第九章:第二次人森戦争・後編-10
クラウンの右腕を千切り飛ばしたエルダールの矢は、その凄まじい威力とは裏腹に双子の危機を救うという役目を終えた途端に空気に溶け出すようにして霧散し、着弾する前に跡形も消え去った。
「ふ、ふっ……。そんな芸当が出来る、なら……。平原をあんなにズタズタにする必要、なかったんじゃないか?」
そう消え去った矢を目端で見遣りながら軽い愚痴を漏らすクラウンだが、その表情には余裕の全く無い笑顔が浮かんでおり、千切られた腕の傷口を庇いながら額からは冷や汗を流している。
そんな自分達では決して引き出す事のできなかった彼の苦痛に滲む顔を未だ混乱治らぬディーネルとダムスは見遣った。すると──
『無事かッ!? ダムス、ディーネルッ!!』
双子の頭の中に突如、何よりも頼りになる存在である彼等の祖父──英雄エルダールの心配する声音が響いた。
「『──ッ!! お爺ちゃんッ!!』」
「『──ッ!! お爺ちゃんッ!!』」
その声に思わず口にし出して嬉しそうに漏らす双子。これ以上ない味方の登場に、衰弱し切っていた二人の精神に僅かな希望の火が灯った。
『そうか、無事か……。いや、そんな事より今はそこから少しでも離れなさいっ! 後は私がやるっ!』
『う、うん。分かった』『「ダムスっ! 立ってっ!」』
ディーネルはこの千載一遇の機会を逃すものかとエルダールの指示に従い、魔力欠乏症一歩手前のダムスを半ば無理矢理掴み起こしてその場から可能な限り離れようとする。
「くっ……。逃すかっ!!」
するとそんな双子に、クラウンは苦し紛れに残った左手で何かを投擲。その背後から命を刈ろうとした。
しかしエルダールの助太刀により多少は気力が戻ったディーネルは、そんなクラウンのヤケクソの投擲に何とか反応し、そのまま投擲物を掴み取る。
「『あ、あんまり舐めた事、しないで……』」
「くっ……」
苦い顔をするクラウンだが、ふと別の気配が信じ難い速さで接近するのを感知しそちらに視線を向けた。正体は勿論──
「『左様。私の孫を余り舐めてくれるなよ。人族の若造』」
「『お爺ちゃんっ……!』」
「『お爺ちゃんっ……!』」
まるで風が吹き抜けるが如くディーネルとダムスの側に現れたのはエルダール。そんなエルダールが側まで現れた事で双子は漸く本当に安心し切り笑顔を見せる。
逆にエルダールの目には一切の油断は無く、片腕を無くしている筈のクラウンを真っ直ぐに
「『──と、違ったか。投擲した隙に飛ばした右腕を拾ったわけだな。その
エルダールの言葉を聞き双子がクラウンを見遣れば、その手にはいつの間にか千切り飛んだ右腕が握られており、先程まで苦々しそうにしていた表情にも多少の余裕が見て取れた。
「『……ふふ。腕が無くなった事はこれが初めてじゃあ無いんでな。こうして残っているだけ幾分かあの時よりマシだ』」
そう言って落ち着いた声音でプラプラと自分の右腕を弄んでからポケットディメンションに放り込むクラウン。
だがそれでもクラウンにエルダールを相手に立ち回る余裕までは当然無く、当人もそれを重々理解しており、言い終わってから深く嘆息する。
「『……とはいえ片腕で英雄様に勝てると思うほど自惚れてはいない。少々悔しいが、私はここでお暇させて頂こうか』」
「『ほう。私がそれを許すと思っているのか?』」
「『思っちゃいないさ。ただ──』」
「『むっ!?』」
そこでエルダールは何かに気が付いたらようにクラウンから目を離し、遥か遠く森林の北側へと視線を移すと心底忌まわしそうに眉間に皺を寄せた。
(まさかっ!? だが彼女は追って来ないと……。いや、これはまさか──)
エルダールが森の北から感じ取ったのは、十数分前まで己と相手にしていたティリーザラの新英雄でありクラウンの実姉ガーベラの気配。
移動速度こそそこまで速くは無いものの、それでもただの人族が森を駆け抜けるには異常と呼べる速さであり、余りのんびり構えていたら数分足らずでこの場に到着するだろう。
「『……彼女を呼んだのか?』」
目を森の向こうに向けたままエルダールはクラウンに訊ねる。するとクラウンは少しだけ呆れたように肩をすくめ、小さく笑った。
「『姉さんは私に対して未だに過保護な所があってな。どのスキルか知らんが、どうやらこの距離で私の危機を察知したらしい』」
「『成る程な。……だが彼女が到着する前に貴様を葬る事はそう難しくないぞ』」
「『手負いとはいえ私にだって多少の余力はある。やり方次第では十分に時間を稼げるさ』」
「『ふん。確かに彼女は強者だったが、そもそも彼女が到着したからと私に勝てる保証など無いだろう』」
「『強がるな。姉さん相手に消耗していないなど言わせんぞ? それに私とて時間を掛ければ回復する。私と姉さん相手に、果たして無事でいられるかな?』」
「『……』」
「『……』」
「『……ふん』」
互いの睨み合いが暫く続いた後、先にエルダールが鼻を鳴らして目を背けた。
「『私の気が変わらん内にさっさと
「『お、お爺ちゃん?』」
「『お、お爺ちゃん?』」
「『そうか。ならお言葉に甘えようか。その短剣は餞別にくれてやろう。ではな』」
クラウンは笑みを見せると何ともわざとらしく
この場に残されたのはエルダールとディーネル、ダムスの三人のみ。
生き残っていたエルフの兵士達は皆クラウンの側近であるロリーナに一人残して始末され、その残された一人も手足の腱を切られた上で拘束され一緒に転移で連れてかれてしまっていた。
エルダールの登場で何とかクラウンという強敵は退けられたものの、結果だけ見れば惨敗に等しい状況と言えるだろう。
「『……お爺ちゃん』」
「『良かったの? 逃がしちゃって……』」
ディーネルとダムスとしてはそんな散々な戦果に不甲斐なさを感じ、二人としてはせめてクラウンという手柄さえあればこの惨憺たる有り様の慰めになると考えていたのだが……。
「『お前達二人は、
「『え?』」
「『え?』」
「『
あの時エルダールは確かに感じていた。
長期戦に持ち込められてしまえば恐らく自分が負けていた事。そしてガーベラの本当の実力があの程度のものではないという直感からくる確信……。
仮に今ここでクラウンを相手にし上手い事時間を稼がれてしまった場合、クラウンという最愛を傷付けられ自身に掛けていた枷を外したガーベラを相手に勝てる保証など無かった。
(あの娘も小僧も、それぞれ別の意味で全く計り知れん……。キャッツ家に因縁はあるが、私情を挟み過ぎれば最悪を招きかねんな)
「『だ、大丈夫? お爺ちゃん……』」
「『ん? ああ問題無いぞディーネル。それよりも私達もこの場を退こう。奴等にこの拠点を渡す事になるやもしれんが、致し方無い』」
「『うぅ……。ごめんなさい』」
「『僕達が不甲斐ないばっかりに……』」
そうしおらしく謝る双子。そんな愛しい孫達に無謀な戦いを挑んだ事への叱責が無いでもないエルダールではあったが、取り敢えずそれは後回しにするとして……。
「『──っ!!』」
「『──っ!!』」
「『二人共、本当に良く戦ってくれたな……』」
エルダールは二人の頭を優しく、たっぷりの慈愛を込めながら優しく撫でる。
叱るところはあろうとも、そんな減点など霞んでしまうような二人の健闘ぶりはエルダールに二人の成長を感じさせ、表情には出さぬまでも感動で打ち震えていた。
「『
「『で、でもお爺ちゃん……』」
「『僕達、手加減、されて……』」
「『なのに、全然敵わなくて……』」
「『お爺ちゃんが来なきゃ、僕達、今頃ぉ……』」
ディーネルとダムスは本気だった。本気でクラウンを倒そうと四苦八苦し、奮闘した。
だがそれでも本気など引き出せず、寧ろ試され遊ばれただけに終わるという屈辱的な終幕。クラウンの真意がどうだったにせよ、きっとあのままエルダールが現れていなければある意味でもっと悲惨な事になっていたかもしれない。
英雄の孫たる剣士として、弓士として、これ以上に無い敗北感を二人は味わっていた。
「『だがこの敗北には意味がある。計り知れんくらい大きな意味がな』」
「『い、意味?』」
「『ああ。お前達は私の自慢の孫だ。才能に溢れるお前達ならば、その意味を正しく理解し、万全に身に付けられる事だろう』」
「『ほ、本当に?』」
「『勿論! 私はお前達にならそれが出来ると信じている。心の底からな』」
「『お爺ちゃん……』」
「『お爺ちゃん……』」
「『さあ! 二人共疲れたろうっ! 私も年甲斐もなく少し頑張り過ぎた……。陛下に言って数日休ませて貰うとしよう』」
「『う、うんっ!!』」
「『あ、そうだお爺ちゃんコレ……』」
そう言ってディーネルはとある物をエルダールに差し出す。
「『む。これは……先程の短剣か?』」
渡されたのは何とも美しい短剣。
鮮やかな空色に輝くそれは、中央にクリスタルのような無色透明な宝玉が嵌り、それを翼で包み込む様に雄々しい鳥の意匠が彫られている。
刀身は両刃でシンプルな見た目だが、根本にはまるで揺らめく
価値にしてどれ程になるだろう。決してその辺で手に入るような、そんな代物では無いように見えた。
(……こんな短剣を、あの土壇場で投擲したというのか? 右腕を拾う為のブラフにしては少々釣り合いが……)
何か違和感がある……。
訝しんだエルダールはそんな短剣に向かい《物品鑑定》を発動し、その正体を
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アイテム名:
種別:ユニークアイテム
分類:短剣
所持者:クラウン・チェーシャル・キャッツ
スキル:《分身体》《狭間》《歪曲》《魔力増幅》《魔力操作補助》《食魔の加護》
希少価値:★★★★★★★
概要:ハーティーから奪い取ったポイントニウム製の短剣をベースに
鮮やかな空色に輝き、中央にクリスタルのような無色透明なラウムゲシュペンストの魔石が嵌った柄。そしてそれを翼で包み込む様に雄々しい鳥の意匠が彫られている。
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(ふむ。中々に希少価値が高いな……。見立て通りの価値ではあったようだが──)
エルダールの目に、とある名称が留まる。
それは女皇帝ユーリが組織した潜入エルフに関する資料に目を通した際にも目にしたもの。
専門的な名称故に記憶としては希薄で、しかしそれが既に失敗に終わった作戦に
「『──ポイント、ニウム……』」
短剣に使用されていた鉱石の名はポイントニウム。鉱石自体に固有の空間座標が存在し、例え目的地の座標が解らずとも、その鉱石を使った物品の座標を目的に転移を可能とする希少鉱石であった。
(確か陛下はこのポイントニウム製の物品を複数潜入エルフに持たせ、それを王都セルブに潜入した際に要所に配置する事で軍団長達を転移させ奇襲、す、る……)
……。
…………。
………………。
「『──ッッッ!!』」
「『お、爺ちゃん……?』」
「『お、爺ちゃん……?』」
「『二人共ッ!! 今すぐここから離──』」
刹那、双子とエルダールの眼前が暗転する。
いや、正確には暗転では無い。
何の前触れも無く現れた黒い影が双方の視界を遮ったのだ。
そしてその影は両手に天高く自身よりも更に色濃い闇を孕んだ刃を掲げ、それはそのまま振り下ろされる。
その刃先が向かう先は、幼き二つの命──
「『クラウン、き、さまぁぁぁッッ!!』」
ふふ……。
そして刃は振り下ろされた。
「『……』」
「『……』」
「『……ガハっ、がぁ……』」
「『ふむ。やはりそうか。
双子の目の前には、絶望が形を成して景色を作り上げていた。
目の前で対峙するは、先程自分達の目の前から転移して消えていったクラウンの姿。
その手にはついさっきまで自分達を苦しめていた琥珀色の装具・
そしてそんな自分達とクラウンの間……。
そこには立膝を着き、左肩口から右脇腹に掛けて真っ直ぐ走り抜けるような巨大な傷口を体に刻んだ、口から大量に吐血するエルダールの姿があった。
「『お、おじ……』」
「『お爺……ちゃん?』」
「『ぐ、ガハッ! ガハッ! ヒュぅぅ……ヒュぅぅ……』」
「『お爺ちゃんッッ!!』」
「『お爺ちゃんッッ!!』」
双子は血相を変えてどう見ても瀕死のエルダールに駆け寄る。
一体何が起きたのか? 何がどうしてこうなったのか?
余りの唐突な刹那の出来事に、ディーネルとダムスは混迷を極めていた。
「『ふふ。エルダール……。お前ならばそうするだろうと確信していた。私が双子を狙うならば、必ずや庇いに出る事をなぁぁ?』」
「『え? か、庇った……? 僕達、を?』」
「『ど、どういう事よッ!? 第一アンタ、な、何で千切れた腕が、元に、戻って……』」
双子は大鎌をポケットディメンションに仕舞うクラウンを睨み、問い質す。
するとクラウンはわざとらしく考え込むように顎に指を添えると、双子に向かい寒気がするような笑顔を向け、口を開いた。
「『ふふ。そう難しい話じゃない。ただお前達に投げ渡した短剣──
「『え……?』」
「『え……?』」
──全ては、クラウンの手の平の上だった。
エルダールを殺す……。たったそれだけ、その一点のみを達成する為だけに組み上げられた、クラウンの謀略だった。
絶妙な違和感にユーリとエルダールだけを気付かせるように、大臣達から
そんな違和感をエルダール自らが確かめられるようヤヴァンナを殺し、西側広域砦に空いた責任者の穴に収まるよう誘ったのも。
自分達を罠に嵌め分断させ、最初にガーベラと当たらせて消耗させたのも。
双子を窮地に陥らせその危機を察知させ、駆け付けたエルダールに自分の片腕を千切り飛ばさせて油断を誘いながら
そして転移した際に双子を狙う事でそれを庇いに前に出て来る事も……。
何もかもが、クラウンの企ての通りでしかなかったのだ。
「『ああ因みにこの腕だが──』」
そう言ってクラウンが右腕の袖を捲り双子に見せる。
「『な……』」
「『赤、黒い……?』」
クラウンが見せた右腕は、濃厚な血の色をしていた。
淡く赤黒い光を放ち、真っ赤な荊のような入れ墨が腕を這い上がるようにして刻まれる異形の腕……。
それは正にクラウンの左腕──
「『名を
──それは今から数分前。クラウンがエルダール達の元から転移した直後。
『──っ! クラウンさんっ!!』
前線拠点へと帰還したクラウンは先に戻り準備を進めていたロリーナと合流。彼女の側にまで歩み寄ると地面に座り込み、千切れた右肩口が露出するよう服を脱ぐ。
『例の物を』
『はい。……ですがクラウンさん──』
『問題無い』
『かも、しれません……。ですが腕を治すだけならこんな賭けは……』
『賭け? 違うな。──ユウナっ!!』
『わ、分かってるわよっ!!』
呼ばれたユウナはその場で
星の位置を一時的に都合の良い配置に置き換え、クラウンの運勢を操作する。
『私は勝てる賭けしかしない。それに──』
『それに?』
『どうせな治すならもっと欲張るのが私だ。分かっているだろう?』
『……ええ。そうでしたね』
『ではロリーナ。〝クリフォトの古木〟を』
『はい』
ロリーナが言われて差し出したのは、まるで燻る黒炭のように妖しい煙を上げる木片。それを見遣ったクラウンは、思わず笑みを溢す。
『テレリから聞き出した宝物庫を漁った甲斐があった。半ば確信していたとはいえこうして手に入った今、中々に感慨深い』
それは生命の樹とも呼ばれる命を司りし奇跡の樹〝セフィロト〟と対をなす存在──名をクリフォト。
生命の樹と呼ばれるセフィロトとは違い、邪悪の樹とも呼ばれるクリフォトはその名の通り
そしてそんなクリフォトの古木、その木片をクラウンは受けて取ると木片の鋭利になっている方を右肩口の傷口へと当てがい、そのまま思い切り傷口に刺し込む。
『ぐっ……』
『クラウンさんっ!』
『ああすまない……。少し刺し込んだ時の感触が気持ち悪くてな。──では、ロリーナ』
『はい。全力を尽くします』
『では私に合わせてくれ』
そうして二人で唱えるは《神聖魔法》の魔術。〝
以前アーリシアが唱えた
二人が信仰し、祈りを捧げるは〝欲神〟。クラウンにとっては最も親しみのある神であり、ある意味では
『さあクリフォトっ……。私の欲望に──《
そうしてクラウンの魔力を食い尽くさんとクリフォトの古木が打ち震え、血色の魔力がクリフォトを媒介にして腕の形を成していく。
そして──
『アイテム名「クリフォトの古木」による右腕の再生に成功しました』
『外部からの神性を帯びた魔力の流入及び魔王の魔力の流入を確認しました』
『アイテム名「クリフォトの古木」に上記二種の魔力が共鳴反応を示しました』
『アイテム名「クリフォトの古木」は「
『確認しました。補助系エクストラスキル《大欲》を獲得しました』
『確認しました。補助系スキル《持たざる手》を獲得しました』
『条件を満たしました。補助系エクストラスキル《貪欲》が真なる権能を覚醒しました』
『……ふふふ。ふふふふふふ』
双子は意味が分からずただただ
「『まあ、詳しく説明してやる気は無いがな。ただエルダールを仕留める
直後、クラウンは新生された右腕──
「『お爺ちゃんッ!?』」
「『貴様ぁ、よくもお爺ちゃんを──』」
「『大 人 し く し て い な さ い』」
「『──ッッ!!?』」
「『──ッッ!!?』」
クラウンの全力の《威圧》と《覇気》、《恐慌のオーラ》が双子を襲う。
既に満身創痍の双子にとって全力のスキルになど耐えられる筈はなく、双子はその場で力無く両膝を着き動く事が出来なくなる。
「『ディ、ネル……ダ、ムス……ッ!』」
そんな双子を見て怒りを露わにしたエルダールは身体に力を入れて起き上がろうとするが、しかし身体に全く力が入らず一切抵抗する事が出来ない。
「『な、なぜ……』」
「『ふふふ。私がただの斬撃でお前を倒す筈ないだろう? そもそも今の私の手持ちの武器ではお前にこれほどの傷を負わす事は少し難しいからな』」
「『ど、ういう……』」
「『名を〝
少し自嘲気味にクラウンは笑うと《重力魔法》を発動。エルダールの事を過重力で動きを封じてから
「『な、何をする、気だ……ッ!?』」
「『まったく。傷口が深淵に侵食されているのにしぶとい事だ……。だがまあ、そのしぶとさもそう長くは続かん』」
そう溢しながらクラウンは双子の間に立ち、エルダールの方を向いてから座り込んで二人の頭にそれぞれ手を置く。
「『なぁエルダール。お前にとってディーネルとダムスはどれほど大切だ?』」
「『ど、ういう……意味だ……』」
「『二者択一……。お前は己の全てを愛する孫達の為に捧げられるのか? そう聞いている』」
「『……』」
「『もっと簡潔に言おう』」
瞬間、クラウンの両手から魔力が発露し、微弱ながらもしっかりと激痛を伴う《雷電魔法》を二人の頭に直接打ち込む。
「『ぐぁぁぁぁぁぁぁああああッッッ!!?』」
「『ぐぁぁぁぁぁぁぁああああッッッ!!?』」
「『ディーネルッッ!! ダムスッッ!!』」
「『さぁ選べっ! ディーネルとダムスの命を犠牲にするか、己が全てを私に差し出すのかっ!!』」
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