第三話 愛茉?

物音に反応した小鬼ゴブリン100体程が森からこちらに向かってきた。

それだけではなかった。



「おいおい何だこれ…」



智一の戦っていた暴牛獣ミノタウロスの体に青いヒビが入り、まるで覚醒したかのようにステータス全体が上がっていた。

特に攻撃力が543から723と大きく上昇した。それに加え、攻撃力上昇も使用されて973と攻撃怪物になったのだ。


攻撃スピードも上昇し先ほどよりも智一が苦しそうにしている。



智一は横から来る斧をしゃがんで避け、その勢いでカポエイラに似た連撃脚ブレイクダンスを敵のの膝、腹、腕へと確実にダメージをいれているが、対して効いていない様子だ。



「悪い智一!戦闘リスクを減らすために別の敵を打つ!少しの間耐えててくれ。」


「了解!でもできるだけ早くな。」




中級小鬼ホブゴブリンはLv44。暴牛獣ミノタウロスよりも脅威度は低い。


集団の真横から大剣を横にし、なぎ払い斬りの不意打ちで小鬼ゴブリン6体ほどの頭を跳ねた。


普通の個体なら平均Lv13.14程だから問題なく倒せそうだな。あとは数を減らしつつ中級小鬼(ホブゴブリン)に近づく。




小鬼ゴブリンが棍棒で防御したり殴りかかってくるが、そんなの関係なく切り落としていく。耳は綺麗に残す。


それに気がついた中級小鬼ホブゴブリンは少々怯えているが集団全員の戦力を俺に向けその中に紛れ込んで俺を純鉄の剣で斬りかかる。




「グギギギ…グギャア!」




俺は大剣をペン回しをするようにして振り斬る。

小鬼ゴブリンは斬撃で切り刻まれ肉片となって落ちた。中級小鬼ホブゴブリンは奇跡的に剣で防いだが勢いよく後の牧場の柵にぶつかって怯んだ。




「これ以上被害を出さないためにも狩らせてもらうぞ。」


リーダーを刺し殺し、その様子に怯えた小鬼(ゴブリン)は逃げようとした。

このまま放置したら他で被害が出るか、仲間を呼ばれるな…

一匹たりとも逃がさず全て切り落とした。




『称号:ゴブリンキラー を取得しました。』


種族数でも多い方だろう。この先便利になるな。

そんなこと考えている場合じゃない。


他の魔物が寄らないよう素材を回収し、死体を埋めて急いで智一の元へ向かった。



「はぁ…はぁ…」



頭から血が流れてかなりの深手を負っているが暴牛獣ミノタウロスも右腕がちぎれて無くなっている。

暴牛獣ミノタウロスは片手で斧を振り回したが、それを瞬時に蹴りで弾き返し態勢を戻して連撃で拳をいれた。さっきよりも拳が効いているようだ。


(さっき手に入れた使い捨て能力(スキル)“奮起”のお陰で何とか戦える)。



塵積もりは同じ敵に攻撃を重ねると威力が増す能力だ。智一にはピッタリの力だ。


(それでもまだ倒れる気配がないな…マジで化け物だな。手応えあり過ぎ…)




智一が一瞬、足がよろけた。

暴牛獣ミノタウロスはその隙を逃さず斧を思いっきり振り下ろした。



(ここまでかよ…)


「まだ諦めるのは早いぜ。」


「ったく、遅ぇよ。だが、サンキューな。」


何とか智一を死なせずに済んだ。かなりヒヤヒヤしたが…


ここから反撃開始。智一は後方に下がり、隙を突いてもらう。俺はできるだけ体力を削ることに専念する。


大剣で斧を受け流し、斧が地面に強く刺さった瞬間に大剣の重さに合わせ流れるように切り裂く。

態勢が崩れたところを智一が殴り、距離をとるため空中回し蹴りで後へ突き飛ばす。


敵は咆哮をして同時に斧で地割れ

と魔法らしき風の刃を飛ばしてきた。


風の刃は何とか大剣で切り落としたが、暴牛が風魔法使えるとか聞いたこと無い。


智一を庇いつつ、攻撃をいれるのは厳しいか…何か別の方法を。

暴牛獣ミノタウロスが突進してこようとしたその時

誰かが暴牛獣(ミノタウロス)の首に刃をいれた。




暴牛獣ミノタウロス、しかも覚醒状態相手にここまで深追いを追わせる人は余り見たことが無いよ。

まあ、私がどうにかできるか分からないけど、手伝おうか?」




木の上から跳び降りてきた少女が話しかけきた。


でも俺はこの子を知っている気がした。自分より少し小柄で白く長い髪にウサ耳みたいなリボンの付け方、

そして黄色い瞳。どことなく似て違うがそれでも重ね合わせてしまう…




        「…………愛茉?」


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