第2話

「これ...... ホーンウルフですか! 信じられない...... これを一人で......」


 トレアとその母親は、倒れたホーンウルフを驚いたように見ている。


「確か毛皮と角は高額で売れるといっていたから、持ってきて構わなかった?」


「あ、ありがとうございます!」


 そうトレアたちふたりは頭を下げた。


「いや、食事と色々教えてくれたお礼だよ」


「それで、これからどうなさるおつもりですか?」


「トレアが言っていた。 冒険者ギルドにでも入ろうかと思って」


「リンさんなら必ず入れます! どうぞご無事で!」


 そういって手を振ってるトレアたちに礼をいうと歩きだした。



「すぐにはもとの世界に戻るのは難しそうだ。 今はここで生きていく方法を見つけよう。 こういう世界なら力が物を言うはず。 ちょうど魔法という存在があるから迷わず【超能力】《サイキック》を使えるけど......」


(使いたくない。 とはいえいきるためには必要だ。【瞬間移動】《テレポート》、【浮遊】《レビテーション》は見られたら魔法だと納得してくれるかわからない。 歩くか......)


「おいしい」

 

 トレアが渡してくれたバケットにはいったサンドイッチを食べながら歩く。 すぐに町らしきものが見えた。


 町のなかはさまざまな人種が歩いている。


「やはり肌の色も顔つきも様々だ。トレアが私のことを気にしないはずだ。  とりあえず冒険者ギルドとやらに入らないと......」


トレアの話だと、冒険者はモンスターの討伐なんかを請け負う何でも屋のようだ。  


(私は超能力で大抵なんでもやれるから大丈夫だけど...... 使いたくはないけど仕方ない)


 目の前に大きな建物がある。 大勢の武具を身に付けたものたちが

出入りしていたからすぐわかった。


「今日はどのようなご用件でしょう? ご依頼ですか?」

 

 建物にはいるとカウンターの若い女性がそう聞いてきた。


「いえ、ここに来れば仕事をもらえると聞いてきたんですが」


「えっ? なんで頭に......」


 受付嬢は驚いている。


「すみません。 魔法なんです。 修行中に喉を怪我しまして、言葉がでなくて......」


「そ、そうなんですね。 冒険者になられるおつもりですか?」


「はい、資格などは必要ないとのことでしたが」


「......そうですね。 ですがとても危険な仕事で、大勢、人がなくなっているんです。 正直武器を扱えるようには見えませんが...... この魔法だけですか」


 制服の私をみて女性は心配そうにいった。


(まあ、当然だな。 私のような子供がいきなり命をかける仕事になりたいといわれても困惑するだろうし......)


「ええ、大丈夫です。 さまざまな魔法を使えます」


 そういってみたが、受付嬢は怪訝な顔をしている。


「確かに魔法はお使いになれるようですが、例えばどのようなものでしょう......」


(どうやら、私を冒険者にしたくないようだ。 危険だからだろうな)


 その口ぶりからそう思う。


「......わかりました。 戦える力をお見せします」


 とりあえず【炎念力】《パイロキネシス》で手のひらの上に炎をだして見せた。 周囲がざわつく。


「あいつ魔法使いか......」


「こんな田舎に......」


「始めてみたよ」


「まれに子供でも強い魔素を操れるものがいるとは聞いていたけどね」


 そう口々にはなしている。


「すごい魔法......」


(これなら戦えるわ)


 そう【念話】《テレパス》をつかうと、受付嬢は心のなかで思っていた。


「失礼しました。 では登録の方にうつらせていただきます」


 受付嬢はすぐに用紙と鳥の羽のようなペンをおいてくれた。 


(文字がわからないから......)


【残留思念感応】《サイコメトリー》で読み取る。


(モンスター討伐、輸送、護衛、鉱物や植物のモンスター素体、生物の入手といったところか)


「ではそのモンスターの依頼をおねがいします」


「これですか...... よろしいのですか、かなり危険ですが」


「ええ、ですが試しにやってみたいのです。 もし危なかったら逃げますので」


「わかりました...... でも複雑な構造の洞窟です。 危険なら必ず逃げてください」


 表情が気になったので悪いとは思いながら【念話】《テレパス》をつかう。


(あれは一人では危険すぎる...... まあ洞窟が複雑でモンスターまではたどり着けないはずだから帰ってくるでしょう。 奥までいかなければ平気ね......)


 そう受付嬢は思っていた。


(気にしてくれているのか...... だが生活のためだ)


 受付嬢に冒険者カードをもらい、場所を聞いて依頼に向かった。


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