第4話
その青い髪の二本の角がある赤い髪の少女に【治癒】《ヒーリング》を試みる。
(この子が魔族か...... この力はほぼ使ったことがないが、やってみるしかない)
「うっ......」
少女は凍結状態から回復する。
「ふう、なんとか生きてはいるか...... 角もあるけど、その前に体に傷があるし、かなり痩せている」
【治癒】《ヒーリング》の効果で体の傷も治っていく。
(周囲に焼かれたり切られたモンスターの死体もあるな...... この子がやったのかな)
「うっ、ここは」
少女が目を覚まし私の顔をみるやいなや、後ろに跳躍した。
(すごい身体能力...... やはり普通の人間じゃない)
「なんだ!! お前は! 何で人間がこんなところに!」
「それはこっちが聞きたいよ。 なんでこんなところにいるの」
私と同じぐらいの少女は周囲を見渡し、地面におちた短剣を拾いこちらに向けた。
「この頭に直接聞こえる魔法、お前が使ったのか......」
「......まあそう。 それで君は魔族なの?」
「そうに決まっている......」
その時ぐぅーと少女のお腹がなった。 少女の顔がみるみる赤くなる。
「お腹がすいてるの?」
「ち、ちがう!!」
(話とは違うな。 トレアたちの話だと、魔族はとても残忍で邪悪な種族と聞いていたけど......)
「まあまって。【召転移】《アポート》」
その場所に置いてきた荷物を転移させた。
「な、なんだ! 魔法! 詠唱もなしに!?」
荷物から果物をいくつか取ると、差し出した。
「ほら」
「い、いらん! 毒でも入ってるんだろう!」
少女は剣を向け近づくことを拒むので、私は食べて見せ【念力】《サイコキネシス》で、少女のもとへと果物を浮かせる。
「なんだ!? この魔法みたこともない......」
目の前に浮く果物に警戒するも、よほどお腹がすいていたのかかぶりついた。
「少し聞きたいことがある」
「がふっ、むにぎゅ、なんだ、むぐっ」
「食べてからでいいよ」
食べ終わるまで私はまつことにした。
「ふぅ......」
「食べ終わったか...... 怪我していたけど、モンスターは魔族が放っているという話だったが違うの?」
「......私はアエルだ」
「そう名前か、私はリン」
「......そういう能力を持つものはいるが、私にはない」
「それで怪我か......」
「これはリン...... お前が治してくれたのか」
傷のあった場所を見ている。
「ええ間違って君ごと凍らせたから。 その時怪我をみつけたからね」
「......それでリンこそ何者だ。 ここはモンスターの住みか。 人が容易に近づける場所ではない。 魔族もだがな......」
「ああ、私は少し理由があって、人がいないところがよかったんだ。 アエルこそここでなにをしているんだ」
「......なにも、ただ行き場をなくしたから、ここにくるしかなかっただけだ」
そう淡々と答えた。
(わけありか......)
「理由は聞いてもいい」
「......別に、ただ私は他の魔族と合わなかっただけだ」
そういってアエルは目を伏せる。
「......まあ、そういうこともあるだろうけど、こんなところに瀕死でくるなら理由があるはず、いいたくなければいいけど」
「............」
少し沈黙があったあと、アエルはポツポツと自分のことを語りだす。
「......私はあまり争いが好きではない。 魔族はさっきお前がいったように好戦的で残虐なものが多い」
「アエルは違った」
「ああ、それに元々強さの象徴たる角があまり大きくなかったし、魔族は強さがなければ必要とされない......」
「それで追放か、ずいぶんだね」
「その上、人間との戦いをやめるべきだとも主張していた。 傷ついたり死んだり、殺したり、食べるためでもないのに、なんのために戦うのかがわからなかったからだ」
「それでか...... 魔族にはアエルと同じ考えの奴らはいないの」
「若いものにはかなり増えてきている。 だが、力あるものは戦いを求める。 そういうあわれな種族なのだ」
そう悲しげにいった。
「そうか、まあアエルの事情はわかった。 私はここで住居をつくろうと思うんだけど、アエルはどうする?」
「どうもこうも......」
アエルは困惑しているようだった。
(まあいくあてもないからな......)
「ならここにいてもいいけど、私に魔族や知ってることを詳しく教えてほしい。 どうしてもこの世界の情報が足りないんだ」
(アエルからなら魔族やこの世界の情報が得られる......)
「教える...... 私が知ってるのは魔族のことぐらいだが」
「それでいい」
そう納得してもらい、アエルと生活することになった。
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