第3話

「ここか......」


 そこは町から少しはなれた木々が少ない山にある洞窟だった。


「さて、では中を見るか」


私は近づくと外から【遠隔透視】《リモートビューイング》を使い洞窟内部を視る。 内部は受付嬢のいうとおり複雑で奥まで迷路のようになっていた。 奥には大きな生物が見える。


「確かにモンスターも少ないようだ。 奥にいるこいつが討伐対象か。 確かに強そうだ。 さてあれを使うか」


(失敗してバラバラになっても報酬はもらえるのかな。 いやいまは集中......)


 時間をかけ集中し前方に座標を指定する。


「【召転移】《アポート》」


 目の前に、牛並みの巨大なコウモリが現れる。 


「ギィギィ!!」


 コウモリは急に日の下に転移させれて混乱して動けなくなっている。


「成功! よし【雷念力】《ヴォルトキネシス》」


 轟音がしてコウモリの体が一瞬輝く。


「ギャァギャァ!!」


 コウモリは体から煙をだしてもがいている。


「これでもいきてるのかタフだな。 さすがモンスターというだけはある。【炎念力】《パイロキネシス》」


 炎にコウモリが包まれしばらく暴れていたが、ついに動かなくなった。


「この冒険者カードをモンスターに向けるんだった」


 受付嬢にいわれたように銀色のカードを向ける。 するとカードから光がでてモンスターを照らした。


「これで確認されるらしい。 どんな技術なんだろう? まあ倒したから帰ろう」


 ギルドへと戻った。


 こちらをみて皆がざわついている。


(なにか私をみている...... まさかばれた...... 心を読むか)


(あの子供、一人であのイビルバットをやったのか......)


(あの複雑な洞窟を一日もたたず踏破するなんて)


(なんの魔法をつかうんだ......)


 みな心でそう思っていた。


(なるほど、あれはそれほど難度の高い依頼だったのか、だけど、あまりめだつのはよくないか......)


「確認しました! イビルバット討伐おめでとうございます!」


 そう受付嬢が喜びながら、カードに入金してくれた。


(魔法もある。 怪しまれるとどこでばれるかわからない。 気を付けよう)


 ギルドをでると、足早に宿へ向かった。


「いらっしゃい」


 宿の店主に宿代を聞くと、モンスターを倒してえた額は、半年はゆうに泊まれると言われた。


(どうやらかなりのお金を得たようだ。 なるほど、危険なのになりてに事欠かないわけだ)


 そのまま宿に泊まると、次の日、町を歩く。


「さて、これからどうするか...... 超能力でこの世界にきたのなら、戻る方法を見つけるのは困難だろうな。 やはりここで生きていくしかないか......」


(となると、あまり人のいない場所を探すか...... 超能力のことをいろいろきかれたり邪推されたりするのは面倒だ。 たまに情報収集のためにギルドに来ればいいか)


 宿や飲食店の人たちにきいて回ると、どうやらモンスターがいて人が住めない【人外地】という隔絶された場所があるという。 


(望み薄だが、帰る方法を知るためにも、一応能力の把握と強化は必要だ。 人がいないその場所へといこう)


 ギルドで得た金で馬と馬車をかう。 そして食料などを買いだめし乗せると町から離れた。


「よし、この辺でいいか......」


 人が来ない深い森のなか、馬から【念力】《サイコキネシス》で大量の物資を下ろす。


「つれていくとモンスターに襲われるかもしれないから。 どこか安全なところにいってね」


 そう【生物会話】《アニマルトーキング》で話しかけ、馬を野にはなした。


(この先がその人外地か...... 【遠隔透視】《リモートビューイング》)


「確かに森の奥、やはりモンスターが大量にいる」、


 町の人に聞くと、遭遇すれば襲ってくるが、常に町を襲うわけではないらしい」


(しかもあのモンスターの心に渦巻く憎悪や怒りはなんなんだろう。 抑えがたい衝動のようなものだった...... なのに人間を襲ったり襲わなかったりするなんて......)


「まあ考えてもしかたないな。 とりあえずモンスターを一掃して、すむ場所をつくるか【透視】《クレアポヤンス》」


 木々の奥が透け全体をみることができる。


「【冷念力】クライオキネシス」


 モンスターたちを凍り付けにした。


「まあ、あまり広範囲に使うと普通の生物たちも死滅してしまうから。 このぐらいでいいか」


 奥の方へ【浮遊】《レビテーション》で移動する。 


「ん? 動くものがいる」


 よくみると、それは人間のようだった。


「まずい! こんなところに人がいたのか!! 見落とした!」


 その少女らしき人間に近づく。


「大丈夫! えっ!」


 私は驚いた。 その少女には頭に角があったからだ。

 

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