここの魔物を倒すとしよう。」


「どうせお前の事だ。後先食料危機が大変だとか考えているんだろ?」


「全部お見通しか。」


「まあ俺も食料危機になるのはごめんだし、こういうの放っておけない性格だから喜んで協力するぜ。」


「塵も積もれば山となる、だ。」


「なるほど。面白そうだし私も付いていくよ。」


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