第16話

「はっはっはっは」


 そう大勢の笑い声が通路に響く。


「ここの部屋から聞こえる」


 飲み物を運んでくる男性と一緒に部屋へとはいる。


 きらびやかな部屋のなか、大勢の男女がパーティーに興じていた。 タバコと酒、香水の強い匂いが漂う。 


「アルトーク、大分もうけているようだな......」


 貴族らしき大柄な老人が太った男に話しかける。


「まあ、ほどほどですよ。 最近これも扱えるようになったからですな」


 太った男はそう緑の液体の入った小瓶を、その大きな指輪をはめた手のひらに乗せた。


「メモリアか...... 確かにそれは稼げる...... ただ私の力があるのも忘れるなアルトーク」


(こいつがアルトークか、メモリア......)


「ええもちろんです。 あなたさまのおかげで貴族へこの薬を知らせことができたのですからね」


 そう恐縮したようにアルトークは老人にいった。 


「......そういうことだ。 だが王がここの存在を懸念している」


 老貴族がアルトークをみていう。


「おそらくバルメーラが入れ知恵でもしているのでしょうな。 奴は邪魔だが、ここに騎士や兵士がきたところでどうにもなりませんよ。 最悪町のものたちごとモンスターのエサにしてくれます」


 そういってアルトークは笑う。 


 その言葉に答えず、老貴族は冷たい目を向けると、パーティ会場を後にする。


(いけすかんが仕方ない。 まあもっと力をもてば、やつもいずれ......)


 アルトークはそう老人の背をみながらおもっている。


(なんだ...... あの老人、心のなかが...... ただ私の【念話】《テレパス》は考えた心の表層面しかわからないから、話題にならないと調べられないな)


「どうする? 今のうちにここの奴らをぶっとばすか」


 アエルが手を出そうとするのを止める。


「まあ、倒すのは簡単だけど、アルトークのいった言葉が気にかかる。 多分奥の手があるんだろう。 それを知らないとうかつに手はだせない」


(その奥の手が、モンスターがこの町を襲わないのと、何か関係があるのかな)


 パーティー参加者たちの心を読み、一度町の外にでる。


「なにかわかったか......」


「アルトークが何をもってるかはわからなかった。 あいつに近づきやつの切り札を知らないとダメだ」


「それでどうする?」


「服を変える」


「?」


 首をかしげるアエルをうながし、王都へと向かった。



「ここが王都か...... すこいな」


 壮麗な建物が並んでいる。 大都市といった風情だ。 人々も多く皆裕福そうだ。 自信に満ちた顔をしている。


「それで、ここでなにするんだ?」


「服を買うんだよ」


 そこで大きな服飾店にはいる。 そこには色とりどりの服や帽子靴が並んでいる。


「おお!!」


 アエルのテンションがあがってキョロキョロと店内を物色している。


(アエルは、なにげに洋服とかすきだな...... そういえばまえに買った服を、ずっと大事にしている)


「お客様...... 当店は高貴な方々を向かえています。 庶民のかたのお店は裏通りに......」


 そう怪訝そうに店員が話しかけてきた。


「そう、でもお金ならあるけれど」


 そういって冒険者カードを渡した。 店員は奥でその内容を確認すると、にこにこと足早に近づいてくる。


「も、申し訳ございません。 ぜひ当店でお買い物をお楽しみくださいませ」


 そうペコペコと頭を下げ後ろに下がった。


「私はこれ一式。 アエルは何か見つかった」


「ま、ま、待ってくれ! 多くて選べない!」


 しかたなくしばらくまち、買い物が終わった。


「すごかったな! なっ! 今度マーメルと来よう!」


 興奮しているアエルをなだめる。


「そうだね。 それより明日またラダトスに向かう」



 次の日買った豪華なドレスをきて姿を消すと、ラダトスのアルトークの屋敷へはいる。 


「よし、だれもいない」


 私たちは姿を現し、パーティー会場へ入った。


「あそこか......」


 アエルには適当に食べ物を食べているようにいうと、アルトークを見つけ近づく。


「どうもアルトークさま」


「ん? 君は......」


「ダルグダールの娘です。 父が急用のため代わりに参りました」


「ああ、そうか。 昨日大臣は確かに娘がいたといっていましたな」


(昨日、アルトークと話していたのは大臣だったのか......)


「それで、なにか」


「実は、父からお伝えするようにいいつかっていまして......」


「......なんの件ですかな」


 いぶかしげにそう聞いてきた。


「魔石の件です。 少しお話させていただきたいのですが」


「魔石ですか...... わかりました。 奥へどうぞ」


 そういって奥へと通された。


「それで魔石の話というのは......」


 アルトークがソファーに腰かけるようにいい。 対面に自らも座った。


「ええ、実は魔鉱石の鉱山があるそうなのです」


「なんですと...... 本当ですか」


(魔鉱石は高値で取引されるから、のってくるとおもった)


「はい、それがこれなのですが」


 目の前の机にいくつかの鉱石をだした。 アルトークはメガネでその鉱石を調べるとうなづいた。


「確かに魔石だ...... それでその鉱山をどうしたいのですかな」


「実は、その鉱山があるのがテクシア山なのです」


「昔、国が町をつくってモンスターによって失敗した場所か......」


 そう考えるようにいった。


「そうです。 ですが、アルトークさまならその話に興味を持つのではないかと」


(確かに、モンスターを排除出来れば、鉱山を手に入れられる。 あの古代遺物をつかえば、モンスターなどたやすい)


 そう顔は変わらないが心が踊っているようだ。


(やはり古代の遺物とやらは、モンスターを排除できるのか。 それを手に入れたい)


「それでその正確な場所は」


 アルトークははやる心をおさえながら、聞いてくる。


(表情は変えないが、興奮はしている)


「......それは、父の性格ならわかるでしょう」


「金ですか......」


「もしくはここにある古代遺物か......」


「あれは渡せない! 金にしてください! 望み通り払いましょう!」


 焦ったようにアルトークはいう。


(あれはモンスターを排除するのも、魔法を封じるためにも必要だ! 絶対に渡せない。 やはりあの人は知っていたのか)


(やはり、そういう力か、よし)


「わかりました。 お金でかまいません」


「あとで渡す...... といっても信じないでしょうな」


「父のことをよくご理解している。 しかし父を満足させられるものをお持ちなのですか?」


「......ついてきてください」


 アルトークはそういうと地下へと招いた。

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