第二章 あの人を捜しに
第一話 出発の時
越後山 異世界樹に繋がるトンネルの中
「なあ、淳也。あの闘い以降、鬼化は出てないんだよな?」
「あぁ。鬼化はあれ以降出てない。」
小栗さんも監視を続け、俺も変化があれば常時伝えるように言われているが特に異常は感じられなかった。だから逆に怖いのだ。いつどこで暴走するか分からないしその際にコントロールできるかも分からずじまいなのだ。
異世界樹の先は小栗さんや大半のベテランの人はついて行けない。味方を巻き込むも敵を巻き込むも自分次第、か。
っと考えている間にトンネルの出口ももうすぐだ。
外の強い光が射し込んでくる。
ここにいる誰もが驚愕していた。
俺もその一人。
情報にあった通りここだけ別の世界のようだ。
「驚くのも無理ない。ここは本当に異世界との架け橋なのだから。」
「小栗さん。」
「この異世界樹の周囲には目には見えない粒子が沢山宙に浮いていてその粒子が周囲の物質に作用して異変をもたらしている事が確認されている。それが分かるのはほら、蘭君のオーダーメイド武器:
それは粒子に反応しているからだ。その剣の素材の一部は異世界樹から採れた紺鉱石と私たちが呼ぶ物を使っている。」
この俺が使う剣は俺の体内にあるマイナス粒子を上手く扱えるようにする俺専用の武器。
そのために危険を冒してでも異世界樹の素材を採取した貴重な剣だ。
「…最後に聞くが体に異変はないか?」
「問題ないです。」
「ならよし。ご武運を祈る。」
そう言って小栗さんは少し寂しそうな笑顔を浮かべこの場を去った。
「淳也さん。お久しぶりです。」
「美桜、明夏~!久しぶり。」
美桜は卒業後、中部地方の暗殺会社に就職することとなったため一年以来の再開だ。明夏も美桜にお供して同じ会社に勤めた。
「ちゃんとご飯食べてます?何かストレスの溜まることはありました?友達増えました?」
「お前は淳也の母親か。」
「そうだよ。霞の
そう言って俺の後からひょっこりと出てきたのは巫女だ。
巫女のあとを追ってきて早速疲れている天音さん。いつもお疲れさまです。
俺と巫女、智一、天音は運良く同じ会社に入り、同じ仕事に当たる事があったため巫女と天音とは長いつきあいなのだ。2カ月くらい前に仕事場所が離れてしまっていたので美桜程ではないが久々の出会いなのだ。
あと巫女は中々スキンシップが激しい。俺だけに対して。
「お!お前達も参加するのか。」
「匝瑳様、まずはお久しぶりのご挨拶。」
「おっと、失敬失敬。久しぶりだな淳也と
「私達はその他扱いですか。相変わらず失礼なやつですね、無脳筋ゴリラ。」
「その他でまとめたの悪かったけどいきなり辛辣過ぎじゃね?!」
匝瑳と智一は長い暗殺練習の中で親友となったのだ。あと匝瑳はこう見えて戦闘以外余り積極的ではないのだ。卒業前と変わらない。強いんだけど…
「騒がしいですね全く。」
「騒がしいのはあんたの態度よ!眼鏡!」
「眼鏡だけで判断するな!てかやめろって何回言わせるつもりだ!」
「サルマ様、周り周り!(小声)」
「お嬢、見られてますよ。」
二人は恥ずかしそうにし、俺たちから目をそらした。
サルマ、マリア、桃花、那由他もそれぞれ、近畿と関東の会社に就職し、優秀な成績を残している。
「淳也さん。貴方もやはり参加されるのですね。」
「この体と俺が暗殺道を選んだ目的が異世界樹の先にある。なら参加する以外選択肢はないだろ?」
「全く、勇敢な方です。
それよりも無茶はしないでください。」
異世界樹の探査の主な目的としては、異世界樹の素材調査、異世界樹に吸い込まれた行方不明者の救出、異世界樹の人を吸い込む力の制御である。
「それでは、異世界への転送を開始する。」
グループで分けられ二人一組で転送される。勿論相棒は智一。他の暗殺者とは異世界先ではぐれてしまうかもしれない。
異世界樹探査は選ばれた特殊な暗殺者のみ参加だからね。人数は100名前後。異世界樹に吸い込まれた暗殺者もいるので総合で150名程だろう。
出番が回ってきた。
「緊張しねぇのか?」
「少しな。」
この先何があるか分からない。何とかなるなんて思えるほど現実は楽ではない。でも智一と一緒なら何とかなりそうな気がした。
俺にとって希望のような存在なのだから。
午前8:31 蘭 淳也は異世界へ転送された。
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